第42話 城塞都市バルクール攻略戦③
~城塞都市バルクール~
敵将のオルスは王国の数千の兵が攻めてきたと聞いても顔色一つ変えていない。
柔らかそうなソファーにドッシリと腰掛け、一服している。
「戦況はどうなっている?」
部下に尋ねる。
「敵は南北の城門を破ろうと交戦中―――しかし、こちらに入って来れず、攻めあぐねています。」
「敵はどんな奴らだ?頭はどこのどいつだ?」
「肌色と言葉からシグマの人間ではないようです。」
「恐らくですが、敵はジュエル王国の解放軍かと―――」
「ジュエル王国の解放軍だと・・・?」
「まさか、この国と手を組んだと云うのか?」
オルスは少し考え事をする。
彼の耳にも解放軍のことは入ってきている。
かの有名なヴィクター少佐が解放軍との交戦で撤退を余儀なくされたと。
なんでも一撃で大量の人間を無力化した恐ろしい魔導士が敵にいるらしい。
「面白い―――、そんなヤツがいるなら俺が直々に相手をしたいものだ。」
そんなことを云っていると、廊下をドタドタと走る足音が。
「大変です!!」
「敵の一行が西の城壁に穴を開け、そこから侵入を確認!」
「内部の兵士たちを無力化してここへ向かっております!」
「南北の城門の方は囮か―――」
「本命は西からの戦力―――」
「いかがなさいますか?」
「ザジだ!」
「ヤツに侵入者たちを血祭りに上げろと伝えろッ!!」
「ハッ!!」
ザジ・・・帝国陸軍第六鉄血師団所属の兵士。
第三鉄血師団隊長のルードにも認められた程の剣の使い手。
非道な任務においても躊躇なく実行する鉄の心を持っている。
ザジなら解放軍とはいえ、そう簡単には突破できまい。
その頃、ミナス達はバルクール内部にいた帝国兵達と交戦しながら歩を進めていた。
いくら少数とはいえ、攻め込んでいる訳で、暫くしたら敵に感知された。
その度に返り討ちにしてはいるが、中々前に進めない。
「本当にこちらで合っているのか?」
ジュリエッタは敵を倒しながらシロへ尋ねる。
「はい、敵将はこちらにいます―――」
何故、それをシロ殿が・・・?
ジュリエッタは少し疑問に思ったが、そんなことを考えている余裕もあまりない。
圧倒的に敵兵の数が多い。
それに久しぶりに闘って実感している―――、ヤツ等の兵器は王国の軽く十倍は強い。
より効率よく敵を制圧することに特化した兵器の数々・・・。
例えば、この"銃"という武器―――、遠距離から敵を撃つことができる。
剣のような長年の修行も必要なく、引き金を引くだけで敵の命を奪うことだって出来る。
そんな武器をそこら辺にいる兵士達の全員が所持している。
「恐ろしい連中だ・・・。」
「みんな~~走るの速いよ~~!!」
「大丈夫ですか?ミナス様!」
ミナスは走っている先行部隊に置いてけぼりにされかけている。
走っても全然追いつけない。
そんな体力もない。
シータはそんなミナスのペースに合わせてくれている。
「君もボクに構わず、先に行ったらいいよ―――」
ミナスはシータにそう告げる。
「いいえ、ミナス様に付いて行きます。」
「貴方様のことが心配ですから。」
えっ~~、別にそんな気に掛けなくてもいいのに・・・。
ミナスはそう思ったが、喉から声が出なかった。
やっぱり走ると肺の辺りがキュッときつくなる。
吐き気もする。
ただでさえ、この中で一番弱いのに走れるわけない。
もう先行部隊と距離が300メートル近く離れている。それに向こうは襲って来る敵を屠りながらだ。
こっちは楽チンって思ってたなのに距離が広がる一方だ。
「こりゃ、ボクの出番はないかもね―――」
そう云って、ミナスは立ち止まった。
何だか途端に走っていたのがバカらしくなったからだ。
「ボクはボクらしく行かせてもらうよ―――」
「ミナス様・・・!?」
そんな中、ジュリエッタ、シロ率いる先行部隊では―――
「命が惜しければそこを退けッ!!」
更なる敵と交戦をしていた。
「アンタ達、解放軍なんだってな―――」
そんな帝国兵の後ろから出てきたのは目つきの鋭い男だった。
他の帝国兵とは雰囲気が違う。
彼の手に持つのは銃ではなく、剣。
それも刀身が太い、むき出しの刃で、とても重そうだ。
そんな刀剣を肩に担ぐ。
「貴様がこの帝国軍の将か!?」
ジュリエッタが前に出る。
「いや、この軍を率いているのは俺じゃない―――」
「俺はザジ―――、まぁ、ここの2番手みたいなもんだ。」
「そうか―――、ならば蹴散らしていくぞ!!」
ジュリエッタが前に出る。
交戦するつもりだ。
チラッと後ろを振り返ると一緒に来た解放軍兵は傷だらけでとても戦える状態じゃない。
中には歩いているのもやっとな者もいる。
この中で長期戦は苦しい・・・早く敵将を討たないと―――
現状、まともに闘えるのは自分とシロ殿だけ―――
あのミナスとかいう魔導士もどこかに消えてしまった。
私がやらなければ―――
「危険ですよ―――、私がやりましょうか?」
シロがジュリエッタに向かってそう云った。
「あまり、貴公に頼ってばかりもいられない。」
「それに証明したいのだ!王国は帝国と戦えるとッ!!」
「勝ってそれを証明したいのだッ!!」
「もし私がやられた時はみんなを頼むぞッ!!」
そう云って、ジュリエッタは剣を構える。
「おぉー、女のアンタがやんのか?」
「こりゃ、余裕だな―――」
「女だからといって、侮るなっ!!」
「私は貴様の首を取るつもりでいくぞッ!!」




