第18話 殺してくれよォ~~~~~
アルバック戦終了です。
次回から新展開です。
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~商業都市エメラルド 市街地~
「あ・・・あぁ・・・何した―――?」
両膝からゴツゴツした屋根の上に足を着くアルバック。
「これでいい?」
「リア―――」
ミナスはリアの方を振り向き、そう云った。
リアはS級冒険者のグランが苦戦を強いられた相手をこうもあっさりと無力化してしまうミナスに背筋が震えた。
誰がこの化け物を倒せるのだろうか―――
この世界にコイツを倒せるヤツなど存在するのだろうか―――
いや、倒せる人間ならいる・・・私だ!!
リアは自分の両手を広げ、目を向けた。
「コイツは帝国の軍人―――」
「すぐ殺さないで・・・」
「聞きたいことがあるから―――」
リアは冷静さを装う。
心を強く持つ。
ミナスはただ人を殺すだけじゃない―――、人体の機能を完全に停止することもできるなんて・・・知らなかった。
「俺を無視するなァァ~~~!!!」
「ねぇ―――、アンタ、帝国の軍人なんでしょ?」
「あの日―――、アンタ達が攻めてきたあの日から王都はどうなったの?」
「聞かせて頂戴―――」
リアはアルバックの顔に迫る。
真剣な眼差しで問い正す―――
「ク・・・ククク・・・そんなに自分の国の奴らが心配かよ~~~」
引き笑い気味にアルバックは応える。
「いいから教えなさい―――」
「安心しな~~~」
「あの日、お前ら王国民の多くは死んだが、皇帝陛下は慈悲深い御方だ。」
「王都制圧後は、お前ら王国民はだいぶ大人しくしてるぜ~~~」
「まぁ、何人かは抵抗したが、それもすぐ殺したさ。」
「なんてことを・・・!!」
リアは頬を強張らせる。
「だがなぁ、やっぱり民衆ってのは正直者さ。」
「すぐに順応した―――」
「皇帝陛下はお前ら王族がやってた何の得にもならない古い慣習、しきたりはすぐに撤廃し、既得権益だけ主張する無能な貴族共は排除した。そして、本当に有能な貴族を台頭させ、今は国の運営に当たらせている。」
「誰も帝国には歯向かわなくなり、すぐに自分の生活に戻った。」
「結果、お前たち王族が国を支配している時より今のジュエル王国は何倍も活気が溢れてるぜェ~~~」
「誰がトップかなんて民衆にとっちゃ関係ない!!」
「自分たちの生活がより豊かになる方に付くのさッ!!」
「・・・・ッ!?」
リアは辛い顔をした。
自分が愛していた国民たちがそんな薄情な者だとは信じたくはなかった。
帝国軍人であるアルバックのウソかもしれない―――
でも、それがもし本当だったら・・・・
「セディナ姉様は・・・?」
「ア"ァ"!?」
「セディナ姉様は生きてるんでしょうねッ!?」
「あぁ―――、第一王女か―――」
「勿論、生きてるぜェ~~」
「今は皇帝陛下の妻として迎えられているがなぁ~~~」
「な、何ですって―――!?」
リアはその言葉に驚いた。
自分が尊敬していたセディナ姉様がよりにもよって、心の底から憎い帝国のトップ、皇帝の妻にさせられているなんて―――
「・・・・・・」
リアの頭が真っ白になる。
現実を受け入れられない―――
「リア、大丈夫―――?」
ミナスはいつもの顔でそう聞いた。
「ミナス―――」
「お願いがあるの・・・」
「んーーー、何なに?」
「リアのお願いなら大概聞くよ―――」
「コイツを出来る限り苦しむようにして殺して―――」
「アンタなら出来るでしょ?」
黒い恨みの詰まった顔だ。
こんなリアは初めて見る。
「わおっ!?」
「勿論、お安い御用さ―――」
「へへへへっ・・・」
「何で俺がこんなペラペラと喋ったか、分かんねぇか!?」
「リア王女・・・テメェのその絶望に満ちた表情が視たかったんだよォォ~~~!!」
カチッ!!
アルバックは奥歯を思いっきり噛み締めた。
彼は奥歯に隠していた錠剤を飲み込んだ。
とっておきの薬―――
アルバックの筋肉が肥大化する。
彼は植物のスペシャリスト、つまりその植物から人体を即時的に強化する薬を作ることも出来る。
いわゆる『ドーピング』。
彼は万が一、自分が追い詰められた時、己の肉体を限界まで強化できるように奥歯にその薬を隠し持っていた。
両手、両足が動く―――
よし、これなら・・・
何倍にも筋肉が膨れ上がり、アルバックはミナスへ襲い掛かる。
「いやいや、筋力が少し上がったからって、ボクは殺せないでしょ―――」
「だって、君・・・見たカンジLv.200程度だよ。」
「堕落!!」
ミナスが杖を振りかざす―――
「えっ・・・!?」
それがアルバックの最後のこの世の景色だった。
クソ!!
クソ!!
どこ行きやがった!!
いきなり辺りが真っ暗になる。
アルバックの周りを黒い霧が漂う。
さっきまで市街地にいたはずなのに、ここはどこだ?
どこだ―――
どこだ―――
ここはどこなんだぁーーー!!!
呼吸を乱し、走り回るが誰もいない。
まさに孤独。
「俺は帝国軍人―――アルバック様だぞッ!!」
黒い霧がアルバックの身体を覆う。
「止めろ!!止めろ!!」
黒い霧が徐々に身体を溶かしていく。
ドロドロに溶けた所から血が流れ出て激痛が走る―――
それでも死ねない。
苦しい―――
「止めろォ~~~止めてくれェ~~」
「ボクはLv.5000以上がウジャウジャいる《時空の狭間》の魔物を全て救済した男だよ?」
「君程度救えない訳ないじゃないか―――」
「ミナス、そいつに一体何したの?」
リアは恐る恐る尋ねる。
いきなりアルバックが攻撃を仕掛けてから、ミナスが何やら呪文を唱えたと思ったら、アルバックは急に動きを止めた。
「堕落―――、あらゆる状態異常をランダムで引き起こすロクでもない魔法さ。」
「今、この人は幻覚を見ていて―――、どことも知れない意識の果てにトリップしているんだよ。」
「今なら何をしても自由だよ?」
「思いっきり、腹を刺しても、目玉をくり抜いても何もしてこない―――やり放題って訳だ!!」
「どうだい?リアもやってみるかい?」
「・・・・・遠慮しておく。」
リアの先ほどまでの憎しみの溜飲も下がった。
ミナスを見ていたら、何だかそんな気分でもなくなった。
「グランさん―――」
「大丈夫ですか?」
リアはグランの傷を治療しようとポーションを差し出した。
「あぁ・・・彼は一体?」
グランはあっという間にアルバックを倒したミナスに驚いた。
「彼は・・・」
「もう、殺してくれよォ~~~~~ッ!!」
アルバックは幻覚の中、絶望し、そう叫んだ―――
「あい、分かった―――」
「能力値降下!」
ミナスの掛けた弱体化魔法によって、アルバックはドロドロに溶けて、液体化した。
周囲には真っ黒なスライムのような"何か"が広がっていった。
「最弱のダウナーです。」
リアはそんなミナスを見て、グランの問いに答える。
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