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第11話 人生は冒険だとか言ってるヤツほど本当の冒険が何かまるで分かっちゃいないって話

高校の頃の友達が無職系youtuberになっていたので、ちゃんとチャンネル登録しました。

これが人生だよね?


~商業都市エメラルド 武器屋~

 

 「ミ~ナ~スッ!!」

 怒り気味のリアがミナスの名を呼ぶ。

 

 「何だい?リア?」

 こんな伝説級の短剣を手渡すなんてどうかしてるんじゃないのって云ってやりたかったが、ミナスの平然とした態度と顔を見ていたらそんな気も失せてしまった。

 

 「こんな物どこで拾って来たのよ―――」

 

 呆れ顔のリア。もうどうでもいいやという投げやりな感じで云った。

 

 「それは次元の狭間で倒したモンスターがドロップしたやつだっけな・・・?」

 「あれ、それとも宝箱から手に入れた奴だっけ?」

 「全然覚えてないや―――ゴメンね?」

 

 ミナスはこの世界では超希少なアイテムですら、どうでもいいと感じていた。

 

 そもそも、モンスターからのドロップや宝箱から入手したアイテムは全て自分を傷つけられるか試した後、それが殺し得るに足らないと判断した物を収納のスキルで異次元に放り込むようにしていた。

 

 その時点で、ミナスにとって、自分のことを殺せないそれらのアイテムに対してほとんど興味を失っている。

 

 しかし、もし万が一、それらのアイテムを使用した達人級の存在が自分のことを殺し得る可能性があるのならば―――

 

 そんな、微かな希望を抱いて、ミナスはこれまで拾ったアイテムは収納のスキルに納めてきた。

 

 「あの・・・このナイフっていくらぐらいで売れますか?」

 

 リアが店主に尋ねた。

 

 「えっ・・・!!?ちょ、ちょっとリアさん―――!?」

 「それは売る為にリアに渡したわけじゃ・・・・。」

 ミナスは珍しく取り乱す。ナイフなどどうでもいいが、万が一自分を殺せるようにと思ってリアに渡したナイフを売ってしまわれたら、困るなと思い慌てた。

 

 「分かってるわよ―――」

 「勿論、今は・・売るつもりはないから安心して―――」

 

 「今は・・・って―――」

 

 王国の再興にはどうしたって大金が掛かる。こんなナイフ一本でもこの店主の反応を見れば、一発で伝説級の武器だと分かる。

 

 その時が来たら、リアは売ってしまおうと考えていた。

 

 「あのさ・・・」

 「奴隷商人達から大金盗んだり、人があげたアイテム売ろうとしたり―――」

 「リアってあんまりお姫様に見えないよね・・・?」

 

 ミナスは小さくそう呟いた。

 

 リアはそのミナスの一言に思わず、動揺する。そして、ミナスの着ているローブの襟元を引っ張り、自分の顔に近づけた。

 

 「ちょ・・・!?ミナスッ!!」

 「しッーー!!しッーー!!」

 「ここでは私がこの王国の姫だってのは秘密にして頂戴ッ!!」

 「どこで帝国の奴らがいるか分からないでしょ―――!!」

 ミナスにひそひそ声で耳打ちをする。

 

 「えっ・・・う、うん。」

 「分かった。」

 リアの必死の形相に思わず、ミナスは頷く。

 

 「???」

 幸い今のミナスの言葉は店主には聞こえていなかったようだ。

 

 「いや~~それにしてもビックリしたよ」

 「いきなり引っ張られるからてっきりボクのことを殺してくれるのかと思ったじゃないか―――」

 右手で頭を撫でながら、嬉しそうに照れてそう話すミナス。

 

 「安心しなさいミナス!!」

 「アンタのことは必ず、殺すから―――ッ!!」

 

 きっぱりとそう返すリア。

 

 その二人のやり取りを目の前で見ていた店主はこう思った。

 

 

 えっ・・・何!?

 

 ただの若い男女のカップルかと思ったら、何て会話してんだ!?コイツ等!!

 

 コワッ!!

 

 

 「それで、このナイフのことなんだけど・・・・」

 リアは話を戻して、再び店主に尋ねた。

 

 

 「えっ・・・!?あぁ、このナイフね・・・」

 「うん、確かに素晴らしいが、あまりにも価値が高すぎて済まないがウチでは買い取れないね―――」

 「高名な貴族なんかに話をしてみたらどうかね―――」

 

 「そ、そうですか・・・」

 あからさまに落ち込むリア。

 

 店主に体よく拒否されてしまった。

 

 「あの、すみません。」

 「それとここでのことは他言無用でお願いします。」

 

 リアは店主にそうお願いした。

 

 自分たちは帝国から追われる身。

 

 サファイアの街での一件がもし、帝国にバレてしまったら、いずれ帝国に追跡されてしまうのではということをリアは恐れた。

 

 だから、こうして自分たちのことは極力目立たないように行動しなければと思っていた。

 

 こうして、リアは手ごろな片手剣と洋服、ポーションなどの携帯アイテム一式をその店で購入し、店を後にした。

 

 「よーーっし!!」

 「いい買い物ができた!!」

 

 「次はどこに行くんだい?」

 

 ミナスは尋ねた。

 

 「そうだね・・・」

 「冒険者ギルドに行こうと思うッ!!」

 リアはそう答えた。

 

 ◆◆◆

 

~商業都市エメラルド 冒険者ギルド~

 

 「ふふふ・・・ついに来たわね―――」

 「ミナス!!」

 

 リアは不気味に笑う。

 

 プリンセスがしちゃいけないような悪い顔をしている。

 

 「ここにボクを殺してくれる人がいるのかな・・・・ドキドキ。」

 

 ミナスもリアに負けず劣らず、不気味な笑みを浮かべる。

 

 「って、違うわよッ!!」

 

 リアがすかさずミナスの背中を叩き、ツッコむ。

 

 「痛ッ!!」

 「きたきたきたきた~~~!!」

 「久しぶりの痛みだァ!!」

 「ありがとう~~!!」

 「リア~~!!」

 

 「ッッ~~~!!」

 困惑するリアに幸福で満ち溢れた表情のミナス。

 

 リアはついうっかり、ミナスの言動に叩いてツッコミを入れてしまったことを後悔する。

 

 もう次からコイツに叩いてツッコむの止めよう―――

 

 そう心に誓った。

 

 「もう!早くしなさい!」

 「行くよミナス!!」

 

 こんな茶番をこの建物の前でしていても仕方ない。

 

 二人は冒険者ギルドの中へと入っていった。

 

 

 そんな二人を待ち構えていたのは怒号だった。

 「だ~か~ら~俺達にもっとデケェ仕事を頼むって言ってんだろ!!」

 「使えねェなァ!!」

 

 

 ある冒険者チームがギルドの若い受付嬢に向かって大きな声で訴えている様子。

 

 どうみても安物の皮のできた鎧に鉄製の剣を携えたリーダ風の男。後ろには彼のパーティのメンバーと思しき者達。

 

 「いえ、ですからあなた方のランクですと、Eランク級の依頼しかお受けできない決まりでして・・・・」

 

 受付嬢は必死にそう説明をしている。

 

 その顔はどこか疲れ気味だ。

 

 「俺達はこんなゴブリンやウルフ、スライムなんかを毎日狩って日銭を稼ぐような生活はもうまっぴら御免なんだよッ!!」

 「こんなことがしたいから冒険者やってんじゃねェーんだよ!!」

 短気そうなリーダーの男の言葉に熱が籠ってくる。

 

 「そうは言われましても・・・・」

 受付嬢は困った様子だ。

 

 「俺達はなぁ―――」

 「巨大なドラゴンを狩ったり、誰も到達したことのねぇダンジョンの奥深くに行ってお宝をゲットしたり、英雄だと皆に言われるようになりてェーから冒険者になったんだよ!!」

 「そんな夢を叶える為に生きてんだよォ!!」

 「それを毎日ゴブリンだのウルフだの狩ってこいだとかつまらない仕事ばっかり回しやがって―――」

 「人生は冒険なんだぞッ!!」

 「俺達にもデケェ仕事よこしやがれッ!!」

 

 そのリーダ風の男は勢い余って、受付嬢の胸ぐらを掴み、手を振り上げた。

 

 そんな男の目の前に杖の先端がスッと現れる。

 

 ミナスは男に止めろと言うように手に持っている杖を前に突き出す。

 

 「ちょ―――ミナス!!」

 リアは慌てた。

 

 また、ミナスが目立つような行動をして暴走していると―――

 

 

 だが、この時、ミナスは決して殴られそうになった受付嬢を助けようと思って行動したわけじゃない。

 

 ただ、純粋にそのパーティのリーダー風の男が言っている言葉にイラついたのだ。

 

 「人生は冒険だって―――?」

 

 「何だ!?テメェ!!」

 

 男の怒りの矛先がミナスに向かう。

 

 

 「巨大なドラゴンを狩りたいだの、誰も到達したことのないダンジョンの奥深くでお宝をゲットしたいだの―――」

 

 「舐めているのか?」

 

 「貴様ら―――」

 

 

 ゾクっ!!

 

 とした背筋に凍るような悪寒がその場にいた全ての人間に走った。

 

 基本的に周囲に無関心なミナスが怒っているのか。

 

 「ッ―――!?」

 

 そのミナスの冷たい視線を受けたリーダ風の男はたじろぐ。

 

 「君たちは泣く程辛い思いをしたことがあるか?」

 「死にたくなる程痛い思いをしたことがあるか?」

 「絶望感で生きるのが辛い、苦しくて、誰かに助けを求めても誰も助けてくれない。」

 「そんな毎日を送ったことがあるか?」

 「そんな奴らが『人生は冒険』?」

 「デカい仕事を寄こせだと―――」

 「ふざけるなよ―――」

 「冒険ってのは危険で苦しくて、辛くて、絶望感でいっぱいになるものなんだよ―――」

 「君たちはそれを"知らない"だけ。知らないからこうやって声を大にしてそんなことが言える。」

 「死にたいときに死ねる幸せを噛み締めて、もっと身の丈に合った生き方をしろよ―――」

 「もっと今の生活を大切にしろよ―――」

 

 ミナスはただ冷たい目で淡々とそう云い放った。

 

 

 「な・・・何言ってやがんだ!?テメェー!!」

 

 ギルドの受付嬢から今度はミナスの胸ぐらを掴む。

 

 そして拳を振り上げて、殴り掛かろうとする。

 

 

 そして、ミナスは思う。

 

 全く・・・困った男だ―――

 

 君はいつでも死ねる幸せの特権を持っているのに―――

 

 それ以上の幸福を求める。

 

 いっそ、このまま"救済"してやるか?

 

 ミナスは手に少しの魔力を込める。

 

 

 そんな二人の様子を上の階から眺めている者がいた。

 

 

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↓こちらも連載しています。興味ある方はぜひ読んでみてください

『エレベータに乗ったら異世界に来てしまった件』

https://ncode.syosetu.com/n2932fy/205/


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