第5話
いつもの帰り道を後ろ向きに歩く花凛と自転車を押す慧がいた。
「おい、前見て歩けよ。危ないだろ」
「だって、慧が課題手伝うって言ってくれたから嬉しくって…」
前を見ずに慧に笑顔を向ける。
「あっそ。」
素っ気ない反応をするが、心臓は激しく波打ち、今にも口から出そうだった。
それを抑えるためにも深く深呼吸をし、空に目を向けボソッと呟いた。
「え〜〜、なに?聞かせてよ〜」
「なんでもいいだろ。それより前!」
そう言い、指で前を指す。
「はぁ〜い…」
渋々前を向き俯く。
明らかにテンションが下がっているのを感じる。
ハァーと、深いため息を吐き、どうしようか考える。
テンション下がった状態で課題をやっても進まないだろうし、
いや、コンビニでお菓子を買っても…。
ん〜。甘いものも…それならお菓子の方が…。
……………。仕方ない………。
「コンビニでも寄って帰るか?」
「え!いいの!?」
コンビニの一言で、こっちを向き目を輝かせてくる。
もしかして、最初から…。いや、考えすぎか。
「なら早くコンビニ寄って、課題片付けんぞ!」
「はーい!」
思ったより元気な返事が、返ってくる。
テンションが戻ったのはいいが、逆に俺のテンションが下がっていく。
あんま、お菓子好きじゃないんだよな…
自分で言って置いてだが、渋々花凛の後に続きコンビニに入った。
………。
慎重に吟味する花凛を待つ。
「まだ決まんないのか?」
「うーん。もうちょっと待って…」
かれこれ、10分は眺めて迷っていた。
流石にイラつきが出てくる。
花凛は、お菓子を見て、迷いながら日用品のコーナーも見始めた。
「いやいや、関係ないコーナーまで見んなよ!お菓子!お菓子買うんだろ?」
「そうなんだけど、わかんなくなっちゃって…」
あー、まずい。これは明らかにテンションが…。
いや、なんで、俺は花凛のメンタルケアまでしないといけないんだ?
仕方ない。乗りかかった船だ。
「どれと、どれで迷ってんの?」
「えっとね〜。このチョコのやつと、この海苔の付いたお煎餅のやつ…」
「両方買えば?」
「もう今月お金なくて」
いや、じゃあなんで寄ろうと思った…。
「片方なら買えるんだけど、見たら迷っちゃって」
「仕方ない。俺が片方出してやるよ」
「いや。慧に出してもらう訳にはいかないし、」
「じゃあ条件付きならどうだ?」
「条件?」
「そう。課題全力で終わらせること!これならいいだろ」
花凛の目の前ににビシッと指を刺して見下ろす。
かっこよく決まったか!
そんな事を思い、指を刺したが、この後のどうしたらいいか考えていなかった。
花凛はポカンっと、口を半開きにし、固まってしまっている。
照れを花凛に刺した指と共に後ろに隠す。
「んな訳で、ほら、こっちは出してやるから、早く買えんぞ!」
俺は花凛の手から煎餅を奪い取りレジへと向かった。