第12話 信念とか覚悟みたいなのって何か重い
メインで書いている方がひと段落したので、こちらを更新します。
約1年半の執筆で毎週投稿、しかも月200時間オーバーの本業、死ぬかと思った。
メインの方も面白いので、興味のある方はぜひ、読んでほしいです。
~商業都市エメラルド 冒険者ギルド~
ギルドを訪れて、早速若いパーティーのリーダーと揉めるミナス。
頭を抱えるリア―――、もしこのまま睨み合いを続ければ、またあの時のように大惨事になるだろう。
「はぁ~~~!!ちょっと、ミナス―――」
大きなため息と共にミナスの名を呼ぶリア。
と、そんな時リアたちの頭上より一人のガタイのいい男が飛び降りてきた。
「ちょっと待ったアアァーーーッ!!!」
何だ何だと―――、ギャラリーも増える。
ギルド全体に騒動が伝わってしまう。そこにいた全員の注目を浴びる。
いきなり現れた男に茫然としていたが、ワラワラと人が集まり、リアはハッと我に返る。
自分がこの国の姫であるとバレる訳にはいかないので、ボロボロのフードを深めに被る。
「アンタは"剣王" グラン―――ッ!?」
「何でまた、S級のアンタが―――こんなとこにいるんだよ!?」
リーダー風の男がそう云った。
どうやらこのグランとかいう男、有名人らしい。
周りの連中もグランの登場にざわついている。
「ちょっと、ちょっと―――ミナスってば!!」
「騒ぎを大きくしないでよね―――」
リアがボクの袖を引っ張ってそう云った。
「ゴメン、ゴメン―――つい、いつもの癖で。」
「ボクもちょっと大人げなかったよ―――」
そう軽口で謝るミナス。
別にミナスにとってはどっちでも良かった。
ここでコイツ等を殺そうが、生かそうが―――
でも、それをしたらリアにまた嫌われるから、殺すのは止めた。
それよりも突然、現れたこの男は一体何なんだ―――?
有名人みたいだけど―――
ミナスは首を傾げた。
「喧嘩はよくないッッーーー!!!」
剣王 グランは広いギルド内に響く声でそう云った。
「ッ―――!?」
耳を劈くくらいの音にギルド内にいた者達は両手で耳を塞ぎ、その場にしゃがみ込んだ。
ミナス以外は―――
髪をポリポリと掻き、グランを眺めるミナス。
「その重たそうな剣は飾りかな―――?」
ミナスは剣王 グランが背中に付けている身の丈ほどもある巨大な剣を指差し、一言そう云った。
「・・・ッ!!」
グランは驚いたような顔をして、噴き出した。
「フッ・・・ワハハハハーーー!!!」
「我を前にして、そのようなことを抜かしたのはお主が初めてだッ!!」
嬉しそうな表情のグラン―――、何が可笑しかったのか理解ができないミナス。
その無機質な瞳が彼を観察する。
「いくら剣王だからって、俺達とアンタ関係ねェーだろ!!」
暫く耳を塞いで黙っていた男たちも回復したのか、立ち上がり、今度はグランに向かってそう云った。
「喧嘩を止めるのは大人として、一介の冒険者として当然のことだ!!」
「ココにいる皆に迷惑が掛かるだろうがッ!!」
うん―――、この人、至極真っ当なこと言ってるな。
ミナスはそう思った。
「チッ・・・!!悪かったよ―――」
余りの正論に男たちはバツが悪そうにギルドから退散した。
ミナスたちはその様子を眺める。
「さて―――、お主たちもだぞ!!」
「今回の様子、全て二階から見ていた。彼らが受付の彼女たちに高圧的に迫っていたのが悪い!!」
「しかし君たちも必要以上に彼らを刺激していたのもまた事実―――」
「今後はそう云ったことは控えるように―――!!」
グランはそう云ってミナスたちを注意した。
「す・・・すいません―――」
リアが素直に頭を下げて、謝った。
しかし、ミナスは態度を変えることなく、グランにこう云った。
「てか、おじさん二階で見てたんなら、ボクより先に助けてやれば良かったんじゃね?」
「ちょ、ちょっとミナス!!」
リアは慌てて、ミナスの頭を無理矢理下げた。
「こ・・・コイツちょっと世間知らずな所があって―――、その・・・何ていうか、ごめんなさい!!」
「・・・ッ!?」
S級冒険者グランに対する言葉遣いではない。
死んだなと周りの者達は思った。
「いやいや、よいよい―――」
「我はそのようなことで怒ったりはせん!!」
グランは懐が深かった。
その戦闘力もさることながら、こんなことでは決して怒るような人物ではない。
喧嘩っ早い冒険者の中では珍しい、温厚な人格者―――
それが冒険者業界での彼の評価。
故にS級冒険者になれた。世界的に強者として認知された。
ワハハと笑いながら、グランは笑いながらギルドを後にした。
「グランさん―――いい人だったね!!」
リアがニッコリとミナスにそう云った。
「いい人・・・?」
ミナスはそう呟いた。
「あっ・・・!?」
リアはその笑顔を止め、少し恥ずかしそうに頬を赤らめた。
つい、無垢な笑顔を向けてしまったこと若干後悔した。
「うん―――、まぁアレが"いい人"って言うならそうかもね。」
「多分、アレは信念とか覚悟とかそういうことを何の恥ずかし気もなく言っちゃうタイプだね。」
ミナスのいつもの冷めた言葉だ。
「もう―――、何でミナスはいつもそうなのよォ!!」
リアはムッとしてそう云った。
「ボクは何千年、何万年も生きてこんな人間になっちゃったけど―――、それを差し引いても信念とか覚悟みたいなのって何か重いってカンジはあるよね。」
元々、自分はこんな人間だったのかもしれないと―――もはや思い出すことも叶わないかつての自分を思い返すミナス。
ミナスたちはその後、冒険者ギルドで冒険者として登録をした。
念のための登録みたいなものだ。ミナスは身分を証明できるものが一切ない。流石にそれはマズいとリアが登録を勧めて、登録をしたといった経緯だ。
冒険者として登録を終えた、ミナスとリアが宿へ戻る途中―――
街中の孤児院にグランがいた。
グランの周りには大勢の痩せた幼い子供たちが集まっていた。
グランは子どもたちに食料を与え、院長に金貨の詰まった麻袋を手渡していた。
子どもたちは皆、幸せそうな笑顔を浮かべている。
「やっぱり、グランさんはいい人だよッ!!」
リアは嬉しくなった。
身寄りのない子供たちの為にあんなにたくさんの食料や金貨を出せる人間はそういない。
もしかしたら、この人なら帝国に立ち向かう為に協力してくれるかもと思った。
「凄いね―――」
「何の見返りもないのに、あんなに人に尽くせるなんて―――」
ミナスは少しグランという男を見直した。
自分では到底できない行為だと―――、素直に認めた。
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