第21話 サファイア?何それ美味しいの?
ちょっと長くなりそうなので、次話まで続きます。
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~領主インテグラルの屋敷前~
エメラルドから少し離れた広大な敷地に領主の屋敷が立っている。
「ここが領主の屋敷というわけか―――」
グランは鉄製の柵から顔を覗かせる大きな屋敷を見上げる。
「はい―――、こちらがインテグラル様のお屋敷となります。」
シータが右手を屋敷の方へと向ける。
シータが柵の入口で発声し、開錠する。
どうやら音声を認識する魔道具の前で、特定の人間が音声に発することで扉が開く仕組みになっているようだ。
「案外、近かったねーー!!」
ミナスはお気楽そうにそう云った。
「ここにラナー姉様がいるんだ・・・。」
リアは緊張と嬉しさの両方で大量の汗で手がベッタリしている。
屋敷の正門から入り、玄関である大きな木製の扉が開く。
「中も広いですね―――」
「確かに広いけど、リアは王族なんだから、こーいうの見飽きてるでしょ?」
ミナスがリアにそう云った。
ただ広いだけの空間ならミナスも嫌という程、体験している。普段はあまり思い出してもしょうがないので、記憶の奥に封印している。
「王宮も確かに広かったけど、国内の領主の屋敷も同じ位広いから少し驚いただけよ!」
頬を少し赤らめて、ミナスにそう云った。
「応接室はあの角を曲がった先になります―――」
「代わりの者に案内させますので、先に入っていてください。」
「アタシはインテグラル様を呼んできますので。」
シータは屋敷のメイドにリア達を案内するように指示し、自分は領主を呼びに行く為、二階へと上がっていった。
リア達はメイドに案内されるまま、応接室に入ろうとする―――
その時、横から一人の高貴な身なりの女性が現れた。
「リア・・・?」
「リアなのね?」
「ラナー姉様!?」
「ホントに・・・ホントに生きてたんだッ!!」
リアは嬉しさのあまり、ラナーに飛びついた。
無邪気にはしゃぐ子どものように―――
「あらあら・・・少し会わない間に随分甘えん坊になったのね―――」
ラナーは優しく頭を撫でる。
「ラナー姉様!!ラナー姉様!!」
リアはラナーの胸に頭を擦り付ける。
よほど嬉しいのだろう、放す素振りは一切見せない。
「そちらの方たちはお連れの方?」
ラナーは後ろにいたミナスたちの方に視線を向ける。
グランは少し頭を下げ、会釈をする。
姉妹水入らずの雰囲気に水を差したくなかったのだろう。
ミナスはいつもの死んだ魚のような眼でラナーを見つめる。
「えぇ、そうです!!」
「二人は私の仲間ですッ!!」
「ここまで来れたのも彼らのおかげです!!」
「お初にお目にかかります―――」
「S級冒険者の"剣王" グランと申します!!」
「戦場ばかりの冒険者故、多少礼儀の分からぬことがあるでしょうが、どうかご容赦ください。」
グランはラナーを前に一礼し、挨拶をする。
「ほら!!ミナスも挨拶して―――!!」
そっぽを向いているミナスにリアが注意する。
ここまで来れたのはボクとグランの二人のおかげじゃなくて、"ボク"だけのおかげなのにな~~
心の中でそう不満を云うミナス。
「貴方もリアを助けてくれたのですね―――」
「姉として、心より感謝を申し上げます!!」
ラナーは頭を下げる。
そうか、リアのお姉さんということはこの人もボクを殺せる?
試してみるか?
「いえいえ―――」
「お礼だなんて・・・そうだな・・・そんな感謝の心があるのでしたら、どうかこのナイフでボクの"ここ"を刺してもらえますか?」
ミナスは銀色に光る短剣を差し出す。
そして、左の親指で心臓を差す。
「ちょ―――、ミナス!!」
「何変なこと言ってるの!?」
初対面でいきなり自分のことを殺してほしいと願い出るミナス。
眼は真剣だ。とても冗談を言っているようには見えない。
「ハハハ・・・ラナー姉様!コイツちょっと変な奴なんですよ―――」
リアが必死に取り繕って、やり過ごそうとする。
しかし、ラナーはそのミナスの真剣な眼を見て、ナイフを手に取る。
「お・・おい!まさか本気か?」
グランが驚いた顔で止めようとする。
「・・・・・・」
「ミナスさん・・・?ですよね―――」
チクっ・・・!!
「これでいいですか?」
ナイフはミナスの着ている服を貫通することなく、刃先が少し当たった程度だった。
「・・・・・・」
ミナスはその様子を見て、黙る。
「まさか、冗談だとしても私は妹の恩人である貴方達を傷つけるなんてことできませんよ―――」
「ホッ・・・!!」
一瞬本気かとすら思ったリアも胸を撫で下ろす。
「・・・・ふーん!!」
もっと残念がるかと思ったが、ミナスはそんな程度のリアクションでその場は収まった。
「やぁやぁ・・・お待たせしましたね―――皆さま!!」
シータと共に眼鏡を掛けた少し白髪交じりの中年が一行の前に現れた。
どうやら着ている身なりからして、この男がここの領主であるインテグラルなのだろう。
「貴方がインテグラルさん?」
リアがそう尋ねた。
「その通りでございます―――」
「リア様。」
「おや?ラナー様もこちらにおられたのですね―――ちょうどいい!!」
「皆さん、こちらへどうぞ!!」
ニコニコした笑顔でインテグラルは全員を応接室へと案内した。
「シータ!!皆さんに飲み物を出して貰えるかな?」
インテグラルはシータにそう指示し、飲み物を取りに行かせる。
「さて―――、こんな屋敷まで皆さまご足労ありがとうございます。」
「積もる話もあるでしょうが、いきなり本題に入らせてもらいたいです。」
「それって、帝国のこと・・・ですよね?」
リアは確認した。
「えぇ、話が早くて助かります。」
「王都トパーズが落とされたことは皆さん既にお知りになられていると思いますが、そこから帝国は急速なペースで王国を侵略していっています。」
「トパーズを皮切りにルビー、オニキス、オパール、コーラルを既に帝国が制圧したと聞き及んでおります。既にこの国の4割強が帝国の手に落ちたことになります。」
「もうそんなに・・・」
リアの顔は険しくなる。
「そして、それとは別に不思議なことなのだが、昨日ここを訪れた行商人から得た情報によると、サファイア・・・ここだけ異常で街が制圧されたわけではなく、どうやら街そのものが消滅していたらしいのだ。」
「へ・・・へェ・・・・」
リアが視線を横にずらし、隣でコーヒーを啜るミナスの方へ視線を向ける。
サファイアはミナスが道中、消滅させた都市だ。
いともたやすく都市一つを消滅させる程の化け物、それが隣で呑気にコーヒーを啜っている異常事態。
正直になんて絶対に云えない。
リアはごまかすことに決めた。
トントン・・・!!
ミナスは右ひじでミナスの腹をつつく。
絶対にサファイアのことは口にするなよの合図だ。
OK!!
ミナスは親指を立てるサムズアップのポーズでリアに応じる。
「サファイア・・・あそこは素晴らしいところでしたよ―――」
「街は賑わい、町並みは美しく、活気に満ち溢れた街でした―――」
ミナスはそう口にする。
はぁ?コイツ何言ってんの―――
リアは口をあんぐり開けてすぐにミナスの方を振り向いた。
「ほぉ・・・君はサファイアに行ったことがあるのかね?」
「えぇ・・・それも最期の時にね・・・」
ニヤリと不敵な笑みを返すミナス―――
流石にそれはマズいだろうと、リアは慌ててミナスの口を抑える。
「ちょ、ちょっと前にミナスと行ったことがあるんですよ―――!!」
「みんな私達を歓迎してくれていい街でしたよ―――!!」
「??」
その不自然な態度に、ミナスとリア以外の人たちは皆、頭にクエスチョンマークを浮かべていた。
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