第10話 ボクのことを殺せる武器売ってないですか?
二年ぶりくらいの更新になります。
メインで書いてるもう一つの物語の方を書いていて更新できませんでした。
リハビリ感覚でボチボチ更新しようかなと思います。メインで書いている方が今、6章の終盤でそれが完結したら、しばらくはこっちに力を入れる予定です。
~商業都市エメラルド 喫茶店~
「―――で、エメラルドに着いたわけだけど、これから何をするのさ?」
リアはジトっとした視線でミナスに目を向ける。
その手にはさっき注文した温かいコーヒーを手に持っている。
「あ~、いやいやボクは何だっていいんだ―――」
サファイアの一件をどうも引きずっているような気配をミナスは感じていた。表面上は和解したが、どこかぎこちない。
気まずい雰囲気が漂っている。
どうも時空の狭間に何千年もいたせいで普通の人と感覚が違う。
「結局、これは延長戦、人生の延長戦みたいなものだから、ボクはリアに従うよ。」
「それが一番確実な死への道のりだからね―――」
ミナスは必死に取り繕い、リアのご機嫌を取る。
「まずは武器屋なんてどうかな―――?」
「私、結局サファイアの街では何も買えなかったし―――」
「ここまでの道中、ミナスの道具に頼りっぱなしだし・・・・」
ミナスとの旅の道中、彼は収納のスキルを発動し、リアが見たことのない食材やアイテムを出していた。
彼は時空の狭間とかいう聞いたこともないダンジョンで拾ったと言っていた。
彼が護身用にと手渡してくれたナイフ。
全然力を入れていないのに、食材はおろか太い木々も切れてしまった。よく分からないけど、所々に豪華な宝石や装飾、古代文字みたいなのが入っていて、正直怖い。なんか色も金色で価値が高そうだし。
「ボクの渡したナイフは気に入らなかった?」
「えっ・・・いや、そういう訳じゃないけど・・・・。」
「ちょっと・・・・私には荷が重いっていうか、もったいないというか・・・・」
正直に言うと切れ味が鋭すぎるのと何か魔術的な付与がされているっぽく何が起きるか分からなくて気味が悪かったが、それを言ってしまうとまたミナスが落ち込む気がしたので、リアは言わなかった。
「リアがそう言うなら分かった―――」
「まずは武器屋に寄ろうか。」
「あーでも、ボクこの世界のお金あまり持ってないよ・・・・?」
「大丈夫―――!」
「お金なら私のことを売ろうとした行商人が持っていた金を盗っておいたから―――」
リアは自慢げに金貨がどっさり入った布袋を見せる。
「お~~中々リアも悪党だな。」
ミナスは感心の声を上げる。
「私のことを売ろうとした人たちだよ?」
「これくらいの報いは当然でしょ―――!!」
こうしてミナスとリアは商業都市エメラルドにある武器屋へと向かった。
◆◆◆
~商業都市エメラルド 武器屋~
カラン、カラン!
店に入ると、ドアのベルが鳴る。
「いらっしゃいやせーー!!」
やる気のない店主の声が二人を迎える。
随分と武器屋を見つけるのに苦労した。
このエメラルドの街、商業都市ということもあって、ただただ広い。
そして、武器屋だけでなく飲食店やアクセサリーショップ、素材屋、娯楽施設まで揃っている。
リアが途中道草を食っていたこともあり、ここまでの到着に思ったより時間が掛かってしまった。
店の中には自分たちの他に客が何人かいた。
真剣に武具を眺め、商品を選ぶ者。
店員と話をしている者。
多分、王都が侵略されたことも既にこの街の人たちの耳に入っているのだろう。
それでも街はここまで活気があるのは、自分たちの街は大丈夫だろうと思っているからなのか。
いまいち、緊張感がない。
リアが難しい顔で店内の様子を伺っていると、ミナスは会計で新聞を読んでいた店員に声を掛けた。
「ボクのことを殺せる武器売ってないですか?」
「は??今何と?」
店員はミナスの言葉が聞き間違いかと思い、聞き返す。
「ボクのことを殺せる武器売ってないですか?」
もう一度ミナスは同じセリフを述べる。
「???」
うん、やっぱり答えは変わらない。
どうやら聞き間違いじゃないみたいだ。
この人頭がおかしいのかな?
店員の男は頭にクエスチョンマークを浮かべる。
「あーーッ!!ちょっとミナス!!」
「何言ってんのよーーッ!!」
慌てたリアがミナスを制止する為、やって来る。
「何って?ここは武器屋だろ?」
「だったら、ボクを殺せるような武器があるかもしれない―――」
ミナスは真顔でそう答える。
まぁ、私もそんな武器を見つけることを目的の一つとして考えてここに来たけど―――
「何も知らない店員の人にそんなことを聞いたら頭がおかしい人だって思われるでしょ!!」
まるで、子どもに叱りつけるような感じでミナスに言い聞かせた。
「ん?ちょっとお嬢ちゃん!」
「その腰に付けているナイフを見せてもらってもいいかい?」
そんな二人のやり取りを前で見ていた店員が何かに気付いた。
「えっ・・・!?」
リアは突然のことで驚く。
ナイフってこれミナスにもらったやつのことだよね・・・?
「えっ・・・と、これのことですか?」
恐る恐る、リアは店員にそのナイフを差し出す。
「そうそう―――」
「それのこと。」
訝しそうな表情で、リアの差し出したナイフを手に取って眺め始める店員。
「ちょっと抜いてもいいかい?」
「えっ、ええ、どうぞ―――」
皮でできた鞘から刀身をむき出しにする。
黄金に光るそのナイフを見て店員は驚いた―――
「君、ちょっと―――」
「これをどこで手に入れたんだい!?」
「それですか・・・?」
「あぁ―――」
「あっ、実は私はここの店長なんだ!」
「いや、この素晴らしいナイフが気になってな・・・」
店員の男は実はこの店の店長だと名乗った。恐らくリアが警戒心を出してきたので、それをなくそうと自分のことを話したのだ。
「そのナイフはえっ・・・と、ミナス・・・この人から貰いました・・・」
リアは正直にミナスから貰ったと話した。
「この黄金に輝く材質・・・」
「この埋め込まれた魔石・・・」
「そして、古代文字・・・」
「信じられん―――」
店長は生唾を飲み、緊張している様子だ。
「このナイフがどうかしたんですか?」
リアは何か嫌な予感がした。
ただのナイフだとは思っていなかったが、この店長の反応から察するにとても貴重なものなのだろう。
「これは恐らくだが、伝説の金属ヒヒイロカネでできている。」
「そして、この魔石は高純度のクラリティ8~9だろう。」
クラリティとは1~10段階で評価される等級。通常は3,4あれば高級でとされ、貴族たちがその自慢の武具に装着したりする。それが8~9もある。
「極めつけはこの古代文字・・・・私も実物を見たことはないが、恐らく古代ルーン文字。」
えぇ・・・。
こんな物凄いモノをこのミナスという男はポイっと適当に取り出して私に渡したってことなの・・・?
「ん?どうしたの?」
呑気な声でミナスはリアに聞いた。
リアはそのミナスの態度に開いた口が塞がらなかった。
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