第32話 どれだけ賢い者でも分からないことの一つや二つはある。大事なのは分かろうとする好奇心だ
~カーネリアン砦~
「解放軍を制圧しろと命令が出た―――」
「全軍に開戦を伝えろッ!!」
帝国軍は解放軍へ攻撃を仕掛ける。
「うあああぁぁーーー!!」
「ッ―――!?」
ドンドンと爆撃音が周囲に鳴り響く。
熱気に焼かれた空気が残す、鉄錆と煙の匂い。
息を吸うのも苦しくなるくらいのモクモクした黒煙がこの一帯を覆う。
「ついに帝国が攻撃を仕掛けてきた―――」
「ミナス、どうにかできない?」
リアが真剣な表情でミナスに聞いた。
「どうしようもないくらいロクでもないボクがどうにかできるか?」
「難しい要望だね―――」
「みんなを助けることができないの―――」
「助けるってのは"生きた"ままってことかな?」
「ええ、そう―――」
「生きたまま、誰も死なせたくないッ!!」
今はグランがみんなを守っているが、それも長くは持たない。
四方八方から爆撃が行われている。
全てを守るのは難しい。
「ミナス、貴方が行かないと云うのなら私はあそこに行く!」
「どうする?私はあの爆撃に巻き込まれて死ぬかもしれないよ。」
リアが身を挺してミナスに発破をかける
リアの死はミナスにとって何よりも困る出来事。
「それは流石に看過できないよ、リア。」
「う~~~ん、分かった、ボクも行くよ。」
「君を危険な目に遭わせたくない。」
リアと共にミナスも帝国兵と闘う為、戦場の中心へと進み始めた。
ミナスを上手く利用する。
それが帝国と渡り合う唯一の方法。
上空から降り注ぐ砲弾が空中で全て溶けて消滅する。
ミナスの放つマイナスのオーラが砲弾を即座に錆びさせ、朽ち果てさせる。
「リア様・・・ご無事でしたか!?」
戦場の中心には傷つくグランがいた。
「グランさん、しっかりしてください。」
「私達が来たからもう大丈夫です。」
「ミナス、分かっているわよね―――」
「このままじゃ、みんなやられる。」
「だから、こっちも抵抗するの!!」
リアがそう云った。
「しょうがないな~」
吸収した制御の指輪が機能している。
ミナスの力はミナス自身が自由自在に行使できる。
多分、これならあの離れた帝国の兵士達にも干渉することができると思う。
もし、ここの人達にも影響が出たら、まぁ、その時はその時か―――
「悪夢!!」
ミナスは周囲に魔力を解放する。
距離にして、数百メートル先。
これくらいなら余裕だ―――
流石は伝説級アイテムだった制御の指輪の力。
帝国軍人数百人が一気にバタバタと倒れる。
「ッ―――!?」
帝国サイドに動揺が走る。
「おっほ―――!!」
一般の軍人たちが動揺する中、一人テンションの上がる男、ヴィクター。
ヴィクターは、双眼鏡でずっとミナスの方を見ていた。
これほど強力な魔法がこれまであっただろうか?
人類史で見ても極めて珍しい。
「ヤツの身体を解剖してみたい。」
「一体、どういう身体の構造をしているんだ―――」
「興味が尽きない―――」
ニヤニヤとしているヴィクター。
「ヴィクター少佐!!」
「一体、これはどういうことでしょう!?」
俺に聞く前に少しは自分でモノを考えないのか。
「解放軍に極めて異質で異形な魔術師がいるようだ。」
「そ、それは・・・!?」
「どうやら俺が直接行かなければいけないようだなぁ―――」
「しょ、少佐自ら!?」
「あぁ、そうだ―――」
「いたずらにこちらの戦力を減らされても敵わないからな―――」
「それに・・・。」
「それに・・・?」
俺自身、ヤツには興味がある―――
ヴィクターが動き出した。




