第7話
まずはこれをどう手伝うべきか…。
フゥ〜っと、深いため息が出る。
ただ、これらを写させるだけなら簡単だ。
だが、いや、それでいいのか?
花凛の事だ。
写しただけだと提出したはいいが、
その後どうなるかわかったもんじゃない。
だからと言って、ちゃんと一からやったとして時間が掛かるのも必然。俺も自分のために時間を使いたいが…。
いや、テストも近いし、少しでも勉強させられるならそれもありか?
どうせ、テスト期間にも泣きついてくるに決まっているのだから…。
あ、どっちにしろ泣きついてくるんだよなぁ…。
………。
「教えてやるから自力で解いてみたら?」
「えー、無理無理、絶対間に合わないよ〜」
「一回授業でやってんだから大丈夫だって」
「…………、」
口を尖らせ、無言の抵抗を花凛はする。
「はぁ〜、しょうがない。今回だけだからな!」
慧はそう言い、鞄からメモを取り出し白紙の紙をペリッと切り離しその紙を花凛の前に置いた。
その行動にキョトンと花凛は目を丸くする。
それもそのはず。
何故ならこの流れなら課題を見せてもらい、ただ写す。その流れのはずだった。
「頓知?」
「はぁ?頓知じゃねーよ!何か欲しい物を3つ書いて、頑張ったらその頑張りに応じた物を買ってやる!」
「えー、悪いよ」
花凛はメモを返すように慧の前にそのメモ用紙をスライドさせた。
「いつも奢って〜!とか、言ってるだろ!まぁさっき俺は奢ったんだが」
慧も同じように花凛の前にメモ用紙を返す。
「それは……」
「大サービスだ!いいから貰っとけよ」
「いいのいいの…!いらないの!さっきも奢ってもらったし、」
「じゃあ!ちゃんとやるのか?」
「それは…」
また、花凛がシュンとする。
「わかったよ!じゃあご褒美は俺が決める。あと、国語と地理、化学は見せてやる!これは教科書から抜き出しが多いから、俺の見ても同じだろ。ただし、後でちゃんと教科書には目を通す事!」
「いいの?」
「ああ。だけど、数学と英語、あと反省文はやり方教えてやるから自力でやれよ」
慧は指をピンッと張り花凛を指差す。
勿論ドヤ顔で。
そんな慧に花凛は潤んだ目で、
「うん!」
と、一言だけ返した。
俺は鞄からそれぞれ科目ごとに分けられ整理されたファイルを花凛に手渡し、自分の課題も取り出す。
優先度的には数学、英語の順番で終わらせていくのがいいが、俺も自分の課題を終わらせたい。
それなら国語や地理、化学の写すものを先にやらせ数学と英語は集中して教える。その流れが一番やりやすいだろう。
俺の課題が終わるまでの時間稼ぎだ。
自分の課題を進めながら、たまに花凛の様子を眺め、ちゃんと進んでいるかをチェックしする。
「俺の課題が終わる前までに終わらせる気でやれよ〜!」
「えぇ?そんなの無理だよぉ〜…」
絶望に染まり、ペンが止まる。
まぁその反応もそのはず、今日の課題はいつも以上に少なく、ほんの五分十分あれば、終わる様な内容。
休み時間中に終わらせる事も出来たが、なんせ、眠気やコイツに構っていたから時間が取れなかった。
「ほら、ペンを動かせ!やらないなら帰るぞー」
「いや、ダメェ〜」
帰る。その言葉に反応したのか、ペンを持ち直し、ものすごい勢いで進んでいくのがわかる。
これは俺も、うかうかしてられないな。