第58話 星の巡る地⑩
~星霊都市アーカルム 近郊~
アーカルム近郊、森の中、カジハラが一人で水鏡の前に座る。
そこには向かい合うミナスとレインの様子が映し出されている。
彼はアーカルムの様子を自身の式神を使い、偵察している。
少し距離を置いた所でいざとなったら自分が動けるように備える。
バサっ―――、バサっ―――
カジハラの元にドラゴン形態のシロが戻ってきた。
「ただいま戻りました―――」
「誰にも付けられてないだろうな?」
「はい、追跡してきたハエは叩き潰しましたし、私の気配察知、魔力感知ともに反応はありませんでした。」
オレっちの仕掛けた罠にも特に反応は無し―――
誰にも付けられてはいないようだな。
「二人の闘いを見ているのですか?」
「あぁ、そうだ。」
「この二人どっちが勝つと思う?」
「あのレインという将軍、確かに強かったですが、ミナスという魔導士もまた想像以上の人外です。」
「彼は次元の狭間の怪物を一匹残らず駆逐したと云っていました。」
「それは恐らく本当でしょう。」
「だから、私は彼が勝つと思っています。」
「ふぅ~~、なるほど―――、お前はそう思うんだな。」
「ミナスは危険な存在―――、確かにそれはオレっちも同じ意見だ。」
「だが、ヤツも倒せない訳じゃない―――、明確な弱点もある。」
「弱点・・・ですか?」
「あぁ、あのレイン将軍が勝てるかどうかはその弱点に気付くかどうかだ。」
「なるほど・・・で、ご主人様はここで高みの見物って訳ですか?」
「まぁな―――、黒幕は裏側で座して眺めるってのが相場だろ?」
「そういうものですかね・・・。」
~星霊都市アーカルム~
場面は戻り、アーカルム。
ミナスとレインの闘いへ移る。
後方で二人の闘いを眺めるルード。
彼もまた不用意に近づくのは危険と判断している。
彼の部隊は後方で待機させている。
合図次第ですぐに動けるようにしている。
「帝国最強のレイン将軍―――」
「アンタの力、見せてもらうぜ―――」
レイン将軍はヴィクター博士によって造り出された人造魔導戦士。
帝国の最高技術を用いて、人為的に生み出された最強の魔法剣士。
その戦闘力は、大型のドラゴンすら一人で軽々と打ち倒す程。
まさに人智を超えた存在―――
それがレイン将軍の強さの秘密。
そんな彼女とあの怪物がどう戦うのか正直興味はある。
注目度の高い二人の闘い。
「先の闘いでは途中で邪魔が入りましたからね―――」
「今回は存分にやれそうですね。」
レインが動いた。
既に大勢の帝国兵を屠ったミナスを脅威とみなしている。
常人では眼で追うことすら難しい速度で、ミナスに斬り掛かる。
気付いたら、帝国で私は最強の存在だった―――
誰も私の強さに付いて来れる者はいなかった。
「・・・・貴方はどうですか?」
レインの鋭刃が一閃、ミナスの身体を空気ごと切り裂いた。
グチャグチャグチャ・・・・。
まただ―――
さっきと同じ―――
ミナスの身体は液体状に変わり、ダメージはない。
「絶望魔法:黒い閃光!!」
レインが左手から魔力を解放する。
黒い光がミナスの身体を丸ごと包む。
「焼却―――」
高密度の魔力が辺りを焼き尽くす。
身体が液体なら今ので蒸発してもおかしくはない。
そもそも、彼に物理法則が通用するのか?
そこが懐疑的―――
ミナスの腕が黒煙の中から現れる。
ミナスは生きている。
「能力値降下!」
これが彼の弱体化魔法・・・。
これを防げれば―――
レインはその眼でミナスの能力値降下を見極めようとする。
もしこれが初見だったら、レインはやられていたかもしれない。
しかし、レインは帝国最強の将軍。
彼女自身、天才的な剣のスキルを持っている。
「絶望剣:怨嗟の冥剣!」
「ッ―――!?」
「おっ、おおおぉぉぉーーー!!!」
後方にいた帝国兵は歓喜の声を上げる。
ミナスの能力値降下がレインの剣によって斬られた。
ミナスは思わず、目を見開く。
正直、驚いていた。
次元の狭間でもこんな芸当をしてくる者はいなかったからだ。
「だいたい分かりました―――」
「その術はもう私には通用しません。」
レインは済ました顔でミナスを見つめていた。
◆◆◆
「そうだ―――」
「ミナス・・・お前がいままでその術で強敵を破って来れたのは、それが初見だったからだ―――」
「お前を見たら、強者であればあるほど、お前のことを見下し、油断するだろう。」
「だからこそ、お前はシロクラスの化け物を屠ることが出来た。」
「だがなぁ、ミナス・・・人間はお前が思ってるほど、甘くない―――」
「相手が脅威であればある程、対策をして来る・・・現実はお前が思っている程、都合よく出来てはいねェーンだよ!!」
カジハラが水鏡を見ながら、そんなコメントをする。
こうなることを薄々、感じていた。
カジハラがミナスに抱いていた弱点はまさにそこだった。




