偽物の心霊写真
百物語十三話になります
一一二九の怪談百物語↓
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俺が司会をしていたローカル番組で心霊特集を放送した時の裏話だ。
「はい!今日の特集は…真夏の心霊特集!パチパチパチ!」
特集の内容は、司会の俺と当時有名だった霊能力者の先生で心霊写真を鑑定していくという単純な企画だった。怪談トークで番組を進めながら、視聴者が送ってきた心霊写真を1枚ずつ霊能力者が鑑定していく。
「この写真は危険ですね…悪霊が写っています。すぐにお祓いを受けた方がいいと思います」
霊能力者が送られてきた心霊写真を丁寧に解説していく。これは落ち武者の怨霊だとか、自殺した女の霊だとか…本当かよ…?
「最後の心霊写真なんですが…同じ視聴者さんから送られてきた3枚の写真です。送ってくださった家族によると、最近家の中で女の幽霊が包丁を持って立っているところを見たそうです…先生、鑑定をお願いします!」
最後に鑑定する写真は、同じ視聴者が送ってきた3枚の写真だった。
「1枚目は家族4人が写った寝室の写真。2枚目は寝室で遊ぶ子どもたち撮影した写真。3枚目は寝室で眠っている父親を子どもたちがふざけて撮影した写真。すべて同じ家の寝室で撮影された写真みたいです。奥に写っている『押し入れ』に注目してください…」
同じ家の寝室で撮影された3枚の写真。一見平和な写真に見えるが、奥に写っている押し入れの中から「得体のしれない者」が家族を覗いている。
「押し入れの中から、ニヤニヤと笑みを浮かべた女が家族を睨んでますねぇ…先生!これは一体!?」
霊能力者が3枚の写真を手に取ると、神経を集中させながら鑑定を始めた。
「んんっ?う~ん…あれ…?」
霊能力者は写真を見つめながら、困ったような顔をして何度も首をかしげている。
「この写真…たぶん本物です…」
震える手で写真を俺に渡してくる霊能力者。そんなにヤバい写真なのか?
「やっぱりですか!これって悪霊ですか?それとも地縛霊とか?」
霊能力者は俺の質問には答えず、少し焦った様子で鑑定結果を話し始めた。
「いや…あの…霊視した結果…まったく霊の気配を感じ取ることができませんでした…この写真に写っている女は霊ではないと思います…えっと…たぶん本物です…」
「…えっ?」
意味不明なことを言う霊能力者。霊じゃないのに本物。何言ってんだこいつ。
「霊じゃないんですか?でも本物…どういうことっすか?」
霊能力者は震える手で写真を指差すと、怯えた表情でこう言った。
「だから霊じゃないんですよ…つまり…生きている人間です…霊体ではなく、そこにいるんですよ…!」
俺は写真の女をもう1度見た。不気味な笑みを浮かべた写真の女を…
「じゃ…じゃあっ!?この女は…!?」
「はい…『本物』です」
後日、心霊特集は無事放送されることになったが、この偽物の心霊写真だけはカットされた。収録が終わると、スタッフがすぐに写真を送ってくれた視聴者へ電話で連絡をとってみたが、電話が通じることはなかった。あの家族は今どうしているのだろうか。放送されている番組を見ながら、俺は煙草を適当にふかしていた。
「えぇ…番組の途中ですが、速報です。先程S県H市にて家族4人が何者かに刺殺される事件が発生しました。犯人と思われる女は、現在も逃走中とのことです。近隣の皆さまはくれぐれも注意してください。現場にスタッフが向かっているとのことで、中継をお願いします。現場の状況については…」