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第1話 君はボクを殺してくれるかい?

どうもゆにです。


新連載始めました。

いつもは、『エレベータに乗ったら異世界に来てしまった件』

https://ncode.syosetu.com/n2932fy/

という物語も書いています。

こちらの方もよろしくお願いします。

読者の皆さんが楽しめるような作品にして行けたらと思っています。

死にたくなった時に更新していきます。


~時空の狭間~

 

 

 "誰かボクを殺してくれ"

 

 そう言い続けて一体どれくらいの年月が経っただろうか...?

 

 

 数百年?数千年?数万年?

 

 

 ボクはこの訳の分からない空間を行く当てもなく彷徨い続けていた。一体ここへ来てからどれくらい経っただろうか。

 

 ここは時空の狭間というらしい。様々な時空同士が訳の分からない位、蜘蛛の巣のように繋がっており、様々な恐ろしい魔物が蔓延っている最悪のダンジョンだ。フロア構成は全て闘うのに充分なスペースが確保されている大部屋形式となっている。フロア同士はそれぞれ、扉で繋がっており、いつ終わるとも知れない闘争を繰り返していくのだ。

 

 

 ボクはここへただ死に場所を求めて来ただけだ

 

 

 ボクを殺してくれる存在がここならいるだろうと思って来て、既に数千年以上の月日が経過していた。

 

 

 誰かボクを殺してくれと思い続けて、この時空の狭間のフロアを行き来するそんな毎日の繰り返し、そして今日でそれが終わる。ボクは最後のドアを開いた。

 

 ギギィと擦れた音と共に扉の先の光景が男の目の前に広がった。

 

 「あぁ...ここもいつも通りの大部屋か...」

 

 扉の先には何もないだだっ広い空間に一匹の巨大なドラゴンがいるだけだった。

 

 「やぁやぁ...!君がここの主かい?」

 ボクは気さくにドラゴンへと話しかけた。

 

 「・・・・・・・・・」

 

 ドラゴンは無反応を示す。どうやら、ボクのことに気が付いてすらいない様だ。

 

 「う~ん...どうしたものかな...?」

 ボクはそんなに大きな声を出すことは得意ではない。毎回、部屋の主には最初無視をされる。

 

 「ハァ...しょうがない...いつものヤツで行くか...」

 ボクは掌を広げ、自分の魔力をほんの少し解放した。

 

 すると、目の前のドラゴンは、悪夢から目が覚めたかのようにパッと目を見開き、こちらを見た。

 

 「これもいつも通りだな...」

 

 「汝は何者だ?」

 ドラゴンはゆっくりとその大きな口を開き、ボクへ質問を投げかけた。

 

 「ボクはミナス...ただの死にたがりさ!」

 「君はボクを殺してくれるかい・・・・・・・・?」

 

 「汝からは不思議な力を感じる...」

 「しかし、我は雑魚・・とは闘わないことにしている」

 「早々にここから立ち去れ...!」

 

 「雑魚ねぇ...」

 「まぁ否定はしないけど、君がボクを殺してくれないなら、ボクが君を殺しちゃうね!」

 

 「ハハハハハッ!!!」

 「何を言い出すかと思えば、汝のようなか弱き存在がLv.6000を超えている古龍である我を殺すだと?」

 「寝言も寝てから言うんだなッ!」

 ドラゴンは常人なら鼓膜が破れるかと思う程大きな声で笑っていた。

 

 「へぇ...敗けるのがコワいんだ・・・・・?」

 ボクは目の前のドラゴンを煽った。大体、自分の力に絶対の自信がある奴っていうのはこの一言でコロッと釣れてしまう。ボクはこのダンジョンでそれを何回も行ってきた。

 

 「何ッ??」

 それまで笑ってボクを軽んじていたドラゴンは、纏っていた空気を一変させた。

 

 (このドラゴンも今までの奴らと同じっぽいな...)

 ボクは既にこのドラゴンから自分を殺してくれるのでは?という期待が半分くらい消失していた。

 

 「極雷魔法:稲妻嵐雨サンダーストーム!!」

 「極炎魔法:炎獄爆破ヘルプロージョン!!」

 「極氷魔法:氷剣時代アイスエイジ!!」

 

 どこからともなく、ドラゴンは何十もの魔法陣を展開させ、いきなり大型魔法を同時にボクに繰り出してきた。本気で殺しに来るつもりだ。

 

 「クックック...他愛もないわッ!!」

 「我にそんな口を聞いたから己の死期を早める結果になったのだッ!!」

 

 強烈なドラゴンの魔法でボクの全身は完全に吹き飛んでいた。

 

 これでボクが死ねたら、どれだけ幸せだっただろうか...

 

 ボクの身体を構成した細胞はドロドロと液体に変わり、ドラゴンの目の前に水溜りのようになっていた。魔法によって生じた砂煙が次第に晴れていく。

 

 ドラゴンはその光景に少し、イヤな予感が過っていた。流石はLv.6000を超える魔物、多少の先の未来は視えているようだ。

 

 「バ、バカな...??」

 「汝は完全に消し飛んだハズ...!?」

 

 ドロドロに溶けたボクの細胞は再び、元へと戻っていく。この時、着ていたローブ、ズボンやブーツも同時に再生していった。このローブ、ズボンやブーツ耐久力こそないけれど、自動修復がとてつもなく速いため、よく愛用している。

 

 「期待させたみたいでゴメンね?ボクは不老不死なんだ」

 ボクは小さな声で謝罪する。

 

 「不老不死だと...!?」

 「ならば、何度でも殺して殺してやろうぞッ!!」

 この古龍のレベルなら、不老不死などそこまで珍しくもないのだろう...

 しかし、不死の王や吸血鬼の真祖レベルなら不老不死の能力を持っていることも珍しくないことを、ボク自身良く知っている。

 

 だから、その再生力が完全に尽きるまで、殺すというのが不老不死に対する一つの回答なのだ。しかし、ボクの不老不死の能力は、自身のスキルから得ているモノではない。

 

 

  "これは呪いなのだ"

 

 だから、再生力が尽きることなどあり得ない...というよりも既に何万回と連続で致命傷を受ける実験は行っている。それで死ねたらハッピーだったのに、結果はここにボクが立っていることが証明している。

 

 「ゴメンね...君はもう死んでいるからそれはムリだよ!」

 再び、魔法陣を展開しようとしているドラゴンを前にボクはそう言い放つ。

 

 「何ッ!?」

 

 ドラゴンはハッと自分の左半身を見た。この時、気が付いたのだ。

 

 自分の左半身が骨までドロドロに溶けていることに...

 

 「ウガアアァアァ!!!」

 「貴様か!?貴様の仕業なのか!?」

 ドラゴンの口調が変わっていた。完全にボクを敵として認識したようだ。

 

 

   "しかし、もう遅い・・・・"

 

 

 この古龍はもうすぐ死ぬ...それは変わらない結果だ。

 

 「殺してやるッ!!」

 怒ったドラゴンは、ボクへと攻撃を行おうとするが、魔法が出ない。いや、出せないのだ。

 

 「我の魔法が撃てない!?」

 

 「そうだね、君の能力値は今ボクと同じになっている...このLv.-9999のボクとね...」

 「君の身体がそんなにドロドロに溶けているのもその影響さ」

 「身体が耐えきれなくなっているんだ...マイナスの能力値に...」

 

 「ならば貴様は何故立っていられるんだァ!!」

 

 「それは、ボクが"不老不死"だからだよ...」

 ボクは優しく、ドラゴンにそう囁いた。

 

 左半身からどんどんと浸食が進み、すぐに胸から上だけの存在になった。それでもまだ意識はあり、会話はできるようだった。

 

 「頼むッ!!我はまだ死にたくない!!助けてくれェ!!」

 「そ、そうだ!一緒に手を組んで、全時空の覇者にならないか!?」

 「我と汝ならば絶対に全時空の覇者になれるッ!!」

 「一晩で世界をマグマに変えたボルケニウス、幾百に分かれた大地を一つにつなぎ合わせたヒュージバリアン、複数の世界を支配する異界の魔王ケルビウム!」

 「こやつらはこの時空の狭間にいる!そいつらを倒し、我と共に全時空の覇者を目指さないか!?」

 古龍は必死に命乞いを始めた。

 

 

 でも、それは無駄な事なんだ...

 

 だって、

 

 「そいつらのことはよく分からないが、多分ボクは既にそいつらを殺しているよ...だって、君が最後・・なんだもん...この時空の狭間の魔物は。」

 「それにボクは全時空の覇者そんなものに興味はないしね」

 

 「エッ!?」

 

 ボクがこの時空の狭間を彷徨って、何千年の間に様々な強敵と出会った。ボクを殺してくれると思って、ボクを殺してくれるように頼んだ。でも、存在しなかったんだ。ボクを殺してくれる者は...

 

 だから、代わりに救って・・・やったさ

 

 「分かった!汝が王者だッ!!」

 「我は汝のペットでいいッ!!」

 「だから、助けてくれェ!」

 さらにドラゴンは命乞いを続けていた。流石に聞いているのも面倒になってきた。ここで、ボクはあることを頼んでいないことを思い出した。

 

 「あっ、そうだ!じゃあアルメンセスって世界へのチャンネルを繋いでくれないかな?」

 アルメンセスは、元々ボクがいた世界のことだ...

 

 来るときは、アイテムの力で来たのだが、そのアイテムは片道切符で、帰れなくなっていたのだ。まぁここで悠久の時を過ごすのもいいかとは思っていたが、せっかくだから故郷に戻ってみたいという思いもあったため、ドラゴンに頼んだ。

 

 このレベルの古龍なら好きな世界への扉を作ることなど朝飯前なハズだ。既に能力はマイナスになっているとは言え、この程度ならできるだろうとボクは確信していた。

 

 「アルメンセスだな...!」

 「わ、分かった!!」

 そう言って、すぐに次元の裂け目を作ってくれた。

 

 「ん?じゃあな...!」

 そう言って、すぐさまボクは次元の裂け目へと入っていこうとする。

 

 「ま、待ってくれ!!」

 ドラゴンがボクを呼び止める。

 

 「ん?なんだい?」

 

 「た、助けるって約束だろ?」

 そんな約束をした覚えはないんだがな...

 それに既に頭だけのドラゴン、あと10秒もすれば完全にその生命は消え去るだろう...

 

 「助けただろ?そんな楽に死ねるんだ!」

 「それ以上の幸福はないだろ?」

 ボクはこのドラゴンが何を言っているのかよく分からなかった。楽に死ぬ以上に幸せなことが在るのだろうか?

 

 「し、死ぬことが幸福なわけはないだろッ!」

 「我は...我は最強の存在となって、全生命体の頂点になるという野望があるのだ!!」

 「こんな所では死ねない!」

 

 「いや、"死"はとーっても幸せなことだよ」

 「もう望まなくてもいいんだ!悩まなくてもいいんだ!苦しまなくてもいいんだァ!」

 「これ以上に幸せなことはないさ!!」

 「なぁーにちょっと最初はコワいかもしれない...それでも一瞬さ!すぐに気持ちよくなれるさ!」

 ボクはドラゴンにウィンクをしながら、その場を去ろうとした。

 

 「まっ、待ってくれエエエエェェ!!!!」

 ドラゴンの声は虚しくその場に響くだけだった。そして、最後にその生命はろうそくの灯のように消え去った。

 

 不老不死でLv.-9999のダウナーのミナスは、アルメンセスの地へと降り立つ。それは後にこの世界を変革へと導く存在となる。

 

 死にたくても死ねない彼は、果たしてこの地で無事に死ぬことができるのだろうか...

 


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