第13話 どれだけ綺麗事を並べるより目的を達成する為の行動の方が価値あるでしょ
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~商業都市エメラルド 市街地~
「ねっ!この街もこの国も悪くないでしょ―――」
街の色々な店を見て回って、リアは嬉しそうだ。
そうだな―――、確かにこんな喧騒、久しぶりだ。
街にいる人達は皆、どこか充実した顔をしている。
少なくとも時空の狭間にいた時では感じることはなかった。
まぁ、あそこは強者で構成されたダンジョンで、誰とも馴れ合うことのない連中しか居なかったが―――
「陰キャコミュ障のボクには眩しいよ―――!!」
ここは目に真っ黒な隈が出来ているボクのようなヤツには似つかわしくない街だ―――
「陰キャコミュ障?」
リアは首を傾げる。
「いや、それはこっちの話。」
「それよりさ―――」
「ちょっと、リアこっちに来てもらっていいかな―――」
ミナスはリアの手を掴み、路地裏に駆け込む。
「ちょっと、ミナス―――、どういうつもり?」
ミナスはリアの手を放し、二人は向かい合う。
「アンタ、まさか私に何かしようってんじゃないでしょうね―――!?」
リアは一歩、後ろに足を引いた。生唾を飲み込む。
「後ろ・・・」
ミナスはリアの背後を指差す。
「えっ・・・!?」
そこには暗がりに人の影が。
「ボク等、誰かに尾行けられている―――」
ミナスは自分たちに向けられる怪しい視線に気づいて、この人通りのない路地裏にその尾行していた人物を誘い込んだ。
「そこにいるのは誰だい?」
ミナスはリアの手を引っ張り、自分の後ろで、リアを守るような形で構えた。
「そのようなみすぼらしい御召し物を身に着けていらっしゃいますが、貴方はジュエル王国第三王女 リア-ジュエル-アルベスタ様とお見受けします。」
その尾行していた者はリアを前に跪いた。
「女・・・?」
全身真っ黒なシノビ装束に身を包み、口元を隠していたが、その声と胸部の膨らみから女だと判断した。
「貴方は誰・・・?」
リアは問いかけた。突然現れたそのシノビが何者なのか―――少なくともリアは、面識がなかった。
「申し遅れました―――アタシの名前はシータ、シータ-クラベルです。」
「この地の領主であられるインテグラル様配下のシノビです。」
「で、そのシノビさんが私達を尾行けていた目的って何?」
「それに何で私がこの街にいるって分かったの―――?」
リアは腕組みをして問い詰める。眼が恐い。
「はい・・・貴方様がこの街へ入ったことは、貴方様の姉君であられるラナー様が感知いたしました。」
「そこで、ラナー様から貴方様を探すように申し付けられまして、街中を探していた所、貴方様らしき人を見かけて今に至るという次第です―――」
「ラナー姉様!?」
「ラナー姉様が生きてるって―――!?」
リアが嬉しそうにシータの話に食いついた。
「リアってお姉さんがいたんだ―――」
ミナスはそう云った。
「ええ、そうよ!」
「自慢の姉が二人もいるの!!」
今回、生きていると分かったのは第二王女のラナー王女の方。
ラナー姉様が生きているのならもしかしたら、セディナ姉様も生きているかも・・・
リアはそんな期待を胸に抱いていた。
「それで、今日は貴方様を御迎えに上がろうと至った次第です―――」
「我が領主、インテグラル様のお屋敷に今ラナー様はおられます。」
「今すぐにでも貴方様を御連れできますが、いかがでしょうか?」
シータはそう云った。
「リア・・・。」
ミナスはリアの方を向く。
「分かったわ―――」
「でも、今日はもう夕暮れ―――」
「明日、またここに来て頂戴―――」
「その時、案内をしてもらうわ。」
そう言って、リアは今日泊まる宿の場所が書いたメモをシータに手渡した。
「承知いたしました―――」
シータは一礼し、そう云うと、その身軽な身体であっという間にこの場を去った。
ラナー姉様は生きていた!
その事実だけでリアはとても喜んで、気付かぬ内にガッツポーズをしていた。
「ふーーん、でも怪しくないかな~~」
ミナスは悪気の無い風にそう云った。
「はぁ?アンタまた、そんなこと言って―――」
せっかく喜んでいたのに、横からのミナスの言葉に一気にテンションが下がるリア。
「だって、話がうまく進みすぎでしょ―――」
「生き別れた姉が実は生きていて―――、妹と無事に再会するって・・・」
「そんなうまい話があるかなァ~~」
ミナスは基本的にマイナス思考だ、どんなことでもマイナスでしか考えられない。平気で人の言葉を疑うし、物事を斜に構えて見る。簡単に信じない、そんな男だからこそ、そう云った言葉が自然と出る。
「でも、街に私がいることを検知したと言っていたわ。」
「ラナー姉様なら私がここに来たことが分かってもおかしくないの―――」
「それはそのラナーって人がリアの存在を検知する何かしらの能力を持っているってこと―――?」
「えぇ!!そうよ!」
「姉様は優秀だから、血の繋がった私のことならある程度離れていてもどこにいるか分かるわ!」
「そうなんだ―――」
「って、ことはさっきのシノビの言葉も多少は信憑性があるってことだね―――」
ミナスも多少は納得した。しかし、ミナスは他人の言葉を100%信じるということはしない。裏切りは付きものだと考えているからだ。
二人は宿へ戻った。
道中、リアは鼻歌交じりでとても機嫌が良かった。
姉に再び会えるかもしれないということがそれほど嬉しかったのだろう。
~商業都市エメラルド 夜 宿屋~
夜、二人は寝床についていた。
リアがベッドで、ミナスは床に敷かれた布団だ。
一人用の部屋に無理を言って、二人泊まらせてもらった結果だ。
「ねぇ・・・ミナス―――」
「起きてる―――?」
星が綺麗な夜空が窓から見える。
明日が楽しみでリアは眠れなかった。
「どうしたのリア―――」
「セックスでもしたいの?」
淡々と言葉を返すミナス。
「はぁ!?」
「そんなわけないでしょ―――!!」
怒り交じりで強く否定するリア。
男女ともに同じ部屋で寝るということがどれだけ危険か、リアも分かってはいるが、如何せん手持ちの金も今後のことを考えるとあまり使えない。まぁ、ミナスの手持ちのアイテムを売れば莫大な金になるだろうが、何故だかこの男にそんな借りは作りたくない。あくまでミナスとは対等な関係でいたいと考えていた。
それに旅をしている中で気付いたが、このミナスという男、まるで性欲がない。というよりも欲が自殺願望以外感じられない。
今もこうやって言っているが、それは本気で言っているわけではないということだけは分かる。
だから、こうやって二人同じ部屋で寝ているのだ。
「いやさ・・・ラナー姉様が生きているって分かって良かったなって思って―――」
「それに今日、街を巡ってみて、やっぱり私この国が好きなんだってそう思ったの!!」
「私、帝国なんかにこの国の人が傷つけられるの見たくない!!」
「うん―――」
「まぁ、リアがそう考えているなら、それはそれでいいんじゃないかな―――」
リアが気持ちを込めて言っているのに煮え切らないミナスの返答。
「だから、本当は嫌だけどアンタの力を借りたい!!」
「というか、借りなきゃ帝国の兵力に対抗できないッ!!」
「あっ、ボクの力を借りるの嫌なんだ―――」
「えぇ、嫌よ・・・意味分かんないくらいおぞましいし、敵味方関係なく、飲み込むくらいどうしようもない力だし、そんな力を使うアンタはどうしようもないくらいロクでもない考えの持ち主だし、本当に心の底からイヤ!!」
「でも―――、それでも、どれだけ綺麗事を並べるより、目的を達成する為の行動の方が価値があると私は考えているの!!」
「だから、利用できるものは何でも利用する!!ってそう決めた!!」
そういうリアの眼は覚悟に満ちている。
目的の為なら悪魔にだって、魂を売るようなそんな覚悟。
「へェ・・・なんか立派だね―――」
「でも、ボクは自分が死ねればそれでいい―――」
「リアがボクを殺してくれるのなら何だっていいのさ―――」
「他がどうなろうとね・・・」
ちょっとリアの熱量に当てられた自分がいた。
ちょっと憧れて、嫉妬してしまうくらいの熱量にミナスの心の巨大な氷の角が少し溶けたのを感じた。
でもミナスはまだそのことに気付いてすらいない。
自分は自分だと、自分の人生の目的地はまだ先なのだと、そう言い聞かせて、ミナスは眠りについた。
◆その夜、商業都市エメラルド 近辺~
怪しく動く集団がいた。
「アルバック中尉!!」
「言われた通り、この街を囲むように"種"を埋めて参りましたッ!!」
暗闇の中、怪しく笑う男、帝国軍戦闘部隊のアルバック-ツィ-カミル。
部下からの報告を聞く。
「よォォ~~~っし!!よくやった!!」
「ここに我らに盾突く愚か者がいるみたいだからなァァ~~!!!」
「しかも、ここに来る中、新たな事実が分かった!!」
「ココにいるのはどうやらジュエル王国 第三王女のリア王女だ!!」
「コイツはツイてるぜェ~~~!!」
「隊長が探していた女がここにいるなら、話が早ェ!!」
「明日の朝、一気に炙り出してやる―――」
「楽しみに待ってろよォォ~~~!!」
「ククク・・・・ハハハハハッーーー!!」
アルバックの笑い声が周囲に響いていた。
帝国軍はリアを狙い、既にエメラルドの近くまで迫る。
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