第15話 守るものがあった方が強いとかいうヤツが偶にいるが、どう考えたって守るものがないヤツの方が無駄が少ない分強いに決まってるだろ
異次元の少子化対策が少子化を加速させようとしている。明らかにおかしいし、それで暴動が起こらないのが不思議で仕方ない。これを許しちゃいけないし、国民一人一人が政治にもっと興味を持つべき。
これが現実。
~商業都市エメラルド 市街地~
「アルバック中尉!?」
「いかがなさいましょうか―――?」
帝国兵たちが数人、アルバックの元へと寄って来る―――
街を守るために立ち上がる十数人の冒険者たち。中には手強い猛者もいるだろう、そこに懸念を感じたのか、アルバックの支援をする為、一旦アルバックの指示を仰ぐ。
「雑魚が何人出てこようが、関係ねェーなァ!!」
「テメェー等はテメェー等のやるべきことやれやァ―――」
「この街の奴らに帝国軍の恐ろしさってヤツをしっかり刻み込めェ~~~!!」
アルバックは大きく眼を見開き、その長いベロを見せながら、部下たちに命じた。
「みんなは、他の帝国兵、この街で暴れている植物たちから街の皆を守ってくれ―――!!」
「恐らく、この男がリーダー格、この者を倒せば全てが収まるはずだ―――」
「だから、我がこの男と闘おう―――ッ!!」
「分かった―――」
「俺達は他の帝国兵たちをどうにかする。」
「グランさんも気を付けてくれ!!」
グラン以外の冒険者たちはそう云って、街中に散った。
帝国兵たちはまだしも街で暴れている植物たちはかなり危険だ。
あいつ等は血肉を貪り、成長している。
街の人たちを喰らえば喰らう程、大きくなっている。
手に負えなくなる前に―――
いや、皆を守らねばっ・・・!!
「時間が惜しいッ!!」
「倒させてもらうぞ―――ッ!!」
「御託はいいから掛かって来いよォ~~~!!」
「剣王さんよォ~~!!」
グラン VS アルバック。
開戦―――
さぁ~~って、と・・・S級冒険者様のお手並みを拝見させてもらおうか―――
アルバックは舌ナメずりをして、余裕をかます。
自分が敗けるなど、毛ほども考えていない。
「基本戦技:チャージ!!」
グランが最初に繰り出した技はただの突進―――
しかし、グランのチャージは並の突撃とは破壊力が違う。
その巨躯から繰り出される力業は硬い岩石をも簡単に砕く。
「うおッ―――!?」
アルバックは両腕で防御するが、その威力に大きく吹き飛ばされる。
アルバックも体重は90kg以上あるが、その足を簡単に浮かせる程度には威力が高い。例えるなら10t近い中型のダンプカーに激突されるようなものだ。
流石S級と云ったところか~~~、並の兵士だったら今ので戦闘不能だったぞ―――
「はやっ・・・!?」
そう考えていたアルバックの前にグランが懐に入り込む。グランの更なる追撃。
「剛剣術:豪快な破壊」
身の丈はある巨大な剣を思いっきり振る。力任せの豪快なスイングがアルバックの腹にヒットする。
「おおぉおおっーーー!!」
周囲の家々を貫通しながら、アルバックは後方に吹っ飛ばされる。
これが剣王の力か~~~おもしれェーーー
攻撃を受けながらニヤリと不敵な笑みを浮かべるアルバック。
「緑の支配者―――」
「植物たちよ―――俺を守れッ!!」
吹き飛ばされるアルバックを優しく包み込み、クッションとなる木々。
まるで意志を持つかのように成長を始める。
「基本戦技:腕力解放!!」
その巨躯からは考えられないような速度で移動するグラン―――、木々に守られるように止まったアルバックに容赦のない追撃、その右の拳を振り上げ、力任せにぶん殴る。
「・・・っ!?」
グランの拳をアルバックをクッションで支えていた植物が守った。
グランの拳の衝撃を吸収する。
「貴様・・・植物が操れるのか・・・。」
グランからしたら別に珍しくもない能力。
S級ともなると強大な力を持つ魔物だけでなく、色々な能力者と戦闘をすることもある。
植物を操る者との対峙は初めてだが、それに似たような能力は数多く見てきた。
「面白いだろ―――」
「植物は素晴らしい・・・だって、日光と空気、水さえあれば自分で栄養を作れちまうんだぜ。」
「それに色々な種類がある。人間なんかよりよっぽどバラエティに富んでて見ていて飽きねェーぜ!!」
「ふんっ!!!」
アルバックの言葉など無視して、グランは大剣を一振りし、アルバックを守っていた樹木を粉砕する。
「テメェ・・・俺の可愛い植物を・・・粉々にしやがったな~~~!!」
「許せねェーーー!!」
「許せないのはこちらも同じだ―――」
「貴様は罪のない街の住民を無為に殺戮し、傷つけた―――」
「到底許されるものではないッ!!」
グランは眉間に皺を寄せ、アルバックを睨みつける。
「はんっ!!」
「何の価値もない人間の命なんてどうだっていいんだよォォ~~~!!」
「所詮、貴様らは皇帝陛下という偉大な神樹を崇めない非国民でしかねェ!!」
「ぶっ殺されようとも文句なんて言えねぇんだよォ!!」
「話にならんな―――」
「我の剣の錆にしてくれるッ!!」
空中に跳ねたアルバックをグランは追う。足に力を込め、大きく跳ね上がる。十メートルくらいは跳んだ。本当はもっと跳べるが、力を抑えている。
「剛剣術:一刀残絶ッ!!」
グランはアルバックの頭よりさらに大きく跳び、両手に持った大剣を振り下ろす。
「マジかよ・・・アンタも大概イカれた身体能力してやがるじゃねェーか!!」
少し焦りの表情を浮かべるアルバック―――
予想以上のグランの身体能力に驚いた。
ここじゃあ、緑の支配者も使えねェ―――
「ウオオオォォーーー!!!」
グランの鬼気迫る雄叫び。
「チッ・・・!!」
アルバックは、手に持った鞭を街の高めの建物の煙突目掛けて放つ。
煙突の突起に上手く、絡ませ、身体をそちらに引いた。
「よっと・・・」
「少し、危なかったぜ―――」
「あんなの受けちまったら、流石の俺も死んじまう・・・」
アルバックもS級冒険者との戦闘は初めてだった。
しかし、こと侵略という行為においてアルバックは絶対の自信があった。
ドスンっ―――
アルバックの着地した家の隣の家の屋根に着地するグラン。その重量に屋根がメキメキと音を立てて、破損する。グランの足が屋根に少し貫通する。
ガラガラと音を立てて、グランが突き刺さった足を抜き、一歩前に出る。
「ペッ・・・!!」
アルバックは口の中に溜まった血を屋根に吐き捨てる。
「アンタ中々やるじゃねェーーか!!」
「少し驚いたぜ―――」
「どうだ?」
「こんな街なんか守らねェーで、俺達と一緒に皇帝陛下の為に働かねェーか?」
「そっちの方がずっと楽しいぜェ―――」
それは勧誘だった。
「・・・・・断るッ!!」
アルバックの言葉に一層グランの気持ちが昂り、怒りが沸きあがる。
「・・・・・」
アルバックは一瞬、黙り静かになったが、再び口を開く。
「そうか~~~そいつは残念だァァ~~~」
「緑の支配者ァァ~~~~!!!」
大きく手を振り上げ、アルバックはそう云った。
街の地面から大量の木々が芽生え、一気に成長していった。
「ッ―――!?」
これにはグランも少し驚きの表情を浮かべる。
「テメェーとやり合っている最中、少しずつ種を蒔いておいた~~~」
「今日はこんないい天気だ―――」
「植物たちが良く育つぜェ~~~~!!」
「我に貴様の植物の攻撃は意味ないぞッ!!」
グランはそう云った。
アルバックは鼻で一息つき、呆れた顔でこう云った。
「そうだな―――」
「確かにアンタには俺の植物の攻撃は意味ねェー」
「だが、街の住民たちはどうだ?」
そう云って、アルバックは中指を弾いた。
それを合図に大量の植物たちは街の住民を襲い始める。
「うわああぁーーん!!」
「グラン様ーーー!!助けてよーーー!!」
屋根の上から見える街、グランの眼に入るは孤児院の子どもたち。
アルバックの放った植物たちに怯える子どもたち。
「貴様アアァァ~~~~ッ!!!!」
グランは激高した。
「どうしたグラン~~???俺が憎いかァァ~~~???」
「お前とやり合って分かったぜェ」
「貴様はこの街を必死に守りたがっている―――」
「それが敗因だ―――!!」
「守るものがあった方が強いとかいうヤツが偶にいるが、どう考えたって守るものがないヤツの方が無駄が少ない分強いに決まってるだろ。」
「勝負ってのはなァ~~~強い方が勝つんじゃねェ!!」
「相手により嫌がることをした方が勝つんだよォォ~~~!!!」
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