31 こんなマンティコラは嫌だ
ちょっと短め
「とりあえずミッツは後ろへ待避ね。流石に戦えとは言わない」
「言われんくても待避するわ」
「…あっ、契約する…?ビビッと来たのならここで契約のやり方教えるけど…」
「ビビッと来てても黙秘するし100万ユーラ貰えてもやらん。見てみ?あのマンティコラ爺、殺る気満々やし口臭すごいんやで?百歩譲って美女顔マンティコラと契約するわ」
「ちなみに美女顔のマンティコラは就寝時の敵の横でずっとニヤニヤしながら見下ろしてくるぞ」
「OK、なんぼお金貰えてもマンティコラ全て拒否したる」
このように冷静に話しているようにも見えるが、咄嗟にマンティコラとの距離を開けてサイはミッツを背中に隠し、ブラックドッグに噛み付いたりするよう指示を出し続けている。
ブラックドッグは必死に攻撃しているが、近付くと老人顔が獰猛に笑う。口臭が酷いマンティコラに近付く度にブラックドッグは涙目になっていく。
「きゅーん…」
「仕方ないな、『ヘルフレイム』だ!」
「がうっ…!」
「す、すごい…!黒い火ぃ口から噴いてかっこええのにおもっきり内股なっとる!しっぽぺったーんってなっとるしヒコーキ耳になっとる!よっぽど臭いやばいんやな?!」
「索敵用と簡単な対戦用に簡易契約しただけだからな…鼻が利くのを呼んだのが仇となったか」
「きゅう!くぅーーーん!!!ぐるぅ…」
「鳴いとる…いや泣いとる」
「あの顔の老け具合と我慢強いはずのブラックドッグがここまで嫌がる程の口臭…。おそらく長く生き延びることが出来たマンティコラだ」
「判別方法なんか嫌やな…ってそれ、めっちゃ強いってこと?!なんでこんな平和そうなとこにおるん?!」
「うーん…たまたま生き長らえてここを通りすがっただけじゃないか…?」
マンティコラがケタケタ笑い出し、ブラックドッグに向かってサソリの尾から毒を噴射してきた。
ブラックドッグには掛からなかったものの、地面がどろりと熔ける。
「がうっ!」
「おっとマンティコラのサソリ毒!ちょっとブラックドッグでは分が悪いかな!」
「わふ!わふん!」
「めっちゃ頷いとる」
「『獣使い』と契約さえ出来れば、元々言葉が話せない動物や神獣や幻獣でもコミュニケーションは取れる。だが喋られる神獣などは一部存在するし、聖獣は全て言葉を交わすことが出来るぞ!」
「なるほどなー!契約する気は更々ないけどマンティコラって喋らんの?」
「契約した者がなかなかいないから分からん!だが少女の顔したマンティコラは尾がサソリではなく蜂だ!」
「いらん情報ー!」
サイが交戦中のブラックドッグを一度下がらせると、目眩まし系魔法の眩き防壁を使いマンティコラの視界を潰す。
マンティコラが目を押さえて地面をのたうち回っている隙にブラックドッグと契約解除し、新たに簡易契約を結ぼうとする。
「ミッツ!」
「何!?」
「今から多分全然参考にならない戦いをする!俺の戦い方は他にする者があまりいないことを前提に見ておいてくれ!」
「特殊な技術ってことやな!分かった!」
「特殊でもないがあまり契約されないのは確かだな…来い!」
サイは新たな簡易契約を結び、この場に光が溢れた。