第55話 星の巡る地⑦
~星霊都市アーカルム近郊 解放軍本陣~
モノス平原の戦いは失敗し、撤退。
解放軍はモノス平原から少し距離の空いた所で陣を敷く。
「カジハラさん、数えてきました!」
「おう、ご苦労さん―――、それでどれくらい生き残った?」
「数はざっと500人ほどです。」
「500か―――、思ったより残ったようだな。」
元々の兵力6000人が今や500人にまで減った。
その被害の大部分は先頭に出向いた4000人を屠った帝国の将軍レインによるもの。
しかし、カジハラにほとんど動揺は見られない。
自分の作戦が完全に破られたと云うのにこの落ち着き様。
彼はまだこのアーカルム奪還を諦めていない。
「カジハラさん!!伝令が到着しました!!」
「おっ―――、やっとシグマの上層部から反応があったか。」
「何を聞いてたの?」
ミナスがカジハラに尋ねる。
フンっ―――
鼻を軽く鳴らすと、伝令の方を指差す。
「まぁ、先に報告を聞こうや―――」
伝令がカジハラの前で息を切らしながら、現れる。
よっぽど急いでいるようだ。
数日間は馬を走らせ続けてきたのだろう。
「はぁ、はぁ・・・報告します!」
「シグマ本部から約五千の増援が来るそうです!」
「ほぉ―――」
「上層部も手を打って来るか。」
「それともう一つカジハラさんが気にしていたアーカルムの扱いについても回答がありました。」
「聞かせろ―――」
「敵の手に堕ちたアーカルム奪還について、帝国から取り戻す為であれば、どんな手を行使しても良いとのことです!もし住民が人質にされたとしても奪還を優先にして構わないとのこと!!」
「フフっ・・・上層部もやっと事の重大さが分かったみたいだな。」
「これで報告は終わりです!!」
「ご苦労―――、お前は下がって休んでいいぞ。」
カジハラは伝令を外に出す。
「どういうこと?」
ミナスがカジハラに尋ねる。
「あのアーカルムは立地的に帝国が南部からシグマ連合本部がある都市へ侵攻するのに重要な拠点になる―――」
「なるほど―――」
「それともう一つ、寧ろこっちの方がヤバい。」
「アーカルムでしか採れない特別な資源がある―――」
そう云って、カジハラが胸ポケットから一つの鉱石を取り出した。
それはとても綺麗に光っているクリスタルのような石だった。
「これの名前は『星霊石』。」
「これ一つで相当なエネルギーを持つ。」
「こいつはこの世界でもかなりの値段で取引されている重要な資源なんだ。」
「それがあのアーカルムで採れる。」
「帝国はそれを狙ったってこと―――?」
「まぁ、そうだろうな―――」
「黒剣将軍レイン―――、重要な拠点だからこそ、帝国は最強クラスの戦力を当てたってこった。」
「まぁ、だからこそ、上層部はアーカルムを取り戻せないならいっそ帝国ごとやれって思いもあるんだろうな。」
カジハラはミナスにアーカルム奪還がどれほど重要かを説明した。
「君、まだ諦めてないんだね―――」
ほとんどの戦力をレインにやられ、再起不能かと思われたが、カジハラの眼は死んでない。
「当たりめェーだ!」
「やられたらやり返す。それがオレっちだからな!」
「でもさ、どうすんの?」
「作戦失敗しちゃったじゃん―――」
「プランBだ―――」
「正面からブチ破るのは止めだ。」
「上から攻める。」
「上?」
「テメェーの力を調べさせてもらった。」
「弱体化の技を掛けて対象を同じくらい弱体化させる―――、テメェー自身が生きてるのが不思議なくらい弱い。それを逆手に取った術式。」
「オメェ―本当に不老不死なんだな?」
「その通りだよ、よく分かったね―――」
「だからボクは死にたいんだ。」
「殺してくれるヤツを待っている。」
「フフン♪そうか―――、そりゃ好都合だ!」
「作戦はテメェーをメインにする!」
「簡単な話だ―――、上空からテメェーをアーカルムの中心に投下して、その術式を全力で解放しろっ!!」
カジハラの作戦は大胆だ。
ミナスが死なないことを利用して、ミナス自身をアーカルムを崩壊させる爆弾にするというもの。
捕虜となった住民の命など一切考えない。
帝国兵を殲滅する為だけの作戦。
「そんなことして本当にいいの?」
「君の良心は痛まないのかい?」
「誰にモノ云ってやがる!」
「オレっちは鍜治原 望―――、目的の為なら手段を選ばねェー男だ!!」
「フフ・・・君も大概壊れてるね。」
「はっ、そりゃお互い様だろ―――」
「だけど、上空からって言ったってどうやって行くのさ?」
「空を飛ぶ手段でもあるっていうのかい?」
「あぁ、あるね―――」
「おい、シロ!!」
「はい、ご主人様」
そう云うと、シロの身体が光り出した。
身体がボキボキと音を鳴らして変わっていく。
ドンドンと大きく、そして美しく―――、その姿を変えていく。
「それが君の本当の姿なんだね―――」
ミナスは顔を上に向け、そう口にした。
眼の前にいるのは真っ白な竜。
大人を何人もその背中に乗せることができる大型のドラゴン。
それがシロの本当の正体。
「次元覇王竜・・・昔はそう呼ばれていたらしいぜ・・・。」
「まぁ、そんなシロも今やオレっちの忠実なシモベだがな・・・。」
これで腑に落ちた。
彼女から次元の狭間で出会ったアイツ等と同じ匂いがした理由が。
彼女もあそこの出身者なんだ―――
ミナスはそう思う。
「おい、早速出発だ!」
「シロ!ソイツを運んでやれっ!!」
「かしこまりました、ご主人様。」
シロはミナスを乗せて、星霊都市アーカルムへと飛び立つ。




