第59話 星の巡る地⑪
~星霊都市アーカルム~
正直、驚いた―――
何千、何万年と生きてきて、真正面からボクの弱体魔法を防がれたのは初めての経験だよ。
そして、否が応でも確信させられる。
やっぱりボクは"弱い"。
弱いからすぐに焦り、狼狽え、何をしたらいいか分からなくなる。
「今度はこちらの番です―――」
レインは冷静に、顔色一つ変えずにミナスにその鋭い刃を向ける。
ミナスの生命を刈り取る為に。
「うぅ・・・あぁ・・・!!」
目にも止まらない速度でミナスの身体が切り刻まれる。
「絶望剣:黒涙ノ太刀!!」
「まるで"舞い"―――、戦いの中で舞い踊っているかのようだ・・・。」
帝国兵たちはその姿に目が離せない。
あまりにも鮮やかな剣技を繰り出すレインを見続ける。
「貴方がどれだけ斬っても死なないなら、死ねるまで斬り続けてあげます。」
何だろう・・・この感情・・・は・・・・・?
この世界から来て初めてかもしれない。
リアのアレとも違う。
「能力値降下!」
「遅いですッ!!」
ミナスの腕を斬り落とし、能力値降下の発動を封じた。
細切れになってもミナスの身体はすぐに再生を始める。
痛みなんて、とうの昔に感じない。
それでも感情は揺さぶられている。
なぜなら、彼女は次元の狭間にいた魔物とも、これまでの帝国兵達とも違ったからだ。
「絶望剣:断望!!」
「望みの全てを断ち切り、そのまま死になさい!」
彼女は・・・彼女は・・・真正面からボクを・・・その純粋な瞳で殺そうとしてくれている。
「流石はヴィクター博士の発明品だ―――」
何故、レインがミナスの弱体化魔法を斬り払うことが出来たのか―――
それはヴィクターの試作品が起因している。
『恒常輪』。
今、レインの両手に付けられているのが、それだ。
効果は『自身への能力値が下がる効果を無効化する』というもの。
対ミナス用防具として用意されたそれは弱体化魔法を防ぐ力を持つ。
しかし、あのミナスという魔導士の力も恐ろしい。
まともに受ければ、あのリングと言えども砕け散るだろうと云うのが博士の見解だ。
だからこそ、レイン将軍にそれを委ねた。
彼女ならその力の全てを引き出し、最低限の接触で、あの弱体化魔法を防げるだろうと考えた。
結果、彼女はその天才的な剣技を組み合わせることで、弱体化の術を斬り払った。
まさに神業・・・アレはレイン将軍にしかできない芸当。
博士、貴方の考えは正しかったみたいだぜ。
今、レイン将軍はミナスを一方的に切り刻んでいる。
ルードは二人の闘いを見て、それを感じ取った。
一方的にやられるミナスはこう感じていた。
ここまでボクを想ってくれるなんて、『嬉しい』。
と―――
驚きからの歓喜へ徐々に感情が変わる。
そう、カジハラは一つだけ読み違いをしていた。
ミナスがこれまで数多くの強敵を殺すことができたのはそれが初見であるところが大きい。
しかし、彼がここまで強烈なマイナスの力を得ることができたのは、その異常なまでの"死への執着"があったからだ。
もっと・・・・もっと・・・・もっと彼女の力を引き出したい―――
その強い力をこの身に浴びたい。
そして、ボクを・・・ボクを殺してくれエエエェェーーーーっ!!!
「堕落!!」
ミナスが指でスペルを刻み、切れかかった口で詠唱する。
「ッ―――!?」
ミナスの今の状態は上半身、下半身がそれぞれ細切れにされ、とても人の形を保っているとは言えない。
通常、ここまでバラバラにされて、魔法が使えるとは思っていない。
しかし、その魔法にレインは反応を示す。
だが、一歩遅かった。
初見の魔法に一瞬、判断が遅れる。
レインは幻覚を見させられる。
堕落はあらゆる状態異常をランダムで引き起こす魔法。
これで少しレインの動きが鈍った。
その時間を利用して、ミナスは態勢を立て直す。
五体が復活するのに5秒と掛からない。
「なんなんだ・・・あの生き物は・・・・!?」
帝国兵は形容しがたい恐怖心を抱く。
首を斬っても死なない、燃やしても死なない、細切れにしても死なない。
そんな生物が他にいるだろうか。
おおよそ、ミナスがこの世の生物ではないのではと悟る。
「ねぇ、もっと君の力を見せてよ―――」
「ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねえぇぇ~~~~~~????」
「・・・・・・・危険な男ですね。」
ミナスとレインの攻防はまだ続く。




