14 冒険者ギルドに入ろう
冒険者ギルド、それはこの世界の都市や大きな町に支部が点在する、冒険者たちが所属する大陸最大級の組織である。
ギルドには基本的に受付カウンター、依頼板、食堂兼酒場、救護室などが備わっている。
今回は冒険者登録なので、サイは一直線に受付カウンターへ向かう。
「ようこそ冒険者ギルドへ!只今夕方の為新しいクエストの受注は出来ませんがそれ以外のご用事で…あら?サイさん!」
「やあナビリス。依頼は完了したんだけど、先に彼の冒険者登録を済ませたい」
「初めましてー」
「冒険者登録ですか?でしたらいつでも受付出来ますので大丈夫ですよ。…変わった格好の方ですね」
「そう、そのことでちょっと報告しときたいことがあってね。ギルドマスターはいる?」
「あらら…訳有り…ですか?」
訳ありと聞き、受付嬢ナビリスがちょっと顔をこわばらせる。
「彼自身に危険がないことは俺が保証するが、今この町にいる誰よりも訳有りではある」
「えぇーサイさんよりもですか?」
「下手したら俺よりかもな」
「あららー」
サイが訳有りだということをさらりと言い、話を進めながら安全だと確認したナビリスはギルドマスターを呼ぶために受付カウンター内の連絡水晶に手を翳す。
その間、ミツルはシルフにじゃんけんを教えて暇を潰していた。案外白熱したじゃんけんの途中でシルフがハッとする。
「ア、サイ!私まダ要る?」
「いや…依頼完了までの契約だったし、シルフが嫌でなければもう大丈夫」
「うーン、ミツルのこトは気にナるし…じゃンけんも楽しイけど…今回ハ疲れちャたから帰ル!」
「ええー!シルフちゃんもう帰ってまうん?」
「本契約じゃないからなぁ」
「ミツルがもし『契約者』で精霊と契約出来たラ、次会た時契約しようヨ!」
「契約者?」
「その辺の説明は、ミツルのことを報告してから登録の時に詳しくしてくれるさ。
ではシルフ。『依頼達成の為簡易契約を解除する』」
サイが契約を切る宣言をすると、シルフの体が光りながら透けて始める。
シルフが手を振り、ミツルがハンカチを振りながら完全に消えるのを見送ると、ちょうどそのタイミングでカウンター横の扉が開き、ごつい男と華奢な女が出て来た。
「おうサイ、依頼お疲れさん。何か訳有り報告だって?」
「サイちゃんお疲れ様~。訳有りってその子?」
「どうもギルドマスター。サブマスターも。
ミツル、この筋骨隆々のおっさんがミチェリア支部ギルドマスターのクロルドさん。こっちの可憐そうに見える方がミチェリア支部サブマスターのレーニャさん。
お二人共、こっちはミツル。俺が知る限り最大級の訳有り少年だ」
「おっさん言うな!あー、クロルド・ジャルドだ。元A級冒険者のギルドマスターで、『非契約者』さ」
「初めましてね!サブマスターのレーニャ・サルサよ。元クイーン級冒険者だけど今も『天遣い』よ!」
「『非契約者』?『天遣い』?
あっミツル・マツシマです。えっと…地球から来ました。冒険者どころかこの世界の住民ですらあらしまへん…、どうぞよろしゅう」
「「ん??」」
お互い首を傾げている。よく事情が分からないが訳有りなんだなと思って、クロルドが奥の応接室へ招き入れた。
前線防壁の取り調べの再現開始である。