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獣使いたちの冒険者記録  作者: 砂霧嵐
旅と弓と寄り道の犬
37/172

37 はじめての野営地

「これが大街道…!舗装ちゃんとされとるからさっきまでの道より歩きやすいなぁ!」

「ふふん、そうだろう」

「なんでサイがドヤ顔すんの」

「いや、なんとなく」


大街道の木製歩道を北東に歩くこと半日、宵待星が出て薄暗くなる頃にサイたちは今日の宿泊予定である野営地へやって来た。

大街道脇には野営地が約10キロメトーぐらいの等間隔に作られている。休憩用に作られた、周りを防犯用の結界が覆っているだけの切り拓かれた空き地で、天幕を張ってから寝袋で寝る冒険者もいれば馬車ごと乗り入れてそのまま寝る貴族もいる。唯一の決まりごとは『貴族であろうが冒険者であろうが争い・犯罪は御法度』である。

サイたちが着いた野営地にも既にいくつかの天幕と馬車が存在していた。


「おっ、今日はまあまあ空いてんな」

「5組くらいいてはるな。結構広いわ、体育館くらいちゃうの」

「たいいくかん、またチキュウ用語か。んー…冒険者が3組、商人らしい馬車が1つ。あとは…貴族の馬車かな、あそこには近寄るなよ」

「貴族やから?」

「そうそう。貴族にも良し悪しはあるが、近付いて問題起こっても起こされても面倒だからな。近寄るなら商人だ。見てみろ、冒険者たちは商人寄りに天幕設置してるだろ」


ミッツが改めて見ると、野営地の右側に豪華な貴族用馬車が止められており、その近くには天幕がいくつか張られ私兵が何人かうろついている。

一方左側には質素だがしっかりとした造りの馬車が止められており、そこを囲むように冒険者たちが天幕を張っている。


「あの冒険者…もしかしたら商人の護衛クエストの冒険者かもしれないな。ひとまず話しかけよう」

「せやな、挨拶大事やし!」


一番近くにいた、天幕の杭を確認している冒険者の一人に話しかける。


「こんばんは、商人の護衛か?」

「おー?同業か?俺らは違うけど向こうの冒険者らは護衛らしいぞ。なんでもすげー状態のいい塩を手に入れたから王都まで奪われないよう、念のために雇ったんだとよ」

「「…あー」」

「お前らは?どっから来たんだ?」

「辺境町ミチェリアからだ」

「お、あの商人らと一緒か。俺らは辺境町サルサッラから王都に届けもんのクエストだが、お前らもクエストか?」

「いや、こいつがビショップ級に昇格した祝いに知り合いの武器職人の所に行って武器作って貰いに行く途中だ」

「おー昇格か、おめでとうな坊主。とりあえず暗くなってるからあの商人らに声かけて天幕張れや」

「ああ。ありがとう」

「おおきにー」


サイたちが冒険者の天幕から離れて商人の馬車に近付くと、ちょうど馬車から見知った顔が出て来る所だった。


「あっ商業ギルドの!」

「ん?ミチェリア支部の受付か」

「…えっ?!サイ様にミッツ様!!なんでここに!?」

「商業ギルドの受付の第一印象悪かった受付さん!」

「やめてくださいあれは私が悪かったです本当すみません、あと私はタレゾ・クルールという名前です…」

「いやもう別に怒ってへんし、タレゾさん」

「…お二人は何故ここへ?王都へでも行くのですか?」

「いやちょっとミッツの専用武器を作りに、ナルキス村へ」

「ナルキス村……ナルキス村…?」

「小さい村だからあまり知られてない。知り合いの信頼出来る弓職人がそこに住んでるんだよ」

「ほう、勉強不足で申し訳ありません」


商業ギルドで初めて会った受付の男タレゾと挨拶を交わし、近くに天幕を張ることを伝え、さっきの冒険者たちと商人馬車の間辺りに場所を取ることにした。





「天幕も張り終わったし、どうする?まだのんびりするか?」

「うーん…、とりあえず夜ごはん食べようや。携帯食やと味気ないやろうから今まで討伐してきた肉とかも保管しとるんやけど、何がええ?」

「待てミッツ…それ…1ヶ月の間の肉ってことは腐ってるのでは…」

「あー。これもまたチートなんやろうけど…見てくれる?これ1ヶ月前の五目鹿の肉の残りとその次の日に買ったリンゴなんやけど」

「うわ絶対ドロドロじゃない…か…」


ミッツがリュック擬態の学生鞄(ストレージバッグ)から取り出したのは、綺麗な鹿肉と瑞々しいリンゴ。

ミッツによると鞄の中は亜空間になっているだけでなく、時間も大幅にゆっくり流れているらしい。まだ様子見なので分からないが、冷えた状態で昨日入れた果実水も今まだ冷たいままのようだ。


「…で、生の食材も持ってきている、と」

「安売りん時にめっちゃ買って放り込んどるとも言うな。簡単な炒め物とか煮込みぐらいやったら出来るで」

「なるほどなぁ、じゃあ俺あれがいい。ミルクの…あれ、前作ってくれたシチュー」

「シチューはもう完成品があるんやなこれが。あと買ってきたパン。

というわけで、こちらが出来上がりのシチューでございます」


ミッツが鞄から大きい鍋を取り出すと、ホカホカのまま入れていたのか辺りにシチューのいい香りが漂い出す。

実はこの大陸にシチューのレシピは普及されておらず、代わりにミルクスープやミルクリゾットがよく食卓に出て来る。

ミルクスープより濃厚な香りに冒険者や私兵がなんだなんだとこちらを見るのを無視し、二人は食事の準備を進めた。

イメージはそこそこでかいキャンプ場です

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