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第6話 アンタは私が殺してやるから覚悟しなさい

どうもゆにです。


魂の6話、ぜひ楽しんでくれると嬉しいです。


~サファイアの街~

 

 帝国の少尉ボルボロスを見事の打ち破ったミナス―――そんな彼を見て、周りにいた帝国の軍人や街の人たちはざわついていた。

 

 突然現れたみすぼらしい男が、今まで街中で暴れていた帝国の少尉をあっさりと倒してしまったのだ。当たり前といえば当たり前の話だろう。

 

 「ウソだろ...まさかボルボロス少尉を一瞬で...?」

 周りにいた一人の軍人がそう呟いた。まるで、自分は悪い夢でも見ているような感覚なのだろう。目の焦点が合っていないように思われた。

 

 「いや~帝国って言っても、やっぱり大したことないんじゃないの?」

 「そんな如何にも~っな大仰な響きで、スゴそうに感じるけど、結局あっさり逝ってしまうんだね...」

 ミナスは正直、拍子抜けしていた。リアから聞いた時は、もう少し骨がある奴らなのかと思っていたからだ。それなのに、余りにもボルボロスとかいう帝国の軍人が死に易すぎて・・・・・・、ビックリしていたくらいだった。

 

 (やっぱりこの男は、オカシイ...)

 リアは改めて、隣に立つミナスという男の恐ろしさを実感していた。アレだけ、屈強な帝国の少尉をいとも容易くこの世界から消し去ってしまったのだ。

 

 「狼狽えるなッ!!皆の者!!」

 「帝国軍人の意地を見せろッ!!」

 黒い軍帽を付けた一人の軍人が、ボルボロスに代わり周りの軍人たちの指揮を執り始めた。恐らく、アレがここでの副官に相当するのであろう。

 

 「あの男を生かして帰すなッ!!」

 「銃を構えろッ!!」

 周りにいた軍人たちは一斉に手に持った銃をミナスへと向ける。

 

 「クソ...。」

 「どうするの...?ミナス...!?」

 リアは顔をフードで隠しながら、小声でミナスへ囁く。アレは、城を侵略してきた眼帯をしたオールバックの男が持っていた物と同じだ。

 

 この世界に銃という武器は珍しい。近年、帝国が独自で開発し、大量に生産されたとの噂はリアの耳にも入っていた。しかし、実際にどういったモノなのかは、リアも知らない。城で見たのが初めてだった。

 

 勿論、数万年前にも存在はしていない為、ミナスも"銃"は初めて見る。

 

 「どうするって...?」

 「う~ん...あんな武器見たことないからね~」

 「どんな物か、当たってみるのもアリかもねッ!!」

 死ぬことを強く望むミナスにとって、目新しい武器等、とりあえず当たってみようと思うだけの存在でしかない。もしかしたら、自分を殺すに足る武器かもしれない。そうでなくとも、自分が死ぬ為のヒントになるかもしれないと前向きに捉えていた。

 

 「さぁさぁ君たち...ソレを使って攻撃してみてよ...!!」

 

 不気味に笑顔で挑発をするミナス。両手を横に広げて、無抵抗を示していた。

 

 「クッ...帝国を馬鹿にしおって...」

 副官は歯を強く、噛みしめミナスに対する怒りを露わにする。

 

 「いいだろうッ!!そんなに死にたいなら、死なせてやるッ!!」

 「放てェェェーーー!!!!」

 副官は周囲の軍人へ射撃命令を下す。その命令に合わせて、軍人たちは一斉に引き金を引く。

 

 複数の銃声が上がり、硝煙が立ち込める。

 

 ミナスの身体には、いくつもの銃創が出来ていたが、本人は倒れることなくピンピンしていた。

 

 「はぁ...??」

 「何、今の...攻撃かい?」

 ミナスは、軍人たちの銃撃を物ともしなかった。それよりも攻撃なのかどうかに疑問すら持っているようだ。

 

 「あの男は化け物か...??」

 副官は、ミナスの狂気をその肌で感じ、一歩後ろへと引いた。ミナスの狂気に怯えたのだ。

 

 「もういいよ...君たち...。」

 「大体分かったから・・・・・・...。」

 

 「能力値降下ダウン!」

 ミナスの放つ、能力低下のスキル―――軍人たちを足元から溶かしていく。

 

 「ウ、ウワアアアァァァーーー!!!!」

 軍人たちは、口々に叫び声を挙げ始める。溶けていく軍人たちの声は次第に聞こえなくなり、軍人たちの姿は数秒後には影も形もなく消えた。

 

 その様子は、リアや街の人たちはただ黙って見ていることしかできなかった。

 

 ゴクリと生唾を飲み込むリア...。

 

 (ミナス...この男強い!強すぎる...!!)

 (本人は自らのことを弱いと言っていたが、そんなことはない!帝国相手でも通用するぞッ!!)

 

 ミナスの力の一端を垣間見たリアは喜びで身体を震わせていた。

 

 「オイ!まさか...兄ちゃん達...あの帝国軍をみんなやっつけちまったのか!?」

 不安そうな顔をしていた街の人たちは、まるで急にその不安が消え去ったかのように一斉に喜びの声を挙げた。

 

 そして、みんな一斉にミナスを称えるために、ミナスの周囲へとやってくる。

 

 「兄ちゃん...アンタあの帝国軍をあんな簡単にやっつけちまうなんてやるじゃねーかッ!!」

 筋骨隆々な大工姿の男がミナスの肩をポンと叩きながら、そう言った。

 

 「あの...助けてくださりありがとうございます...!!」

 目をウルウルとした女性がミナスの元へやって来て、感謝の気持ちを伝えた。

 

 「貴方がやって来なければ、もう少しで彼が殺されるところでした。」

 女性は、地面に横たわっている冒険者風の男へと目を向ける。

 どうやら察するところにその女性はその彼と恋仲であるような雰囲気だった。

 

 まるで、ミナスの事を英雄でも称えるかのように持て囃す。

 

 

 

 帝国軍という脅威が消え去ったことで、安心しきっていた...

 

 

 リアも街の人たちも...

 

 まるで理解していなかったのだ。

 

 

 自分たちが持て囃している存在が、帝国軍などより遥かに恐ろしい存在だということを...

 

 

 「まるで家畜だな...」

 ミナスはボソッとそう呟いた。

 

 「えっ...?」

 近くにいたリアだけは、ミナスのその呟きがハッキリと聴こえた。

 

 「ボクは"救世主"ではあっても、決して"英雄"ではない。」

 「今その苦しみから解放してあげるよ...」

 

 「能力値降下ダウン!!」

 

 「さぁ今こそ救いの時間だッ!!アーハハハハッ!!!」

 

 ミナスの足元を中心にして、どす黒い影が街全体へと広がる。

 

 「オイ...!?ミナス...!!」

 リアは急いでミナスの方を振り向いたが、もう遅かった。

 

 ミナスはサファイアの街で暮らしていた3万人の命を奪ったのだ。

 

 そして、サファイアの街を廃墟へと変えた。

 

 

 数秒前までミナスの周りを笑顔で取り囲んでいた人たちは、影も形もなく消え去っていた。

 

 そう...ミナスとリアを除いて誰一人そこにはいなかった。

 

 「ミナスゥゥゥ!!!!」

 リアはミナスの胸ぐらを掴み、飛び掛かった。その勢いでミナスは地面へと倒れ込んだ。

 

 リアにマウントを取られたような態勢になった。

 

 「何でこの街の人たちを殺したッ!?」

 

 「ボクはただ、彼らを苦しみから解放してあげただけさ...」

 

 「私にはアンタが何を言ってるのか全然理解できないッ!!」

 ミナスに対する怒りで胸ぐらを掴むその手は震えていた。

 

 「彼らを生きるという苦しみから解放したんだ...。」

 「彼らは痛みもなく、死んだという実感すらなかっただろうね。」

 「楽に死ねて彼らは幸せだったと思うよ!」

 ミナスは笑顔でリアにそう言った。

 

 「ふざけてんの!!アンタ!」

 「楽に死ねて幸せだった??」

 「アンタは彼らのあの笑顔が視えなかったの?彼らがあの時、死にたいだなんて思ってたと本気で言ってるの?」

 リアはそう問いかけた。

 

 「彼らは気づいていないんだよ...」

 「自分たちが家畜であることに!!」

 

 「家畜ですって!?」

 自分の国の国民を家畜呼ばわりされ、リアはブチ切れ、さらに怒気を強めた。

 

 「あぁ...そうだ!彼らは家畜だ!」

 「餌を与えられ、一時的な満腹感を覚える、でもいつ殺されるか分かったもんじゃない!それって、まるで家畜の様じゃないか!?」

 

 「彼らはボクが帝国軍を一掃した時、一瞬の安心感に支配されていた。」

 「今回は、偶々ボクが帝国軍を一掃したから助かったかもしれない」

 「次に帝国軍が攻めてきた時はどうなる...?ボクは恐らくこの街にはいないだろう...」

 「彼らはこれから先、帝国軍にいつ殺されるか分からない不安を抱えながら、生きていくんだよ...」

 「それはとっても辛いことなんじゃないかな...?」

 

 ミナスの言ってることも一理あるような気さえしてくる。実際に現状、街の人たちは帝国軍の持つ"暴力"に対して何も対抗できていなかった。アレでは、次に帝国軍が侵攻してきた時に抵抗することは難しいだろう。

 

 

 でも...それでも...リアの怒りは変わらない。

 

 「それでも、この街の人たちを殺していい理由にはならないッ!!」

 「彼らには"未来"があった!!その"未来"の可能性は無限大なの!!」

 「アンタが決めつけるような一方的に命の危険を脅かされるような未来は来ないかもしれない!!」

 

 

 「どうだろうね...??」

 「でも、ボクは人間なんて、15を超えれば変わらないと思うけどね...!」

 「ボクだって、何千年と生きてきたが、ほとんど変わっていない。」

 

 ああいえばこういうミナスに対してついにリアはナイフを取り出し、振り上げた。

 

 「おっと...やっと殺す気そのきになってくれたのかな?」

 ミナスは人差し指でクイクイと振り、リアを挑発するように見せた。

 

 「ハァハァ...アンタねェ!!」

 しかし、リアだって分かっている。

 

 現状、ミナスの力は帝国軍が相手でも十分に通用することは実証された。

 

 ここでミナスを殺せば、自分の帝国に対抗するカードはなくなってしまう。それは避けなければならない。今ここでミナスを殺せば、さらに多くの民が帝国軍に食い物にされてしまうことをリアは分かっているのだ。

 

 現状、ミナスを殺してはならない。

 

 いくら、ミナスの事を殺したいほど憎いと思っていても...。

 

 だから、ナイフをしまわなければならない。

 

 そう...自分の怒りを抑え込んで、ナイフをしまわなければいけないのだ。

 

 「アンタは私が殺してやるから覚悟しなさいッ!!」

 

 そう吐き捨てるように言い放つと、リアはミナスの頬を思いっきり叩いた。それから、スッと立ち上がって、ミナスから距離を取る。

 

 

 生まれて初めて女の子に全力でビンタされ、ミナスはこう感じていた。

 

 

 何ていうか、月並みな表現になるが...

 

 

   "そのビンタはとても痛かった...。"

 

 

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