第52話 星の巡る地④
~星霊都市アーカルム近郊 モノス平原~
この私がこんな人間に負ける・・・?
シロの両肩は既に深手を負っている。
レインの鋭い剣撃を受けてしまった。
シロは上体を崩しかけ、落馬しそうになるが、何とか持ちこたえ、少し距離を取る。
冷静になる為だ。
ケガはまだしも、自分より格下だと思っていた人間にここまで一方的にやられることが想定外。
「・・・・・意外ですか?」
レインはそう呟く。とても小さい声で、しかし確かに口にする。
その顔は無表情―――、敵を斬ったと云うのにその顔は何一つ変わらない。
この女は強敵だ・・・。
シロは認識を改めた。
生まれてこの方、自分に匹敵する存在には数える位しか出会ったことがない。
元の姿に戻れば、こんな人間、簡単に・・・。
シロは一瞬、眉を潜める。
喧騒の戦の中、二人の間に沈黙が流れる。
「そうですね―――、貴方は私の思った以上にやるようです。」
「こちらも本気で行かねばなりません。」
シロは武器を両手に持った状態で高速詠唱する。
「白律障壁!!」
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白律障壁
白い文字が鎖のように連なり、法則そのものを盾にする。
効果:物理・魔法ダメージ軽減
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「白字祝福!!」
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白字祝福
空中に浮かぶ白い文字が対象の身体に溶け込む。
効果:全能力小幅上昇/状態異常耐性付与
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「純白詠!!」
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純白詠
詠唱者が白文字で対象の「名前」を書く魔法。
効果:バフ効果が対象に強く固定され、解除されにくくなる
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「白刻強化!!」
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白刻強化
武器や拳に白文字が刻まれる。
効果:攻撃力上昇+命中補正
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「聖文加速!!」
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聖文加速
足元に白文字の魔法陣が展開。
効果:行動速度・詠唱速度上昇
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「能力向上系魔法・・・。」
「ここからが本当の勝負です。」
シロは聖なる神槍を構えてからの高速突進。
「白誓穿!!」
その一撃は音もなく消え、次の瞬間にはレインの背後。
「ッ―――!?」
もらった―――
シロはそう確信した。
「黒い雨!!」
レインが超反応で反撃してきた。
その剣をクネクネと曲がったと錯覚するほどの高速の刺突を繰り出してきた。
「槍の使い手相手に刺突とは・・・貴方、度胸有りますね。」
能力向上の魔法のおかげで数段上の力を発揮するシロ。
そのシロに追いつき、反撃するレイン。
もはや、お互い人間技ではない。
両軍、二人の闘いに呆気に取られる。
「その力、貴方はどこで・・・?」
シロはレインに聞いた。
純粋に興味があったからだ。
自分の能力に接近する者など珍しい。
大抵の敵は苦戦せずに制圧できる。
そんな退屈もあり、逆に今は楽しい。
「貴方に教える義理はありませんが―――、まぁ、強いて言えば、絶望の先で得た力とだけ言っておきます。」
絶望の先・・・?
よく分からないことを云うレイン。
「あまり時間がありません―――」
「そろそろ決着をつけさせてもらいます。」
「聖文封穿!!」
シロの詠唱と共にレインの敵の足元に白文字の魔法陣が刻まれる。
騎馬が動けない?
シロが馬から勢いよく跳躍し、上空へ飛翔する。
「天槍降臨!!」
巨大な光槍をその手に生み出し、狙いをレインに絞る。
「これで終わりです!!」
「白き聖槍よ、天より下れ!!」
レインの方向へ投げつけた。
光って眩い・・・輝かしい。
私の嫌いな光だ。
「絶望魔法:絶望の雨!!」
レインが力を解放する―――
突如として、雨が降り注ぐ。
黒い、漆黒の雨だ。
「この雨は・・・?」
ミナスは手を広げ、雨をその手で受け止める。
「レイン様があの魔法を使用された!!」
「総員退避だッ!!」
ガイモウの指示と共に帝国兵が急いで退却していく。
天槍降臨もレインに触れる前に雨の影響で消えてしまう。
「私の天槍降臨が・・・!?」
シロも驚愕していた。
渾身の一撃がレインに触れることすらなかったからだ。
絶望の雨は解放軍の方にも影響が出始める。
隊員がバタバタと倒れ始めた。
そして、彼らの生命力を徐々に奪っていく。
それはシロも例外ではなかった。
「侮ってしまった―――、ご主人様・・・申し訳ございません。」
シロもその場に倒れる。
先に出てきた4千の解放軍は全滅へ向かう。




