第64話 兆し①
~星霊都市アーカルム 近郊~
「決着がついたみてェーだな。」
ミナスとレインの激戦を水鏡で観戦していたカジハラ。
「あの男の勝利・・・ですね。」
「結果はそうだな―――」
「それでどうするつもりです?」
シロがカジハラに問い掛ける。
彼女から見てもミナスの勝利は素直には喜べない。
星の力を得てもなお倒せない男がいる―――
別の意味で帝国以上の脅威を見てしまったわけだから。
「ア"ァ"―――!?そりゃ、どういう意味だ?」
「言葉の通りです―――、ご主人様。」
「ご主人様も既に気付いておられるのでしょう?」
「あの男が想像以上に危険だということに―――」
カジハラはレインとの対戦でミナスは弱点があり、それに気づけばレインは勝てると読んでいた。
レインはミナスの弱点に気付き、対策を敷いてきた。
しかし、レインは勝てなかった―――
ミナスがカジハラの想像を超えたからだ。
「・・・・シロ、確かにお前の言う通りだ。」
「ミナスはオレっちの想像を超えた化け物だった。」
「だが、オレっち達の目的を忘れたわけじゃねェーよな?」
「オレっち達はミナスを倒すことが目的じゃねェー!」
「こちらから敵対せず、淡々と目的を達成すればいい!ただそれだけだ!」
「シロ!お前はシグマ全土にアーカルムが解放されたことを知らせろ!」
「帝国の追撃が来ねェー内にこっちの態勢を立て直すぞっ!!」
「承知しました、ご主人様。」
~元ジュエル王国 王都トパーズ~
ここは帝国に占領された王都トパーズ。
王城は帝国兵が厳重な警戒体制の元、管理している。
そんな城の一室、日の光が薄絹のカーテンを透かして差し込む。
窓辺に座る姫君の長い金糸の髪を、侍女が静かに櫛で梳いていた。
絹を裂くような、さらりとした音だけが部屋に満ちる。
鏡の中の彼女は国を憂いているのか、表情が重い。
「このような仕上がりでどうでしょう?」
「いつもありがとう、エミリー。」
侍女は静かにお辞儀をして道具を片付け始める。
「皇帝陛下が北のテラスでお待ちしているとのことです。」
「分かったわ―――」
「すぐに向かいます。」
そう答える彼女はセディナ-ジュエル-アルベスタ。
ジュエル王国の第一王女。
帝国の侵略後、暫く幽閉されていたが、民衆の鎮静化に伴って、ある程度の自由を許された。
皇帝陛下・・・ルート・アレフゼロ様。
帝国からこの地に滞在して、治めている。
不思議な雰囲気を持った御方。
「ジュエル王国第一王女セディナ参りました。」
皇帝を前に軽いお辞儀をする。
皇帝は白塗りの椅子に座り、高級な熱めのお茶が入ったカップが置いてある。
「―――顔を上げよ」
若いながらも力強い声。
セディナはゆっくりと顔を上げる。
「・・・・生活には慣れたか?」
「はい、おかげさまで―――」
「皇帝陛下の温情によるところが大きいです。」
「近くに寄れ―――」
アレフゼロはセディナに向けてそう口にした。
「・・・・・。」
セディナはゆっくりとアレフゼロに近づく。
「力強い瞳をしている―――」
「失礼ながら申し上げます。」
「皇帝陛下は何故、我が国を・・・侵略されたのですか?」
「富ですか?それとも権力ですか?」
セディナはじっとアレフゼロの顔を見て、質問する。
まともに話が出来る機会はもうないかもしれない。
自分が国の代表として聞かなければいけないと思った。
「富、権力・・・どちらでもない。」
「私が欲するのはただ一つ・・・"プラス"の力だ!」
プラスの力・・・?
この人は一体、何を・・・?
セディナは大きく眼を見開き、言葉を失う。
「それは一体何なのですか!?」
「何か・・・か―――」
「強いて言えば、世界を変える力。」
「世界を変える力・・・?」
アレフゼロが話す目的。
「その為に私を・・・。」
「貴方の野望の為、私を生かすのですか?」
「そうだ―――、そなたを生かすのはその力を持つ者を探す為。」
「この国にいるのは間違いない―――」
「だが、他国の皇帝である私がこの国で自由にその者を探すのは難しい。」
「だから、侵略を・・・。」
「その通りだ―――」
「だが、私に後悔はない。その覚悟で、私は私の道を進む。」
「目的を達成することに妥協は一切ない。」
「・・・・・っ!?」
「そう警戒するな―――」
「セディナ姫よ・・・私はそなたに危害を加えるつもりはない。」
「寧ろ、その逆だ―――」
「なっ・・・何を・・・!?」
アレフゼロはセディナの手を掴み、自分の方へ抱き寄せる。
「私はそなたに婚約を申し込む―――」
「私の妻になれッ!!」
「っ!?」
帝国の皇帝アレフゼロ、突然のプロポーズにセディナは言葉を失う。




