11 これからどこ行こうかね
「さて。ミツルも魔法を出せることが判明したし、そろそろ今後どうするべきか話そう」
「やっと森以外を見れそうで安心したわー」
「まだ安心するのは早いよ。でもこのまま無法帯にいても仕方ない。なので…シャグラス王国に向かう」
「おお…一番でかい国やな!こっから近いん?」
「俺の足で半日程だな。今回は慎重に行動するために…今日の夕方までにシャグラスの『前線防壁』まで着くようにしよう。そうすればあとは近くの町へ入るだけだ」
「前線防壁?」
まだまだこの世界のことを知らないミツルのために、サイが地面に大陸の簡単な図を描いていく。
楕円形の丸を書き、その中に大きくT字の太いラインを引く。これが無法帯となり、それ以外の所が国となる。
「シャグラス王国を含め、この大陸の国は魔物の侵入を防ぐ為に国境に高い壁を築いている。総じて前線防壁と呼んでいる。」
「ふむふむ」
「これによって地上から魔物の侵入はある程度防ぐことが出来ている。空を飛ぶ魔物は対策が必要だがな」
「ドラゴンとかおらんの?王国…王都?襲われたらたまらんやん」
「ドラゴンもいるがほとんどのドラゴンは魔物ではない。一種の聖獣とされていて友好的なドラゴンもいる。まあ魔物となったドラゴンもいるが」
「ややこしいなぁ」
「まあ目を見て判断することだな。で、王都であるシャグラードや重要な街には守りの魔法がかけられている。シャグラスの要だからな、かなりの強度だよ」
「まあそうやろなぁ」
「前線防壁には多く関所がある。無法帯から入国する際は関所で身元証明の提示が必要となる。今回ミツルが一人で前線防壁まで辿り着いたとしても、証明がないから入国出来ない可能性が高かったな」
「ヒェ」
「なので俺がミツルの身元保証人になる。俺がいて良かったな!」
「それはほんま感謝しとります…でも一介の冒険者が怪しい奴の保証人になれるん?」
「ああ、それは…」
サイは冒険者としてどの程度の強さか説明しようとしたが、ふと考えてニヤリと笑った。
「俺は割と高レベルの冒険者だから大丈夫とだけ伝えよう。その方がこの世界のことをミツルが知った時の反応が楽しみだ」
「ええー…教えてくれんのね。まあ犯罪者とかやなければええわ」
「今の所犯罪者になったことはないよ。『賊の討伐。生死問わず殲滅可。』の依頼なら何度か受けて討伐はしたけど」
「賊?!ま、まさかこの森にもおる?!」
ミツルは思わず森を見渡す。
もし賊がいるのならば一番危険なのは魔法を使いたての自分であるからだ。
「魔物に襲われない場所を見つけて、一日中終始魔物に囲まれていても折れない強靭な精神を持つ者なら、あるいは?」
「要するにおらんのね?」
「無法帯全てを確認してないから何とも言えないがね」
ミツルがちょっと安心してから、ふと気付いたことがあるので質問してみる。
「そういやサイさん、転移魔法使える言うてなかった?それで王国戻ったらええんとちゃうの?」
「ん?ああ、使えるのは使えるんだが…あれは特殊な条件が必要でな…冒険者ギルドにある転移陣でないと発動出来ない」
「ミツルがどこかかラ来てたトしても、どのミちギルドには向カうつもりダたのよ」
「そうなんや…。でもとりあえず方針決まったんやな!良かった!」
ゴブリンを倒したりしている間に、空に3つあった明光星は2つになっていた。昼時辺りという指標になる。
この世界で明光星が全て見えなくなり空が赤く染まると『宵待星』という星が現れる。これが夕方の基準となる。
ホーンラビットの肉を焼いた昼飯を食べ、一行は前線防壁まで急ぐことになった。
ちなみに肉を炒めたのは調味料を持っていたミツルである。
「ミツル、料理上手いな…?あと何故調味料持ってたんだ?」
「今日学校で家庭科の授業あったから必要かなぁ思って持ってってたんよ。あと料理は、料理の出来る男がモテる傾向にあったから……元々ちょっとぐらい作れるし」
「すごいなニホンの学校」