13 お邪魔しますよ辺境町ミチェリア
「はー!ここがシャグラス王国!」
「の、辺境だけどな」
「なんか…ヨーロッパって感じの町やなぁ」
シャグラス王国によくある、特に珍しくないレンガ造りの建物が並ぶ辺境町ミチェリア。
夕方であるため、人々は夕食の準備のために店に寄ったり急いで帰路についたりしている。
「どの辺境町でもこんな感じの街並みだね。今は夕方だから人もまばらだが、明日も朝からならもっと人は増えるよ。とは言っても辺境だから王都よりは人口少ないけど」
「まあそれはなんとなく分かるわ」
「ミツルはどんな所に住んでいたんだ?都には近かったのか?」
「俺の住んどる大阪はな、日本の首都やないんやけど、五大都市に数えられるぐらいの人口と発展具合やったで。治安は……日本ではまあ…ぼ、ぼちぼちやな」
「と言いツつ?」
「悪い方やったわ~。ひったくりとか多かったし。でも地球全体で見ると治安めっちゃええ方やねん」
「そうなのか」
「戦争をもうしません!って世界に宣言して、国民も武器を基本的に持たせへん法律を作っとるからね。争いと言えば喧嘩とか、違法に武器持っとる奴が暴れるぐらいやな」
「へえー」
雑談をしつつも歩くと、一際大きなレンガの建物に着く。
どっしりとした構えの入口横には『冒険者ギルド ミチェリア支部』の看板が備え付けられていた。
「そういや俺文字なんとなく読めるんやわ」
「えっそうなのか?」
「うん、全然違う文字やねんけどね」
「不思議だなぁ」
「不思議ダね」
「文字、書けるんかな?」
近くの酒場の店先に置かれている酒樽にルーズリーフを引っ張り出して、試しに文字を書いていく。
適当に『地球』だの『シャグラス』だの書いているが、ちゃんとこの世界の文字も日本語も書けるようだ。
「どっちも書けた!なんや意識したら書けたわ!」
「ニホン語だったか、この文字……どこかで見たような…?」
「え?ほんま?!」
「うーん…思い出せたらまた話すよ。ミツルが文字を書けることが判明したし、冒険者登録の書類は書けそうで良かったよ」
「では、ギルドに入ろうか」
「クエスト達成で私の契約終ワりだかラ少し寂シいねー」
「あ、そういやそうか」
「えっ?!そうなん?!」
「詳しい説明は中で受けることになるけど、俺とこのシルフは簡易契約しかしていなくてね…今回のクエスト限定で一緒に行動してくれていたんだ」
「契約…」
「俺は契約者で『獣使い』だからね」
「???」
ミツルの中で疑問が膨らみながら、登録のために中へと入ることになった。