第2話
バッタンッと玄関のドアが最後に音を立て閉まる。
それを確認する事なくいつものように俺はズボンのポケットに入っている自転車の鍵を取り出し、鍵に付いているリングに人差し指を通しクルクルと回しながら自転車に向かい少し錆びた鍵を指で助けながらカチャッと開けた。
スタンドを上げ自転車の後輪を地に下ろす。
最近タイヤに空気を入れてやったからか、数回気持ちいいバウンドを感じ、自転車に跨る。
ペダルを漕ぎやすい位置に移動し、力よく漕ぐと軽快な走り出しを始めた。
風を切るのを感じながらいつもの通学路上を走る。
自分のちょっと伸びた髪が風でなびき、前から出ているアホ毛が後ろに流れる。
(寝癖、大丈夫かな?)
そんな事を考えながら髪を手櫛で撫でながら十字路の
曲がり角を曲がり少し行った所で小走りで頑張っているの隣の席の女子高生を追い越す。
彼女は黒髪ハーフアップショートで、後ろ髪の一部を茶色に染めて目立たないように上手く隠していた。
「おっさきぃ〜」
片手を離し手を軽く上げて彼女にいつものように手を振った。
「あ!ずるい!乗せてってよ」
朝にも関わらず相変わらずな元気な声が聞こえる。
「や〜だよ!、んじゃ〜な〜」
そう彼女の方に振り向き手を振った。
一瞬彼女が頬を膨らますのが見え心臓がドクンっと音を立てる。
……。
いや、そんな事ないな…。
校門をくぐると、学校の時計が目ちょうど8時50分を指していた。
「10分前か…まぁまぁだな〜(寝坊した割には)」
そんな事を呟きながら駐輪場に自転車を止め、また、自転車の鍵のリングに指を入れクルクルと回しながら、廊下を我が物顔で歩く。
「今日は少し遅めだな!寝坊か?」
スポーツ刈りが板についている基が笑いながら聞いてくる。
「ほっとけ!寝坊だよ!」
「おいっ!昨日はお楽しみだったのか?」
長い前髪を上にかきあげ、脇に余った髪をピンで固定した祐儀が嫌味っぽくからかってきたが、
俺はそれに乗っかっておく。
「まぁーな!お前らも早く卒業できるといいな」
「えっ!嘘だろ…。なぁ…」
後ろから祐儀の絶望的な声が聞こえるがここはほっておこう。
鼻歌を歌いながらいつもと同じ場所の教室に向かうが、毎回入る前に何故か自分のクラスプレートを確認してしまう。
今日も一瞬チラッと確認してから教室に入った。