第24話 解放戦線結成
~カーネリアン砦~
怪鳥も倒し、障害となるものはなくなった。
リア達は砦の中に入る。
「中は痛んでるところもあるけど、拠点として使えなくはなさそう。」
「ここに対帝国の兵を集めるわけだな―――」
グランも砦の中の設備を手に触れ、状態を確かめる。
今は4人だが、帝国の侵略を良いと思ってない人間は多いハズ。
そういった人達を集めて、帝国に対抗する。
この国の王女が指導者として立ち上がれば、人は集まるだろう。
一時は奴隷として売られそうになっていたが、もしかしたら王都奪還も可能かもしれない。
「ミナス、これならいけそうだね!」
リアが嬉しそうにミナスへそう云った。
ポジティブな所がリアの長所である。
「それはどうかな~~~~??」
対して、ミナスの長所はネガティブな所。
「なんでそう言うこというのよ!?」
そんなミナスに少しイラっとした。
「だって、上手くいきすぎてるから―――」
人は皆、根っこの方ではネガティブなものである。
ネガティブであるが故にここまで繁栄してきた。
何かを恐れたり、何かを警戒したり、何かに備えたり―――
そうやって危険を回避してきた。
元来、ポジティブな方が珍しい。
ミナスは自分にとって都合の良い風には考えられない。
これまで数えきれないほどの"イヤな目"に遭ってきたからだ。
「もう、ミナスはいいよ―――」
「後は私達が勝手にやるから!」
「まぁまぁ、リア―――」
「そんなに怒らないでよ。」
「これは、そう―――、ボクの悪い癖みたいなものなんだからさ。」
ミナスの協力は不可欠。
それはリアも充分に分かっている。
「じゃあ、私の言う通り協力して頂戴。」
「うん―――」
「分かったよ。」
ミナスは快諾する。
この時、ミナスは何となくだが、嫌な予感がしていた。
それが何なのかハッキリとは分からない。
元より頭のいい方でも、察しの良い方でもないからだ。
だから、その悪い何かが分かるまで、特に波風を立てないで行動しようと思った。
「それじゃあ、みんなで協力してやりましょう!!」
こうして、ミナス、リア、グラン、シータの4名はそれぞれ行動に移った。
帝国に占領された王都を奪還する為の戦力を整える。
道を開通させ、物資と人員を調達する。
エメラルドは直近で帝国の攻撃を受け、彼らに対する嫌悪感は大きい。
打倒帝国を掲げれば、名乗り出る者は少なくなかった。
「うん、うん―――、イイ調子!!」
日に日に人だけでなく、武器や防具、魔道具、生活必需品などが砦に運ばれていく。
王都奪還の準備が着々と進められていった。
全ては順調に進んでいく。
リアもミナスもそんな最中に飲み込まれる。
~領主インテグラルの屋敷内~
「報告します―――」
「あのミナスという魔導士なのですが危険です。」
「何があったのだ?」
「例の砦を見つけた時、あそこを縄張りとしていた巨大な怪鳥と遭遇したのですが―――」
「その巨大な怪鳥を彼は一瞬で葬り去っていました。」
シータがインテグラルにあの一件を報告する。
「ほう・・・巨大な怪鳥を一瞬で・・・。」
「にわかには信じられない話だが。」
「お前がそう云うのだ、真実なのだろう。」
インテグラルはシータを高く評価している。
「それで、お前から見てあの魔導士はどう見える?」
「形容しがたい悍ましい"何か"です。」
シータは少し震えた声でそう云った。
ミナスから感じる異様な不気味さが印象に強い。
「なるほど・・・それは確かに危険だ。」
「そういう危険な存在は排除するに限る。」
「やれるか―――?」
インテグラルはシータにそう云った。
「はい・・・かしこまりました。」
インテグラルはニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
シータは下唇を少し噛む。
ミナスと戦う自分を想像する。
だが、どうやっても勝てない―――
であれば、暗殺を試みる?
・・・・やるしかないのか・・・。
シータはリアの顔が脳裏に過った。
あの人はとても前向きで、実直。
これからそんな人と敵対するようなことをする。
少し胸が痛む。
しかし、インテグラル様の命令は絶対。
逆らうことはできない。
残念ではあるが、私はミナスを暗殺する。
それが出来なければ、この命・・・。