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誰かボクを殺してくれ ~不老不死でLv.-9999の災厄ダウナーは今日も死にたがる~  作者: ゆに
第1章 最弱のダウナー

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第28話 何かがハジけた日


~カーネリアン砦~

 

 シータがミナスを襲ってから数日が経過した。

 

 順調に物資や冒険者たちが対帝国のため集っていた。

 

 「ミナスもシータさんもどこに行っちゃったんだろう―――」

 

 数日前からミナスとシータの姿が見えない。

 

 リアは砦内を調べ回ったが二人の姿はどこにもなかった。

 

 リアに不安が過る。

 

 もしかして、二人とも帝国兵に捕まった?

 

 いやいや、シータさんはまだしもミナスに限ってそれはあり得ない。

 

 でも、ミナスも不死身というだけで、弱い事には変わりない。

 

 何かしらのスキルや魔法で捕まるということは考えられる。

 

 マイナスな方向へドンドン思考が陥る。

 

 「いかがなされましたか?」

 「リア様―――」

 

 頭を抱えているリアの近くに領主のインテグラルが現れ、声を掛ける。

 

 ニコニコした笑顔だ。

 

 「数日前からミナスとシータさんの姿が視えなくて―――」

 

 リアは困った顔でそう云った。

 

 「それは困りましたね・・・。」

 

 インテグラルはポンと手を叩き、こう云った。

 

 「よし、分かりました―――」

 「私の従者達にも言って、この周囲を探しましょう。」

 「何、心配及びませんよ―――」

 「二人は必ず探し出しますから。」

 

 インテグラルは笑顔を絶やすことなく、リアに向かってそう云った。

 

 

 インテグラルさん―――

 

 なんて、イイ人なんだろうか―――

 

 

 リアはその笑顔に安心感を覚える。

 

 しかし、実際は違う。

 

 インテグラルは二人を生かそうとは思っていない。

 

 内心ではシータがミナス抹殺に失敗したと考えていた。

 

 

 イケませんねェ―――

 

 主の命令を達成することができないなんて・・・。

 

 コレは見つけ次第、躾が必要ですね。

 

 

 「あの二人を見つけるようお願いしますね―――」

 「例の男は生死を問いません。草の根を分けてでも探し出しなさい。」

 

 インテグラルは部下達にそう指示した。

 

 これで、全ては私の思い通り。

 

 あの小娘も帝国へ差し出せば、私の地位も安泰というもの。

 

 「クククっ・・・。」

 「あぁ、、、ワクワクしすぎて、ヨダレが垂れてしまいました。」

 

 インテグラルはハンカチで涎を拭き取る。

 

 

 こうして、対帝国の決起集会が始まる。

 

 集まった冒険者の数は2000人を超える。

 

 冒険者以外も闘う意志のある若者も集まった。

 

 中には帝国によって家族の命を奪われた者もいる。

 

 彼らに対する憎悪は想像以上に大きい。

 

 そんな彼らの前で壇上へ上がるインテグラル。

 

 壇上からは2000人の冒険者全体が見渡せる。

 

 皆、一様に面持ちは真剣。

 

 これから帝国と闘う覚悟が出来ている表情。

 

 「皆さん、こんにちは―――」

 「まさか、これほどの人数が集まってくださるとは思いもよりませんでした。」

 「今日という日に感謝いたしましょう。」

 「さて、本日は対帝国の決起集会として、ここにおわしますラナー王女殿下にご挨拶を頂きたいと思います。」

 

 

 ぺこりと一礼するラナー。

 

 透き通るような声で冒険者たちに語り掛ける。

 

 「我々は帝国に領土を脅かされ、理不尽な侵略を受け、危機が直面しています。」

 「そんな中、帝国と闘う為に立ち上がってくださったこと本当に感謝しております。」

 「まさしく貴方方は一人一人が紛うことなき勇者!!」

 「国の代表として嬉しく思います。」

 

 ラナーが冒険者たちの顔を良く見ながら、微笑み、そう語る。

 

 その美しさ、美貌から彼らには光り輝いて見える。

 

 救世主のようにも視えたかもしれない。

 

 「おぉー、アレはまさしくラナー王女殿下―――」

 

 彼らから感嘆の声をが上がる。

 

 隣国からの侵略に国の代表が立ち上がる。

 

 コレは自分や家族、友人を護る闘い。

 

 まさしく大義の為に戦うことが出来る。

 

 コレがどれほど素晴らしい事か―――

 

 彼らはそんな自分達を誇らしくも感じていた。

 

 

 だが、彼らは既に裏切られていたんだ。

 

 自分達が罠に嵌められていることに気付かなかった。

 

 "悪意"は突然やってくる。

 

 何の前触れもなく、それまでの日常を壊す。

 

 「本当に嬉しくて、感謝してるんですよ―――」

 「貴方達のような"お馬鹿さん"がたくさんいて・・・。」

 

 ラナーはこれまでに見たことのない邪悪で醜悪な顔を浮かべる。

 

 「はぁ??」

 

 彼らはそれを何かの見間違いだと思った。

 

 でも、それは見間違いなんかじゃなかった。

 

 「御姉様・・・??」

 

 リアも突然のラナーの発言に困惑、戸惑い、声を掛ける。

 

 これまでの自分が知っている姉とは明らかに違う。

 

 「貴方、隣の男を刺し殺しなさい!」

 

 

 ラナーがそう命じると、目が合った一人の男が剣を抜き、隣の男を惨殺し出した。

 

 「うわあああぁーーー!!!」

 

 周囲はパニック状態。

 

 一気に冒険者たちは混乱する。

 

 これまで信じていたラナーが突然、牙を向いてきた。

 

 しかも、一人の男が自我を失い、辺りの人間を誰彼構わず刺し殺し始めた。

 

 「ど、どうなってやがるんだ!?」

 

 「貴方達、何をしているのですか?」

 「血の狂乱は始まったばかりですよ―――!!」

 

 気が付けば、一人だけじゃない。

 

 何人もの男たちが同じように周りの人間を誰彼構わず、刺し殺し始めている。

 

 ラナーが命令するように男たちは動く。

 

 そんな男に対応する為、また別の男も剣を抜く。

 

 お互いがお互いを攻撃し合う。

 

 そんな戦争がいきなり始まる。

 

 「さぁ!!出てくるのです!!」

 「彼らを一網打尽にしなさいっ!!」

 

 インテグラルが大きな声でそう云うと、周囲から大量の帝国兵が現れる。

 

 「ラナー御姉様!!」

 「コレは一体どういうことですか!?」

 

 リアはラナーの前に立ち、糾弾する。

 

 今、目の前で起きていることが信じられない。

 

 あの優しかったラナーが今、変わり果てた表情で自分の前に立っている。

 

 「リア・・・貴方も察しが悪いですね―――」

 「私は帝国側に寝返ったのですよ。」

 「貴方達を売ったのですっ!!!」

 

 

 「そ、そんな・・・ウソよ・・・。」

 

 

 リアは血の気が引く。

 

 全身が震える。

 

 これはきっと悪い夢。

 

 

 

 悪い夢を見ているだけなんだ―――

 

 

 

 

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