16 痛くない魔水晶診断
「魔水晶診断て何?占い?」
「本来、10歳頃にどんな小さな村の子でも受けるような簡単な診断です。魔力があるのは当たり前として、どんな魔法が特別に強そうなのか、など分かったりします。そして重要なのは…『契約者』であるか『非契約者』であるか、です」
「そういやこの世界来てからそれ何回か聞いとるな。何なん?」
ミツルはナビリスの話をふんふん頷きながらルーズリーフに纏めていく。
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この世界はとある世界と繋がっており、そこから現れる〈良き隣人たち〉と古くからお互い助け合ってきた。
逸話はいくつもあるが、まだユラ大陸がどこもかしこも魔物まみれで混沌としている遥か昔に、3人の若者が〈良き隣人〉である『天使』『悪魔』『神獣(一説によると精霊)』と契約を果たした。隣人は魔物に対抗するための手段として各々に力を貸してくれることを約束したのだ。
若者ら…後に〈始まりの3人〉と呼ばれる3人に続くように人々が相性のいい『天使』『悪魔』『神獣/精霊』と契約を結ぶようになると、見えてきたのは契約が出来ない人々であった
【〈良き隣人〉と協力しあうことも出来ないのか!恥晒し共め!】と契約出来た者…『契約者』たちは『非契約者』たちを罵り迫害したが、騒動が多少落ち着いて状況を広く見ると『非契約者』はあまりにも数が多い。
〈良き隣人〉と契約出来る出来ないは単に相性の問題であると分かったのは、始まりの契約から30年経ってのことであった。
それから長い年月を経て迫害も大部分が鎮静化し、『非契約者』であろうと冒険者として好成績をあげる者もいれば、『契約者』であろうと田舎町で『天使』と一緒に畑を耕す農民も見られるようになった。
現在では呼び方も固定されるようになった
・『天使』との契約者を『天遣い』
・『悪魔』との契約者を『悪魔憑き』
・『神獣/精霊』との契約者を『獣使い』
・契約出来ない者はそのまま『非契約者』
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「迫害かぁ…どの世界でもいつの時代でも起こるんやなぁ…」
「ミツルちゃんの世界でもあったの?」
「俺の国は…今はそんなに迫害とかない、と思う。いじめとかはあった気するし差別とかはあった。でもそれで人を死に追いやる言うんは滅多になかったで」
「そうなのか…」
「でも外国…俺の知っとる超技術発展国では…肌の色とかでずっと差別があって、今でも死人が出る騒ぎになったりするわ」
「肌の色で?迫害にも色々あるのねぇ…」
しんみり空気流れた所で、ナビリスが手を叩き、まずは魔水晶診断をすることになった。
「さて!ミツルさんはこの魔水晶に手を触れて、ちょっとだけ魔力を流して下さい!それで結果が分かりますので」
「痛ない?」
「痛くはないです」
ミツルの顔ぐらいはある水晶におそるおそる手を伸ばして魔力を流す。
水晶には様々な色の光が飛び交い、ミツルはそれらをじっと眺める。
残念ながら水晶の見方はギルドの機密保持やらなんやらの為教えて貰えなかったが、結果はすぐに教えてくれた。
「えー、ミツルさんは水の魔力が他に比べて優れてますね……あと『契約者』です!天使や悪魔以外の〈良き隣人〉や動物と契約が出来る『獣使い』です!」
「ほほう、ええんか分からんけど…なんかスッキリしたわ。つか動物と契約も出来んの?」
「相性の問題もありますが、出来ますよ!」