第33話 ミナスはヴィクターと邂逅する
~カーネリアン砦~
「爆撃が止んだ・・・!?」
リアは周囲を見渡す。
帝国軍も事態の異常さに気が付いたみたいだ。
ミナスが来てから一向に爆発音が聞こえない。
空中で砲弾が空中で消滅してしまっている。
帝国兵が一気に数百人戦闘不能になってしまっている。
この事態が奴らの行動を躊躇わせるには充分。
「これってチャンスじゃない?」
「このまま一気に畳みかければ―――」
「冒険者の人達に伝えなきゃ、今がチャンスだって―――」
リアがそう云うと、ミナスはずっと上空を眺めていた。
「何かが来るね―――」
ドンっっっっ―――!!!
物凄い轟音とともにそれが降ってきた。
上空数十メートルから落ちてきて無事な人間。
只者ではない。
「いや~~、それには及ばないよプリンセス。」
「だ、誰っ―――!?」
見た目からして帝国の軍人。
軍服に白衣を羽織った風貌に、落ち着いた雰囲気の男。
剃ったばかりだろうチクチクとした顎髭を蓄えている。
いくつもの死線を歩き続けた末に身に付いた、落ち着きと冷徹さを併せ持つ。
その男が帝国の少佐、ヴィクター-ソル-ハルバード。
「これはこれは・・・お初にお目に掛かります。」
「帝国陸軍第八鉄血師団所属、ヴィクター-ソル-ハルバード少佐でございます。」
「ってか?」
「クククっ、ハハハーーー!!」
ヴィクターはリア達を前に突然笑い出す。
異様―――
「この男、危険です―――」
「気を付けてください、リア様。」
シータはヴィクターのヤバさにすぐに気付く。
しかし、そんなこと分からない周りの冒険者たちは、突然現れたヴィクターを取り囲む。
「テメェー、帝国の軍人か!?」
「よくもノコノコと出て来れたなァ!!」
彼らはヴィクターを取り囲むと一斉に斬り掛かった。
相手は一人だと侮っていた。
何とかなると考えていた―――
でも、それは大きな間違い。
「あのさぁ、敵が部下も連れずに敵の本体の中心に何も策を持たずにやって来ると思うか?」
そう云うと、それからはあっという間だった。
「これはどういうことだ―――!?」
「うぎゃああああーーー!!!」
悲鳴を上げたのは冒険者たちの方。
「み、みんな!?」
彼らは斬り掛かった瞬間、バタバタと倒れ始めた。
一体何が起こったのか―――
ヴィクターは一歩も動いていない。
この場にいる者は誰一人分からなかった。
「どうした?いくらでも掛かってきていいんだぞ。」
「それとも何か?俺が恐いのか?」
「何をしたのかすらも貴様等の頭じゃ到底分かりはしないだろう―――」
ヴィクターは周りの冒険者たちに向け、そう口にする。
煽るが、この惨状を見た者は足が震えて動き出せないでいる。
指一つ動かすことなく、5人以上を同時に戦闘不能にした。
こんな者をこれまでの人生で見たことない。
「やはり、そうか―――」
「ヤツです。ヤツこそ間違いなくギフト保有者。」
シータがリアとミナスへ耳打ちする。
「一体、どんな能力を使ったのか、ボクにも分からなかったよ~~~」
「あの能力はボクを殺せるかな?」
ミナスは期待に胸を膨らませる。
「君、見てたよ―――」
「あのお姫様を簡単に殺していたよね。」
「どうやったの?」
ヴィクターはミナスの方へと近づき、そう尋ねた。
その眼はまるで商品を品定めするような目つきだ。
「え~~、それを教えると思う?」
「教えたとしても貴方はそれを信じないと思うな―――」
ミナスは適当にはぐらかす。
別にミナスにとって教えて困るものではないが、特にメリットもないので、教える必要はないと判断した。
まぁ、ヴィクターの方もこれで聞けると本気で思っちゃいない。
ヴィクターがミナスの方へと近づく。
「貴方が御姉様を唆したの?」
「唆すとは何という云われ様。」
「彼女が自分の安寧を対価に祖国を差し出しただけのこと―――」
「まぁ、最も―――、裏切り者の末路など悲惨なものだ。」
「ここで貴様らに殺されずとも、遅かれ早かれ帝国の上層部に邪魔者として排除されただろう。」
「バカな女だ―――」
「何故、貴方がそんなことを―――」
「分かるさ―――」
「それが人間というモノ、王族だろうが何だろうが、利用されている内はいいが、用済みとなればポイっと捨てられる。」
「それがこの世の中ってものだからなァ!!」
「確かに御姉様は許されないことをしました―――」
「それでもそれは生き残る為!!貴方にそれを貶す権利なんかないっ!!」
リアが怒る。
「ミナス!!私はあの人を許さない!!」
「さっきの言葉を撤回させてッ!!」
「あいあい―――」
ミナスは快諾する。
ここで闘いを拒否すればリアはこの男と刺し違えても戦いに挑むと思った。
「リアは後ろに下がってて―――」
ミナスは被っていたフードを取る。
「そんな顔をしていたのか―――」
「うん、これで良く見える。」
「君の死に顔が―――」
「ほざけ―――」
「この俺がそう簡単にやられる訳ないだろう。」
「とても自信家なんだね―――」
「でも、ボクはそんな魔物とたくさん出会ってきた。」
「ほう―――」
「その魔物はどうなったのだ?」
「みんな最後には喋らなくなったよ。」
「そうか―――」
「じゃあ、そんな俺の口も封じてみな!!」
ミナス VS ヴィクター開戦。




