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獣使いたちの冒険者記録  作者: 砂霧嵐
冒険者活動も色々ある
107/172

107 取り調べを行う

「ただいまより取り調べを行う」

「行うわ」

「記録は私、ナビリスがしかと行います」

「なんでや!俺が何したん言うんや!」

「お前鏡見てから言えや!あっまだ見てねーのか?」

「見たで!俺はいつでも鏡持っとるしサイにも見ろって言われた」

「じゃあ分かってるじゃねえか!なーんでお前はちょっとクエストに行くといっつも何かしら引っ提げて帰って来るんだ!」

「引っ提げてへん!引っ付けて来とる!」

「一緒だボケ!!!」



元クピド村、現精霊の泉18番地で呑気に手を振った精霊女王を見送ったサイとミッツ、主にサイは慌ててミチェリアへと引き返すことを即断即決した。

ミッツにフードを被せたまま問答無用で八脚大馬(スレイプニル)に乗せ、問答無用で森道を爆走し、ミチェリアの門をくぐり抜け、冒険者ギルドまで一直線に早歩きしてきたサイはナビリスの元へ直行した。

「さっさとクロルドとレーニャ呼んで個室用意させろ」と一言告げただけで、10分後には奥の個室に全員が集結していた。


何事かと聞こうとしたクロルド達の前でサイが無言でミッツのフードを剥ぎ、顔を現した。

それだけで全て察したクロルド達はスン…と真顔になり、冒頭へと続く。



「なんっで!お前の!目が!そんな!ことに!なってんだ!キラッキラしてんじゃねえか!」


区切りながら叫ぶクロルドの目の前にいるミッツには、ミチェリアを出る前と後で違いがあった。


至って普通の日本人によくある黒い瞳だったミッツの目は、今は鮮やかなオパールのような色彩になっている。そこに加えて星が散らばったようなキラキラした光が細かく点在している。


ミッツに自覚はあまりなく、フードを被せられて抗議した時に鏡を見てようやく異変に気付いたのだ。

強いて言えば、今まで視界に見えていなかったその辺にいる精霊たちが常に見えるようになったことぐらいだ。今もクロルドの頭の上でトカゲの形をした火精霊サラマンダーが丸くなって寝ているのが見えている。


「俺のせいやないもん!」

「同感だが、こればかりはこいつだけのせいじゃないもん」

「男が二人揃って『もん』じゃねえわ!サイ、お前がついていながらなんでこんなことなってんだ!」

「じゃあクロルドお前、目の前にいきなり神の一柱が現れて世間話してきたら無視すんのか!?」

「そっ…れは無視しないけど」

「ほれ見ろ!あとクピド村跡地、あそこ今精霊域になってるから即刻王都に連絡しろ。精霊の泉18番地は精霊女王のお気に入りとなっている、とも付け加えてな」

「ナビリス!」

「はい」


その一言だけでナビリスは一度退室した。王都シャグラードの冒険者ギルドにさっと一報を送ってさっさと部屋へと戻った。


この後、冒険者ギルド本部から連絡を受けた王城内にある精霊域管理局はとても忙しくなる。


「で、何があった」

「ヘドロ草クエスト終わった後、ミッツが視界に光が見えると言ってきてな。その光の方向に行ったら廃村があった」

「ついでに休憩しよかーてなって、光が一層強いとこあったから行ってみたら精霊がぎょうさんおって」

「精霊女王殿下と会って、色々話してて、開きかけていたミッツの精霊の瞳を開花して帰って行った」

「以上!」

「そうかそうか…ってなるか!この感情どこにぶつけりゃいいんだ!見送った奴が1日経ったらなんで精霊の瞳引っ提げて帰って来るんだよぉ!」

「ギルドマスター落ち着いてください、相手は渡り人ですから!多少何か起きても不思議じゃないですから!」


ナビリスが戻ってきてひとまず落ち着きを取り戻そうとしているクロルドの代わりに、レーニャがミッツに説明をする。


精霊の瞳とは、一目でいかに『良き隣人』たちに好かれているかが分かるものの一つである。普通の祝福などであれば冒険者測定器で測定して初めて分かったりするが、稀に身体的特徴として現れるものがある。


精霊の瞳は精霊王や特級精霊に気に入られた者が持たされることが多く、その瞳を持つとエルフ族に気に入られやすくなる。

エルフは精霊信仰が多いので、厳格に人間族の立ち入りを禁じている場所でも精霊の瞳を持つだけであっさり入らせてくれたりもする。チョロい。


他にも様々な視覚化された祝福がある。

宝石の爪というものもある。これは土精霊に気に入られたドワーフや鉱石商にたまに現れ、爪が宝石化するというものである。主に鉱物の状態が分かりやすくなる恩恵を得られるらしい。

共通しているのは、物珍しさから悪党や悪貴族にその部位が狙われやすくなることだ。なのでそういった祝福を受けた者は隠すようになる。


他にも小枝の鼻や雨鱗の肌などミッツに余裕があれば聞きたい話はいっぱいあったが、当事者になってる今はおとなしく説明と説教を受けていた。


「まあ…ひとまず取り調べはこれで終わりだ、確かに元々精霊王の贔屓?だったか?を持っていたし、ミッツだけのせいじゃない。ヘドロ草のクエストだったな?」

「ああ」

「じゃあもうここで手続きしてやるから。もう取り調べはしばらくしたくねぇぞ、ああヘドロ草はここで出すなよ?あとで薬師ギルド行って出してくれ」

「「あっ」」

「あ?」

「…どうする?今言う?」

「いや、でもな…どうせ言わなきゃならないし…」

「おい何かは知らないが第二回取り調べまで最短だったな、さっさと言え」


ヘドロ草の進化した姿、シャグラス版天の雫を生花のまま、サラダボウルの鉢植えで見せられたレーニャは卒倒し、ナビリスは声も出ず、クロルドは1分程意識を飛ばした。

第二回取り調べの始まりである。

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