第17話 ボクは何万年も絶望してきたんだ―――たった一日くらいの絶望大したことないだろ
今週はメインの方も更新しようと思ったけど、部屋の整理なんかしていたら、全然できなかった。
また来週にリベンジだな。
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毎週、土日の更新しようと思います。
~商業都市エメラルド 市街地~
少し時間が遡り、グランとアルバックが対峙している最中―――
リアとミナスは、植物たちを駆除する為、街を回っていた。
「ちょ、ちょっとーーーリアってば、走るの速いよーー!!」
リアは真剣な顔で、街で救いを求める人達を助けて回る。
「おっそッ!?」
ミナスのあまりにも遅い走り方に思わず、声を上げてしまう。
これがミナスの全力なのか―――
自分も女だからそこまで身体を鍛えていた訳ではないから、分からないけど、もっと男の人って足が速いもんじゃないの?
そんなミナスに気を取られていても仕方ない―――
リアは前を向いた。すると、眼前に今にも植物に食べられそうになっている少女がいた。
「危ない―――ッ!!」
リアは飛び込んで、植物の触手から少女を守る。
間一髪、触手は空を切り、少女にケガはない。
「ブッシュュっーーー!!!」
巨大な食人植物は怒ったのか、何本もニュルニュルとした触手を勢いよく、リアたちに向けて伸ばした。
「ッッ―――!!」
リアは目を瞑り、少女を庇うようにその場にしゃがんだ―――
「能力値降下!」
ミナスは杖を翳し、呪文を唱える。
全てをマイナスにする弱体化の魔法を―――
瞬間、食人植物は甲高い鳴き声を上げ、生気を奪われる。
つい先ほどまであれだけ青々としていた植物が一気に茶色く腐っていく。
ミナスの弱体化の魔法は植物に対しても有効―――
「まぁ、《時空の狭間》には植物型の魔物なんかもうじゃうじゃいたからねー」
「ミナスッ―――!!」
「助かったよ!!ありがとう―――!!」
嬉しそうな顔でリアはミナスの方を向いた。
「このままじゃ、リアが死んじゃうと思っただけだよ―――」
リアは泣きじゃくる少女の頭を撫で、安心させる。
「それにしてもここは・・・?」
リアは目の前の建物に見覚えがある。
そうだ―――、ここはグランがたくさんの食料と通貨を寄付していた孤児院だ。
「た、助かりました・・・!!旅の人―――」
「何とお礼を申し上げたらよいか・・・」
中から院長が出てきて、リア達に礼を言った。
「いえ、困ってるときはお互い様です―――」
リアはそう云った。子どもたちに何事も無くて良かったと安堵する。
「わあああぁぁーーーー!!」
「お姉ちゃん!お兄ちゃん!!ありがとうーーー!!!」
中から先ほどまで恐怖に怯えていた子どもたちがぞろぞろ走ってきて、リア達の周りを取り囲む。
「グランさんはこの子たちの笑顔を守りたかったんだ・・・」
リアがそう呟いた。無邪気に喜んでいる子ども達は可愛いものだ。
「グラン様とお知り合いなのですか―――?」
院長は驚いた表情をして思わずそう云った。
「知り合いってほどじゃないですけど、先日ギルドでちょっと知り合った程度です。」
リアはそう正直に答える。
「・・・そうですか。」
院長は少し落ち込んだ様子を見せる。
「えっ・・・!?」
「グランさんがどうかしたんですか?」
「い・・・いえ!!」
「ただこんなこと旅の方に話すのはちょっと引け目を感じるのですが、もし貴方達がお許しになるのなら、グラン様を助けて欲しいですッ!!」
「えっ・・・とそれはどういう意味でしょうか?」
リアはそう聞き返す。
「グラン様は多分、この街を襲った帝国軍の人と戦っているハズです。」
「あの方はきっと無茶をなさるとおもうんです。」
「だから、もしできることなら、あの人を・・・助けてあげてほしいです!!」
そう涙ながらに訴える院長。
そんな強い思いをリアは無下にはできない―――
「分かりました―――」
リアは快諾した。
「ミナス・・・!!力を貸してほしいッ!!」
「グランを助けるんだね―――」
ミナスはリアにそう聞いた。
「違うよ」
「みんなだよ―――」
「この街のみんなを助けるんだッ!!」
「できるでしょ―――最弱ダウナーさん?」
リアは冷静に、ミナスを試すようにそう云った。
「・・・・お安い御用さ―――」
「そう・・・ありがとう。」
「じゃあ、手始めに街にいる植物を一掃しましょう―――」
「何かいい案ある?」
リアは戦闘に関してほとんど素人と言っていい。
だからこそ、自分の立場をミナスより上にして、戦闘に関してはミナスに任せようと考えた。
なぜなら、自分なんかより、いや誰よりミナスは殺しのプロだから―――
「うーーーん、そうだな。」
「まずボクは走るのが遅い!!」
「だから、足で移動するのは止めようッ!!」
「そんなことできるの?」
リアはそう聞き返した。この世界の移動方法など主に馬車。帝国や王国は汽車や飛空船など取り入れているが、それは個人が所有するレベルを超えている。
現状、馬などはないし・・・
ミナスの言う移動方法を変えるという意味がいまいち理解できなかった。
「あっ・・・もしかしたら、アンタがよく言ってるマイナススキル?」
「いや、マイナススキルじゃないよ。」
「チャララッラーーン!!」
全く抑揚の変わらない言葉と共にミナスは異空間より魔法道具を取り出す。
「空飛ぶ絨毯~~~!!」
そう云って広げた赤い絨毯。
「これがなんなのよ―――」
リアはこんな時にふざけているのかと怒りそうになる。
「この絨毯なんと、空を飛べるのです!!」
ミナスは自慢げにそう云った。
リアを絨毯の上に誘い、トンと絨毯を杖で叩く。
すると、フワッと絨毯が宙に浮きだした。
「えっ!?ウソでしょ―――!!」
急に浮かび上がるものだから、リアは驚いて、ミナスにしがみついた。
「これはボクが《時空の狭間》にいるときに貰ったものだよ」
「貰った・・・?」
「本当に―――?」
「うん!!そうそう!!」
「アレは確か・・・聖霊王とかいう奴が頭を下げて、助けてくれとか言いながら差し出すからありがたく貰ったものだよ―――」
「ア、アンタねェ・・・」
平然とそんなことを言うミナスに少し引いたリア。
「一応、念のために聞くけど、その精霊王さんはその後どうなったの―――?」
リアは何となく察していたけど、少し気になったので聞くことにした。
「うん、それはもう、しっかり配下全員、殺してあげたよ―――」
でもそれは結局、過去。
今とは違う―――
大切なのは今。
助けを求める人達を救う為にミナスを利用する。
そう割り切ることにしたリア。
「それじゃあ、急いでこの街を襲っている連中を駆除しに行くわよッ!!」
リアとミナスは街を回り、全ての植物や帝国兵を一掃していく。
そして、現在―――
この街を地獄へと変えた張本人―――帝国軍 中尉 帝国軍戦闘部隊のアルバック-ツィ-カミルと対面していた。
「ミナスが怒っている・・・?」
あんまり普段から感情を表にしないのに、そんな風に思った。
本気で怒っているのかは分からない―――
ちょっと思う所がある程度なのかもしれない。
「どうやら、俺に対してその口の利き方―――」
「死にてぇらしいな―――」
アルバックはニヤリと口に笑みを浮かべる。
「うん―――そうだよ!!」
「ボクは死にたいんだ―――」
「よく分かったね―――ッ!!」
もっと不気味に笑うミナス―――
アルバックはそのあまりの不気味さに背筋に一瞬寒気が走る。
「な・・・何だ、コイツ!?」
「貴様程度、俺の手を煩わせる必要すらない―――!!」
「緑の支配者~~~!!」
「植物共~~~この馬鹿をやってしまえェェ~~~!!」
アルバックは植物を支配し、ミナスを襲わせようとする。
しかし、無反応―――
それもそのはず、この街の植物は全てミナスが駆除した。
「あぁ―――、もしかしてあの植物達を呼ぼうとした?」
「リアが駆除してっていうから、全部残らず殺してあげたよ―――」
「き・・・貴様が全て俺の植物ちゃんを殺しただとォォ~~~!!」
「そんなバカなッ!!」
「帝国の横暴は許さないわッ!!」
リアは被っていたローブのフードを取り、顔を露にした。
「き・・・貴様の顔・・・俺は知っているぞッ!!」
「貴様がこの国の第三王女のリア-ジュエル-アルベスタだなッ!!」
「まさか、お目当ての王女様が本当に現れてくれるとは嬉しいぜッ!!」
「王女・・・君がまさか!!」
グランも驚きの表情を浮かべている。
アルバックもグランもこの時、リアに気を取られていた。
そして、この男のことなど気にも留めていなかった。
ミナスはスッと、アルバックに近づき、こう云う。
「よそ見はよくないよ?」
「能力値降下!」
杖をアルバックの右腕に翳す。
ガクッ!!
「ッ―――!?」
アルバックの右腕が死んだように、重くなる。
全く力が入らない。
こんな経験初めてだ―――
「何をした!!貴様ァァ~~~!!」
「君の右腕を弱体化させた―――」
「永遠にね―――!!」
「もう一生上がらないよ・・・右腕」
本当だ・・・
全然、力が入らない。
ゾクゾクと寒気が止まらない。
何なんだこの生物はとミナスに畏怖の念を感じる。
「あっ・・・ちなみに治癒魔法とかでも回復できないからね。」
「ボクのマイナススキルは本当にどうしようもない取り返しのつかないスキルだから―――、一度掛かったら最後終わりってことだよ―――」
「まぁ、もうすぐ君は死ぬ―――、そんなこと考えても仕方ないか・・・」
「ちょ、調子に乗るなァァ~~~」
「小僧ゥゥ~~~!!!」
アルバックは激高した。
左腕のみでミナスに襲い掛かる。
「能力値降下!」
今度はアルバックの四肢に弱体化の魔法を掛ける。
ミナスはある実験をしていた。
それは殺さない実験―――
自分のこの弱体化のスキルでどういったことができるのか、試そうと思った。感覚的には把握しているのだが、実際に試すのは初めてだ。なぜなら今までは全て速攻で強敵を殺してきたから。
この世界に来て、会得した《完全制御》のスキルを試すに絶好の相手だとアルバックを選んだ。
この男は殺せるのにすぐに殺さないで、相手が苦しむようにわざと手加減をしていた"罪人"だとミナスは考えていた。
罪人ならば、自分が同じことをされても文句はないだろうと―――
アルバックの四肢は弱体化された。
もう動かない―――
達磨に等しい。
流石のアルバックも絶望の表情を浮かべる。
「ああ・・・あぁ・・・!?」
何が起こったのか理解が追い付かない様子だ。
「おいおい―――」
「こんなことで絶望しないでくれよーーー」
「四肢が動かなくなっただけのことじゃないか―――」
「ボクは何万年も絶望してきたんだ―――たった一日くらいの絶望大したことないだろ」
「少しは我慢しろよーーー」
「あぁああぁう・・・?」
この時、既にアルバックの戦意は喪失していた。
アルバックの上手く働かない頭で、これだけは理解した。
自分は喧嘩を売る相手を間違えたのだと―――
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