第19話 皇帝 ルート・アレフゼロ
今回は初めて、帝国の皇帝を出しました。
次回はまたリア達に視点が移ります。木曜日辺りに更新できるかもしれないです。
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~元ジュエル王国 王都トパーズ~
帝国に占拠された王都トパーズ―――、帝国に制圧された直後は反徒が出没したが、それも武力で鎮圧。
次第に反徒達の出現は減っていった―――
まだ占拠されて一カ月も経っていないというのに、市民の混乱は完全に消失した。
隻眼の騎士ランスロットは城内の一室の窓より市街を眺め、改めて皇帝の恐ろしさを感じていた。
「まるで―――、先を見通す力を持っているかのような手際のよさだ。」
王都を制圧してから皇帝の政策は物凄い速度で推し進められた。
まず物流を活発にする為、帝国領と王国領の関税を撤廃。
帝国内の豊富な資源を安価で王国内に流す。
商人達には帝国が制圧したことによって受けた損失を補償し、商人達を優遇するような政策を取る。
これまで国民が納めなければいけなかった税金を約30%ほど削減すると宣言し、実践した。
そして、足りなくなった資金は国債を発行し、王国内の商人から資金を調達。
国民へと還元していく。
こういった経済政策を行い、復興を図る。
物があれば人は豊かになる。
餓えは人を変え、獣にする。
皇帝陛下はそうおっしゃられた。
そして、次に行ったのが、権力者の整理だ。
これまで王国内で大した能力もなく、ただ国民から搾り取った税で私腹を肥やしていた貴族たちを排除、そして本当に有能な貴族のみを残し、国を纏めさせるために尽力させた。
無能な貴族たちは、容赦なく一族を根絶やしに葬る―――、こうすることで、見せしめの効果と残った遺族に対する反乱を未然に防いだ。
そして、皇帝陛下自らが選ばれた帝国議会の議員を数名、王国の議会へ潜らせることで、政治をある程度コントロールさせる。
ある程度というのも上手い・・・ここで全てを帝国議会の議員に任せ、既存の王国民の意向を完全に無視するような姿勢を見せれば、王国民の不満は溜まる―――、それを阻止してのことだ。
そして、極めつけは第一王女のセディナとの婚約―――、皇帝陛下の妻として迎え、あくまで表向きは対等という関係性を装った。
そして、制圧後、帝国と王国で和解したかのように見せ、国民たちの前にセディナを出して挨拶させることで、完全に反徒は出なくなった。
あそこで完全に無能な国民たちに錯覚させた―――、自分達と帝国はほとんど対等なのだと。
武力で圧倒され、為す術なくやられ、降伏したが、自分たちの命は保証されたのだと・・・。
多くの国民は安堵しただろう―――
これから、王国は大きく変わり、帝国の属国として機能するだろう。
全ては皇帝陛下の野望の為に―――
愚かな国民だ。
外を眺めていたランスロットはそんな思いでいた。
コンコンッ!!
ランスロットがいる部屋のドアをノックする者が現る。
「入れ―――ッ!!」
ランスロットはそう云う。
「失礼します―――!!」
一般の帝国兵がドアを開け、部屋に一歩足を踏み入れる。
「ランスロット様!!」
「アレフゼロ皇帝陛下が玉座からお呼びしておりますッ!!」
一般帝国兵はビシッと敬礼をしながら、そう云った。
「分かった―――」
「すぐに行こうッ!!」
ランスロットは帽子を被り、玉座で待つ皇帝の元へと向かう。
玉座のある部屋に着いたランスロット。
玉座までの間を左右、綺麗に迷彩色の軍服を着た何人もの一般帝国兵がビシッと敬礼している。
ランスロットはその兵たちの間を突き進む―――
「アレフゼロ皇帝陛下―――」
「ランスロットただいま参りました―――」
ランスロットは皇帝を前に跪く。
「ランスロットよ―――」
「面を上げろ―――」
鋭い声色、鋭い目つき、余裕の表情、野心家というのはこういった人物なのだろう。
莫大な富を持っているのに、控えめな装飾、しかし人目を引く雰囲気、他者を惹きつけるカリスマ性。
ルート・アレフゼロ皇帝陛下。
「ルートというのは"最上位"を表す―――、どこか遠くの異国の言葉らしい。」
「どこかは忘れたが、そう聞いた記憶がある。」
「故に私はルート・アレフゼロと自らを名乗った。」
「そうすることで皆は私に畏怖の念を感じる―――」
「畏怖の念は信仰の対象となる。」
「素晴らしいとは思わないか―――?ランスロットよ!!」
「ハッ!!」
「おっしゃる通りでございます!!」
ランスロットは頭を下げて、応える。
皇帝陛下は謎の多き御方だ。
自分には到底推し量ることの出来ない存在。
元々は帝国の母体となる国を治める王族の四男として生まれたが、幼少期に頭を強く打ったことで、人が変わったようになられ、そこから兄弟全てを押しのけ、王の座へと収まった。
そして、今の帝国の全てを一から作り上げた鬼才。
銃や魔道騎兵、魔道化学の基礎を創り上げたのも皇帝陛下だ。
そんな皇帝陛下を私は神に近い存在だと思ってしまう。
「それで、ジュエル王国第三王女 リア-ジュエル-アルベスタの所在は掴めたのか?」
アレフゼロはランスロットに問うた。
優しい口調で。
「ハッ―――!!」
「アルバックからの報告によれば、この領土内の商業都市エメラルドにて、存在を確認したそうですッ!!」
「ただいま、追加の兵を送っておりますッ!!」
「ふむ・・・そうか―――」
「絶対に生きたまま捕獲するのだ!!」
「分かったな―――ッ!!」
「ハッ!!」
「承知いたしましたッ!!」
ランスロットは大きな声でそう云った。
全く、皇帝陛下のお気持ちが分からない―――
何故、王族だからと云って、あのような小娘にここまで固執する?
陛下は既にこの国の王族である第一王女を妻に迎えた。
それでいいではないか―――
何故、あの第三王女に固執するのか分からない。
「第一王女にも第二王女にもプラスの力はなかった・・・。」
「第三王女ならあるいは・・・。」
アレフゼロは小さくそう呟いた。
「はっ・・・!?」
「今何とおっしゃいましたか―――?」
その言葉がランスロットの耳にも入り、思わず面を上げて、聞き返す。
「ランスロット―――」
「それはお前の与かり知るところではない―――」
「お前は早々に第三王女を私の前に連れて来い!!」
「それだけでよいのだ!!」
「承知いたしました!!」
「もう、よい―――」
「仕事に戻れッ!!」
アレフゼロはランスロットに向かってそう云った。
ランスロットは静かに立ち上がり、玉座の間を後にする。
ランスロットが立ち去った後、皇帝アレフゼロは一つ溜息を漏らす。
「ふぅ・・・全く、皇帝というのも楽じゃないな―――」
「プラスの力を持つ者を早く見つけねば、"魔女の予言"の通り世界が消滅してしまう・・・」
「時間は限られている―――」
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