第25話 真面目に生きてる人よりズル賢く生きてる人の方が幸せそうだよね
~カーネリアン砦~
カーネリアン砦に物資を運び始めてから半月ほどが経過しようとしていた。
ミナスは自分のアイテムストレージを眺める。
アイテムの整理をしていた。
この世界ではお目に掛かれないような逸品が詰め込まれたストレージ。
次元の狭間に何千年、何万年も潜り続けて、こんなに増えてしまった。
ストレージの中はほぼ無尽蔵に詰め込める。
一つ一つどんなものがあるかも正直把握していない。
「う~~~ん、コイツ等どうしようかなぁ~~~!!」
物が多すぎてお目当ての物が中々見つからない。
ミナスに限らずそう云った経験をしたことのある者は多いだろう。
ミナスの場合、それの規模が違うだけ。
「もう、いいやっ―――!!」
「メンドくさいっ!!」
「どうせまだまだ入れられるんだし、やーめた!」
そう云ってミナスはベットに飛び込む。
ボーっと天井を眺めて、少し考え事をする。
リアの事だ。
彼女はボクのことを傷つけることが出来る。
この身体の自動で再生が発生することなく―――
彼女ならボクを殺せる。
それが何故なのか・・・?
分からない・・・。
あの時、魔女は何て言ったっけ・・・?
ボクに不老不死の呪いを掛けたあの魔女は―――
「あぁ~~、もう分かんないよォ~~!!」
「ボクはそんなに頭は良くないんだ―――」
ミナスは布団の中でジタバタする。
ふと、これまでの旅で一緒だったリアの顔が浮かぶ。
彼女はいつも真っ直ぐだった。
困っている人がいたら助けようとした。
サファイアの街でボクが力を解放したら、本気で怒った。
それはとてもすごい事なんだと思う。
ボクみたいなマイナスに対して、あそこまで真っ直ぐに向き合えるなんて。
これまでの人生で初めての経験だ。
この気持ちはなんなんだろう・・・?
まぁ・・・いっか―――
~カーネリアン砦 周辺の森~
リアは帝国との闘いに備えて薬草を集める為、この砦の周囲の森を散策していた。
「フンフン~♪」
鼻唄交じりで楽しそうだ。
最近は帝国からの攻撃もなく、平和な日常を送れている。
でも、心の中では不安も感じている。
この平和の裏では他の町々が襲われているかもしれない。
そんな不安感はある。
「ん・・・?アレはシータさん?」
リアが森の中でシータを見つける。
いつもの顔の半分以上を覆っていた黒頭巾を取って、素顔を出している。
うわぁ・・・いつもは隠しているから分かんなかったけど、シータさんって美人・・・。
リアは心の中でそう思った。
あの黒装束の中に収納されていて分からなかったが、髪の毛もかなり長く、とても女性らしい。
「シータさん・・・!」
リアは声を掛けてみることにした。
「・・・リア様!?」
シータも少し驚いた表情を見せる。
「こんな所で何をしてるんです?」
「あぁ、この子がケガをしているのを見つけてね・・・。」
そう云って、リアがシータの手元を見ると、ケガをしている鳥がいる。
どうやら羽をケガしているみたいで、血が出ている。
しかし、そのケガの患部に包帯を丁寧に巻かれており、適切な処置が施されているように見える。
「シータさんが、手当してあげたんですね。」
リアの質問にコクリと頷く。
「もう、ケガするんじゃないぞ・・・。」
優しい顔で鳥を逃がす。
「シータさんって優しいんですね―――」
リアがそう云った。
「・・・・いや、私はそんなこと・・・。」
少し恥ずかしそうなシータ。
そんなこと言われたこと初めてだった。
「何だか、こうしてちゃんと話すの初めてですね。」
リアがシータと何の気に無しに会話を始める。
いつも業務連絡みたいなお堅い話しかしなかったため、こういった世間話的なことは初めてだった。
シータがどんな人物なのか、分かった気がした。
「せっかくだし、少しお話ししませんか?」
「まぁ、構わないが―――」
リアとシータは森の中で話をする。
これまでのお互いの生い立ちや境遇についてだ。
リアは王宮でのこと、シータは忍びになるまでの話。
シータは貧困の家で生まれ育ったらしい。
母親はシータが生まれてからすぐに亡くなり、物心つく前にはいなかったとのこと。
それで父親はギャンブルや酒に溺れ、シータに強く当たることもしばしばあったという。
「それは辛い思いをされたんですね・・・。」
「えぇ、昔は辛かったですね―――」
「でも、もう今はそんなこともありませんし、辛いとは思わなくなりましたね。」
シータは作り笑いのような顔で微笑む。
「その顔の傷もその時のものなんですか?」
リアはシータに聞いた。
初めて見たシータの顔に美人だと思うと同時にその顔に刻まれた大きな切り傷が気になっていた。
「えぇ、そうです―――」
「これも父親からつけられたものですね。」
「そう・・・ですか。」
「ごめんなさい、イヤな事を聞いちゃいましたね。」
リアは興味本位で聞いてしまったことを謝った。
「いえ、もう昔のことなので全然気にしてません。」
シータは優しくそう云った。
リアはシータと話して、良かったと思った。
知らなかった彼女の一面を知ることが出来た。