17 契約者にも色々ありまして
「あーーー…『獣使い』だったか」
「『獣使い』なのねぇ…」
「えっなんやその微妙な反応」
クロルドとレーニャは思わず微妙な反応をしてしまう。
まだ『契約者』のことをほぼほぼ知らないミツルが困惑すると、サイは苦笑して説明する。
「ミツル、大丈夫だ。とりあえず俺も『獣使い』だから色々教えられる」
「そういやそうやったな!ほな先輩、なんやこの『定食屋で頼んだランチがメニュー通りなんだけどどこかちょっと違うんだよなぁ』みたいな生ぬるい視線?」
「うん微妙な例えだな。いや…あってるというか…ううん何と説明すれば…」
「私は『天遣い』だけどサイちゃんたちのこと別に悪く思ってない…んだけど…うーん…」
「俺は『非契約者』だから第三者目線で説明出来るぞ」
「…クロルドさん、公平にお願いします」
クロルドは任せとけとばかりにサイの肩を叩くと、ミツルの書いてたルーズリーフの契約者講座あたりを指差して説明し始めた。
「ここ、〈始まりの3人〉の若者たち、いるだろ?」
「おったらしいな」
「諸説あるんだが、言い伝えによるとこの契約した隣人の中で、唯一言葉を交わせなかった隣人がいる。それが『神獣』あるいは『精霊』。コミュニケーションは取れるんだが、他の『天使』『悪魔』は人の言葉を話せたのに『神獣/精霊』だけは話すことが出来なかったんだ」
「ほー」
「それが当時の奴らにとっては、多大な戦力にはなるが言葉も話せないただの獣でなのではないか?、と見くびるようになったらしい」
「……」
「今ではだいぶその思想は薄れたが、まだ薄々思われているようでな…。もちろん『神獣』でも話せる個体はいるし、『精霊』は話すことが出来る。『天遣い』『悪魔憑き』でも差別しない奴らはいるが、まだなんとなく優位に立っている気持ちになっているのもいる。ただ、たまたま〈始まりの3人〉の『獣使い』の相棒が話せなかった。それだけだ」
「さっきまでシルフも喋っとったしな。なんとなく分かった」
「分かったか」
「あれやろ?あの…例えるなら、
貴族なんやけど地方の下級貴族でほぼ庶民、めっちゃ成績良かったから都市のすごい偉い貴族学校に入れはしたんやけど、周りがほとんど鼻持ちならん上級貴族で【あーらこんな所から田舎の香りがするわね!あら失礼!教室内が田舎臭かったものですから!おほほほ!(裏声)】を毎回言われとる、みたいなことやろ?」
「その通り過ぎるわねぇ」
「ミツル、お前訛らずに喋ること出来たんだな…」
ミツルがなんとなく理解した所でサイが紅茶を口に含み、少し寂しげな顔をする。
「ちょいと過ぎた力はなんだかんだ難癖つけて恐れられるってことだ。んで、挙げ足を取られるってこと」
「世知辛いなぁ、でも俺『獣使い』でちょっと良かったで?」
「ん?なんで?」
「だってさっきまで一緒におったシルフみたいな子らと冒険者出来るってことやろ?せっかく友達になれたのに、そんなマウント取る奴らと一緒の『契約者』なんてなりたくないもん。ええ人もおるんやろうけど」
「ミツル…」
「あと俺犬めっちゃ好きやからあわよくば犬とか狼みたいなでっかいモフモフ獣と出来ることなら契約して、モフモフ幸せな冒険者生活送りたい。いや絶対送る」
「ミツル?」
そんなわけで、ここに新たな『獣使い』の冒険者が誕生した。