第48話 城塞都市バルクール攻略戦を終えて
~城塞都市バルクール~
「これで全員のようですね―――」
城塞都市バルクールでの戦闘は終わった。
ここを支配していた帝国の将オルスは打倒した。
将を失った帝国兵は南北からの解放軍と内部からの挟撃に遭い、大半が死に、残った少数の兵士達は隙を見て、逃げ出した。
逃亡に失敗した帝国兵達も捕縛し、牢獄に入れる。
全ての帝国兵を倒すことが出来なかったが、無事にバルクールを奪還することが出来た。
「大半の住民が惨殺されてしまった―――」
「コレが帝国のやり方か・・・!?」
「もっと早く来ていれば、救えたかもしれないのに!」
解放軍やシグマの戦士達もやるせない気持ちを口に出す。
「残念だが、コレが戦争ってもんだァ―――」
「救えたものがあるだけマシだ。」
「カジハラ殿・・・。」
「シグマの上層部に伝えな―――」
「バルクールは解放したと―――、そして、ここに残っている者は女や子ども、ケガで動けない者が大半だってな。」
ここが解放できれば、もう一つの占領されたアーカルム奪還も目が出てくる。
「ケガで動けない者はここで待機だっ!!」
「動ける奴だけで、星霊都市アーカルム奪還を目指すっ!!」
「オレっちに付いてこいッ!!」
カジハラが兵士達を先導する。
ここまでの戦闘で失った兵力、死傷者合わせて4000人弱。
残りが6000人超。この戦力で星霊都市アーカルム奪還を行う。
4000人の兵力を失ったが、逆にいえば6000人残った。
カジハラはこの兵力なら奪還は可能だと考える。
オレっちの私兵はシロ以外できる限り使いたくねェ―――
理由は二つ。
一つ目は異世界から来たオレっちの能力はあまり公開したくないからだ。
オレっちの能力もこの世界ではかなり価値のある能力になる。
そんな能力者がいたら味方からは頼られ過ぎてしまうし、敵から目を付けられてしまう。
良いことなんかありはしない。
二つ目はあの魔導士の存在だ―――
ミナスとかいったあの魔導士、ヤツもオレっちと同じで常識外れの能力を持っているみたいだ。
さっきの戦いでは、オレっちの私兵ごと敵の将を殺していやがった。
周囲の生物を無差別に殺せる能力―――、そんなヤツがいたら、こちらの戦力を出せばそれだけ消耗してしまう。
寧ろ、厄介な敵はヤツにぶつけてしまった方がヤツの能力も観察できるし、得策だ。
カジハラは次のアーカルム奪還戦では、敵の将とミナスを戦わせようと考えていた。
「ねぇ?パパ・・・どこに行っちゃったの?」
泣きべそをかいた少女がミナスとシータの元にやってきた。
その足取りはフラフラしている。
まだ5歳くらいだと云うのに帝国に親を奪われたのだろう。
「よしよし―――」
ミナスはいつもの調子でその少女の頭を撫でる。
この子どもの親が既に亡くなったことは大体想像できる。
その辛さや悲しみもよく分かる。
大切な人を失って、自分一人だけ取り残される。
それはかつての自分も体験した出来事。
「泣くのはおよし―――」
「ぐすん・・・。」
「あっちにたくさん人がいるからあそこなら君を迎え入れてくれるよ。」
「行ってみるといいよ。」
「うん!」
ミナスはこれまでに見たことの無いくらい穏やかに微笑んでいた。
シータはその様子を横で見ていた。
~~~
ミナス様が―――!?
ええ、あのミナスはサファイアの住民を皆殺しにした。
力が暴走したとかではないのですか?
あれは、暴走なんかじゃない―――、ミナス自身の意思でやったこと。
でも、それ以降は同じことをしてないんですよね?
ええ、私がきつく叱ってからは人を無闇に殺めたりしていないわ。
今回の遠征―――、貴方にはミナスについて彼を監視してもらいたいの。
分かりました―――、ミナス様は私を救ってくださりました。きっとミナス様自身も何か思う所があるのだと思います。
それとこのことは他言無用でお願いね―――、コレが公になれば、ミナスを糾弾する輩も現れるでしょう。まとまりかけていた解放軍も瓦解する可能性が大きい。
貴方のことは信頼しているわ―――、シータ。
かしこまりました―――
~~~
やはり、ミナス様はお優しい。
あんな笑顔を無垢な子どもに向けられる人が虐殺なんてするわけがない―――
もししていたとしてもそれには何か理由が在るハズ。
もしそのようなことをしそうになったら私が止めて差し上げる。ただそれだけのこと。
「動けるものは移動する!!」
「行くぞォーー!!」
号令が掛かった。
ミナスは立ち上がり、声のする方向を向く。
「集合の合図みたいだね―――」
「ボク達も行こう。」
「はい!!」
ミナスとシータも歩き出す。
目指す先は星霊都市アーカルム。
~カルデキア帝国 帝国軍本部~
「城塞都市バルクールが奪還されただと!?」
バルクールから逃亡した帝国兵からの急報にランスロットが驚く。
「敵はシグマの精鋭部隊か?奴らの動向は監視していたハズ、何故気付かない?」
「いいえ、ジュエル王国の解放軍です!」
「ジュエル王国の解放軍が何故、シグマに!?」
「・・・・そうか、奴ら手を結んだのか!!」
「シグマの願いは主要都市の奪還で、ジュエル王国の願いは王都奪還―――」
「それぞれがその望みを叶える為に手を結んだ―――、そう考えるのが妥当だろう。」
「いかがいたしますか?」
「ヤツ等が次に狙うは星霊都市アーカルム。」
「シグマからしてみたらあそこの方がバルクールよりも取り戻したいと思うだろう。」
「なんせ、あそこにはシグマの・・・いやこの世界にとってとても価値のある宝があるのだから。」
「援軍を出せッ!!」
「解放軍の奴らを根絶やしにするのだッ!!」
「ハッ!!」
星霊都市アーカルム―――、あそこを支配しているのは黒剣将軍レイン。
帝国が誇る大将の位にいる無敗の女騎士。
解放軍に万が一の可能性もない。
だが、念には念を入れて別動隊を向かわせる。
「ルードか・・・待っていたぞ。」
「やっと俺の出番という訳だな―――」
「あぁ、お前には星霊都市アーカルムに向かってもらいたい。」




