第45話 城塞都市バルクール攻略戦⑥
~城塞都市バルクール~
ジュリエッタ達が攻め込む中、オルスはとても冷静に構えていた。
まるで、解放軍など敵ではないかのようだ。
「なぁ、アンタ達―――」
「ここにジュエル王国の解放軍が来るってよォ!」
「良かったなァーー!!」
オルスは手足をロープで縛っている女たちに向けてそう口にする。
「ん"ん"んーーっ!!」
口には湿ったタオルを巻きつけ、利けないようにしている。
彼女たちはこの街の住人の一部。
帝国はこの街に侵略し、多くの人間を虐殺し、その半数を捕虜にした。
その捕虜たちも彼らの機嫌次第で、簡単に凌辱され、命を奪われる。
オルスたちはこの街で命を弄んでいた。
「オルス様、ご報告です!ザジ副官が敵のやられました!」
伝令の帝国兵がオルスの元へとやってきた。
「ザジがやられただァ!?」
「チッ、あの野郎ォ!解放軍なんぞにやられおって―――」
「ヤツ等ものすごい勢いでこちらにやってきます!!」
「中にはジュエル王国の将軍ジュリエッタ-トラインを名乗る者もいるとか―――」
「ジュリエッタ-トライン?聞かん名だなァ!!」
「まぁ、誰が来ようと相手をしてやるだけだ―――」
「なぁ!エルグ!!」
そう云って、オルスは何かを撫でるような仕草をする。
「オルス様、我々は如何様に?」
「ア"ァ"!?テメェー等は解放軍を倒すこともできないどうしようもない奴らだ―――」
「そんな奴らの結末なんぞ、決まっているだろう?」
「はっ・・・!?」
状況を伝えに来た帝国兵は青ざめる。
眼の前に巨大な"ソレ"がいたからだ。
クチャクチャと音を立てて口を動かす。
その不気味に様相に恐怖する。
「オルス様―――、お助けを!!」
「エルグ―――、そいつ喰っていいぞ!!」
「オルス様アアァーーーーっ!!」
クチャクチャクチャ・・・ガブっ・・・!!
「ギャアアアァァーーー!!!」
グチャ!グチャ!グチャ・・・!
グキキキっ―――
肉が喰い千切られ、骨が砕ける音が鳴る。
エルグと呼ばれる怪物が妖しく眼を光らせる。
「おー、よしよし、イイ子だ―――」
「ここにあと少しで帝国に逆らう愚かな解放軍がやって来る。」
「そいつらも喰っていいぞ―――」
オルスはエルグを撫で、褒める。
「敵将はどこだァーーー!!」
オルスの言った通り、少しすると、ジュリエッタ達が到着した。
「貴様がここの首領か!?」
ジュリエッタが血走った眼で尋ねる。
「おぉー、コワいコワい・・・。綺麗な顔が台無しだぜェ?」
「下らんことを云ってないで、こちらの質問に答えろッ!!」
「貴様がここのボスで間違いないな!?」
「はぁー、冗談にも付き合ってくれんとは・・・あぁ、そうだ―――」
「俺がここのボス、オルス-フィル-カイシュン!!」
「皆はオルスと呼ぶ。」
「そうか―――、ならば貴様を斬れば、この都市は解放されるという訳だな!」
ジュリエッタは剣を向け、構える。
「この俺とやるってのか?ア"ァ"!?」
「身の程を弁えろよ?クズ共がァ!!」
オルスは口汚く罵る。
「黙れ!外道が!!」
ジュリエッタはその傷だらけの身体で斬り掛かる。
「お前は俺に触れることすらできねェーよ!!」
「エルグ!!やっちまえ!!」
「隊長!!上から何かがやってきます!!」
ジュリエッタは頭上に注意を向ける。
「なんだ、アレは・・・!?」
ジュリエッタは目を見開き、その異形の者に一瞬固まってしまう。
「黒脊獣 エルグ―――、俺のペットさ。」
見た目は巨大な黒い毛皮の獣。
そんな大型の獣が天井に張り付き、地に落ちてきた。
ドスンっ!そんな音を立てて、落ちてきた。
砂埃を巻き上げ、ジュリエッタの前に立ちはだかる。
そのデカさ―――、ジュリエッタの軽く2倍はデカい。
そして、エルグはデカさだけでない、獰猛さも兼ね備えている。
鋭い牙がその口から顔を覗かせている。
腹を空かせているのだろう、涎がその口から垂れている。
「隊長!!そいつは危険です!!」
「ここは一旦、退きましょう!!」
部下達はそう云うが、ジュリエッタは退く気はない。
「ここまで来て、退けるか!!」
「それに今、ここで背を向けてみろ!!」
「我々は一瞬で食われてしまうだろう!!」
「よく分かってるじゃねェーか―――」
オルスはニヤリと笑みを浮かべてそう云った。
「行くぞ!化け物!!」
ジュリエッタは剣を向けて、挑む―――
「ククク・・・愚かな女だ―――」
勝敗はすぐについた―――
ジュリエッタは血だらけになって倒れる。
全く歯が立たなかった。
「隊長オォォーーー!!」
隊員たちは涙を流し、隊長と叫ぶ。
「シロ殿―――、どうか!隊長をお助け下さい!!」
「このままでは―――!!」
もはや縋る先はシロしかいない。
驚異的な力を持つシロならあるいはと考えたのだ。
しかし、シロはその首を横に振る。
「ご主人様から私はあの者と戦うなと仰せつかっています。」
「そ、そんな・・・どうにか、どうにか・・・なりませんか!」
「ご主人様の指示は絶対です―――」
ジュリエッタは絶体絶命かに思えた。
「よおぉぉーし、エルグ、その女を喰っちまえ!!」
エルグのその巨大な牙がジュリエッタに迫る。
その時だった―――
「おぉー、やってんなァーー!!」
「ご主人様!!」
「カジハラ殿!!」
そこに突如現れたのはカジハラだった。




