第8話
ここまではよかった。
だが、力を使い果たしたかのように問題の数学と英語を残し動きが止まった。
「うぅ〜〜〜ぅっ、もう無理ぃ〜」
「いい感じに解けてきたじゃん。もう少しだからさ?」
「もう疲れちゃったぁ〜…」
花凛はペンを手から離し、机に寝そべる。
どうしたら、やってくれるんだ?
やはり、教え方のもんだいか?
それとも集中力が切れたか…?
進める順番を間違えたと後悔するも、もう時間は戻る事はない。
一旦休憩入れるか?
いや、そんなことやっていたら、いつまで経っても終わらない。
かと言って、このまま続けても時間の無駄だ。
それならいっそ、休憩入れて集中し直してもらった方が、効率はいいだろう。
「しょうがない。10分間休憩だ、」
「いいの?」
休憩の一言で復活したかの様に、目を輝かせて、こっちを見てくる。
そんなキラキラした目は直視出来ない。
慧は花凛から目を逸らす。
見れるとおかしくなりそうになったからだ。
変な気を起こすって意味では、おかしくなると言う表現は適切な表現だろう。
「10分だけだからな?」
「ふあぁーい」
返事が変だと思い、逸らしていた花凛に目を向けると、勉強しながら少しずつ摘んでいたお菓子。
正確には、帰りにコンビニで買った海苔で巻いた煎餅を口一杯に放り込んだのか、リスみたいに頬が膨らんでいた。
か、かわいい。
そう思ってしまっても、仕方ないだろう。
いや、そうじゃない。
そんなことより、どう残りを進めていくかだ。
同じやり方では、多分すぐに止まるだろう。
やはり、わからないところだけを教えるのは骨が折れる。
なぜなら、わからない所がわからないからだ。
このパターンは、そういう事だろう。
ここは答えを見せながら、解き方の解説する方が早いし無難だ。
よし、やってみるか………。
一問一問教えながら解いていく。
時間は多少掛かるものの理解できればちゃんと解けてはいる。
何故だか感心してしまう。
数学の課題を終わらせノーストップで英語の課題を片付ける。
単語…自体は一応問題はない。
問題は、長文を読み解く力か…。
長文は俺も苦手だからどう教えればいいのかわからない。
どうしても、日本語的に考えてしまう。そのせいで、よくわからない日本語になって、それを解読、変換するのに時間を要する。
いや、わかっては居るんだが、どうも癖になっていて治すのに苦労しそうで手を付けらてない。
こればかりはどうしようもない。
ん?いや、出来ているな…。
時間は掛かるものの、噛み砕きそれを組み立てられている。
これ、俺が教える事なくね?
集中力を解くのはよくないと思うが、自分との対話で上手く出なそうで一旦咳払いを入れる。
「英語は問題なく解けているよ」
「えぇ?本当!?」
プリントから目を離し慧に目を向ける。
「ほんと、ほんと…。俺よか出来てるよ。教えて欲しいくらいだ」
気休めでも褒めておこう。これを機に英語に抵抗なくなってくれれば、より教えやすくなるし、俺の勉強にもなる。
「へええ。そうかなぁ〜…?」
花凛は照れながら頭を掻いている。
か、かわいい…。
口元が自然とニヤけてしまう。
いや、ダメだな。バレないようにしないと、こっちが恥ずかしい。
「んじゃあ、この調子でやっていくかぁー」
「はーい!」
時間は少し掛かったからなんとか課題を片付ける事ができた。