10 はじめての魔法(すまほ)
「いつもはどう使っていたんだ?」
「うーん…SNSが多かったし…文字打ち込むんが多かったけど」
スマホはいくら電源を押してもうんともすんとも言ってくれず、タップしても何も出て来なかった。
「えー教えてゴーゴル先生ー」
「何ソれ」
「無視してくれて構へんよ……どないすんの…?充電足らんのか?バッテリー差しても何もならへんし…」
「さっき通信機械として話せると言っていたから、そのような使い方もしてみては?」
「あっ電話か」
ミツルがスマホを耳に押し当てると、微かにスマホが振動した。
黒かった液晶画面が白く光り、サイたちも何が起きているのか警戒しながらじっと見守っている。
黒かった液晶にはむちむちしている茶色の犬が映り、ミツルもほっと息をつく。
「液晶ついた…」
「犬…?」
「俺の家の飼い犬。柴犬っていう種の雄。名前はフウマ。近所のマダムたちからおやつ貰いまくってそろそろダイエットせなあかんとこ」
「そ、そうか…。フウマは置いといて、何か分かるか?」
「それがな、電話マークしかあらへんねん」
「デンワ?」
「遠くの人とリアルタイムで話せる機能のことやで」
「デンワ……デンワ越しに魔法を指定してみるとか…?」
「もしもし?俺の前に水の玉出して!…ってなんでやねん!なんでスマホにお願いせなあかん……ね…???」
冗談半分でスマホと『通話』するように魔法の指示を出したミツルの前に、ミツルの顔と同じくらいの水球が現れた。
ふよふよと浮く水球を見てミツルはフレーメン現象の起きた猫のような顔をしていたが、正気に戻るとサイたちに尋ねた。
「ででで出た!出たけどこれどないすんの?!」
「まさか本当に出るとは……落ち着いて。とりあえずそれは消してみよう。もう一度スマホに、今度は消すように指示を」
「もっもしもし?この水消して?」
すると水球は瞬時に消える。
何度か火を出したり色を変えたりしていると、サイが驚いたようにミツルを見つめた。
「ミツル、初めてでそんな動かすことが出来るのか…!すごいな!」
「そ、そんなん、俺スマホに言うてるだけやで?」
「いや、これはそう簡単なことではないはずなんだ」
触媒を通しての魔法は、魔法の特性をちゃんと理解していなければいくら魔力を触媒に通しても発動しない。
その上、出した魔法を変形させたり状態変化させたりするのは使用者の発想力や応用力を問われるので、学問をそれなりにしか学んでいない庶民は単に光を灯したりするしか出来ない。
すんなりと火の色を変えたり水を丸くしたりするミツルは、この世界基準では優れた発想力の持ち主と言える。
「…ということだ」
「俺何かしちゃいました?とか言うラノベ主人公の気持ちが今めっちゃ分かった気ぃする」
「らのべ?」
「無視して。それより魔法使えることがはっきりして良かったわ!」
「ミツルおめデとう!」
「良かったな、これで魔物と対峙してもそのスマホさえあれば戦う手段が出来たというわけだ」
「戦うんは怖いけど…どうにかせなあかん時はそうするわ……ちゅーかこれ誰に繋がっとるんやろ?」
こうして、世界で唯一のスマホ魔法(通話魔法)が生まれたのであった。
スマホって説明しようとしても中々説明し辛い気がしますよね