第67話 マイナスの憂鬱
~城塞都市バルクール~
バルクールとアーカルムの戦いを終え、ミナスは一旦バルクールへと戻っていた。
「この度は大変ご活躍したと聞き及んでいます―――」
「ミナス様―――」
ミナスを出迎えたのは、解放軍数千の兵士達。
その先頭にはすっかりケガも完治したシータとジュリエッタが立っていた。
たった一人で帝国最強の一角である黒剣将軍レインを打ち倒し、アーカルムを解放したという情報がこの国にも出回っていた。
まさに英雄―――
ミナスは解放軍にとっての英雄と褒め称えられ、皆からの信頼を得ていた。
「この人達は・・・?」
ミナスは大きく眼を見開き、事態の理解が及んでいなかった。
この数万年間の間、このような扱いは受けたことがなかったからだ。
「リア様の護衛をしているから強いとは思っていたが、まさかあの帝国を退け、都市を一人で解放しちまうんだもんな―――」
「今度、その強さの秘訣を教えてほしいです。」
「これで大手を振って、解放軍本部に戻れるな。」
皆の喜びの声が耳に届く。
「コレはボクの事を言ってるの?」
「はい、その通りです。」
シータが隣にやって来る。
そして、普段は見せないような笑顔でミナスを見つめる。
彼女も内心、ミナスの無事とアーカルム解放の知らせで喜んでいた。
自分が尊敬するミナスが打ち立てた偉業とも言える成果に。
「これでシグマ共和国は帝国の魔の手を退きました。我々の国に協力してくれることでしょう。」
「単にミナス様のおかげです。」
シグマの2大都市を解放することで、今度はジュエル王国の王都奪還に協力する。
それがカジハラから出された提案だった。
戦力は大いに越したことは無い。
これで王都奪還にまた一歩近づいた。
しかし、そんなミナスの心中は少し複雑だった。
「別にボクはそんな偉いことはやってないんだけどなぁ~・・・。」
思えば、自分がやりたいように―――
自分を殺してくれる者を探して、好きに暴れて、目の前の人間に死を与えただけ。
こんな人々に感謝されることをやったという自覚は全くない。
「ごめん・・・少し、一人にさせて・・・。」
「・・・かしこまりました、ミナス様。」
ミナスは一人、一室に籠る。
少し自分を落ち着かせるため。
ボクは死にたがりだ―――、ボクの望みは自分が死ぬこと。
それ以外にはいらない。
いるハズもないんだ・・・。
それなのに何なんだこの気持ちは?
頭の中が少しモヤモヤする。
あのレインとかいう女―――
あの女と闘ってから少しおかしい。
あの女は自分が正しいと考え、ボクに刃を向けてきた。
次元の狭間の魔物とは大きく違う。
彼らも強大な力を持っていたが、そんな信念は持ち合わせていなかった。
それにこの星の意思が彼女に味方した。
流石のボクも星から否定されたら、多少は気にもする。
これまでボクがやってきたことは間違っているのかい?
そして、これからボクがすることは間違っているのかい?
誰も答えを教えてくれない部屋の中で、ミナスは自問自答する。
そんなミナスが憂鬱を感じている一方で、事態は動き出していた。
カジハラを乗せたドラゴン形態のシロがバルクールまでやってきた。
かなり急いでいる様子だった。
「おぉー、なんだ!あのドラゴンは!?」
災害級のドラゴンの出現にかなりパニックになるバルクール内。
「いや、よく見ろ!アレはカジハラ様だっ!!」
「おぉー、カジハラ様!!カジハラ様!!」
カジハラもこの都市を解放した英雄としての扱いを受けている。
そんな彼が超巨大なドラゴンの背に乗って、従えている。
より一層、彼を称える者が増える。
みんな救世主の登場を待ち望んでいる。
自分達の安全を創ってくれる・・・そんな救世主を。
「ここでいいぞ―――」
カジハラはそういうと、颯爽とシロの背中から飛び降りた。
音もなく綺麗に着地すると、全員に伝えた。
「あの魔術師はどこだ!?」
「ミナス様の事でしょうか・・・?」
「そうだ―――」
「急ぎ、伝えろ!!」
「今すぐにココを発ち、解放軍本部へと戻るぞと!!」
カジハラの読みが正しければ、解放軍が危ないと・・・。
そんなカジハラの読みは正しい。
リアの元に帝国の使いを名乗る者が現れ、彼女を帝国へと連れて行こうとしていた。




