おーい、耳長!
30分程度のクオリティだけど、文字数もそんなに無いのでサックリ読めますよ!
「おーい、耳長!」
「私を耳長と呼ぶんじゃない!」
その日もその少年はやってきた、只人の少年だ……妖精族である自分とは違ってひ弱で、頭も悪く、長くも生きられない……ただ他の獣と違って〝言語〟を操れるだけの下等生物だ。
そんな下等生物に自身の身体的特徴……それも種族としてありふれた箇所を揶揄したような呼び名で呼ばれるのは酷く不快だった。
私にはアールブヘルム・ランレン・クルメル・オーギュスト・ヘル・クランメルという由緒正しき名があるのだ……このハゲ猿め。
「今日も弓矢を教えてよー」
「上位存在に教えを乞う態度ではないな、幼体よ」
まったくもって図々しい……この少年は上位存在である私を敬いすらしないのに、一丁前に技術だけは盗もうとするのだ……やはり蛮族は好かない。
「おーい、耳長!」
「私を耳長と呼ぶんじゃない!」
その日もその青年はやってきた、只人の青年だ……妖精族である自分とは違って少し弱くて、頭も凡庸、長くも生きられない……ただ他の獣と違って〝言語〟と〝弓矢〟を操れるだけの下等生物だ。
そんな下等生物に自身の身体的特徴……それも種族としてありふれた箇所を揶揄したような呼び名で呼ばれるのは酷く不満だった。
私にはアールブヘルム・ランレン・クルメル・オーギュスト・ヘル・クランメルという由緒正しき名があるのだ……この丸耳め。
「今日も森について教えてよー」
「上位存在に教えを乞う態度ではないな、亜成体よ」
まったくもって図々しい……この青年は上位存在である私を敬いすらしないのに、一丁前に知識だけは盗もうとするのだ……やはり他種族は好かない。
「おーい、耳長!」
「私を耳長と呼ぶんじゃない!」
その日もその壮年はやってきた、只人の壮年だ……妖精族である自分とは違って力強くて、頭も賢く、長くは生きられない……ただ他の人と違って〝言語〟と〝弓矢〟と〝知識〟を操れるだけの人間だ。
そんな人間に自身の身体的特徴……それも種族としてありふれた箇所を揶揄したような呼び名で呼ばれるのは酷く悲しかった。
私にはアールブヘルム・ランレン・クルメル・オーギュスト・ヘル・クランメルという由緒正しき名があるのだ……この朴念仁め。
「今日も一緒に飯を食べようよ」
「上位存在にものを頼む態度ではないな、成体よ」
まったくもって図々しい……この壮年は上位存在である私を敬いすらしないのに、一丁前に私の時間だけは盗もうとするのだ……やはりコイツは好かない。
「……おーい、耳長」
「……私を耳長と呼ぶんじゃない」
その日もその老体は寝たきりだ、只人の老体だ……妖精族である自分とは違って貧弱で、頭も悪い、もう長くは生きられない……ただ他の人と違って〝私の時間〟を好きに共有できるだけのオトコだ。
そんなオトコに自身の身体的特徴……それも種族としてありふれた箇所を揶揄したような呼び名で呼ばれるのは酷く寂しい。
私にはアールブヘルム・ランレン・クルメル・オーギュスト・ヘル・クランメルという由緒正しき名があるのだ……この馬鹿者め。
「……今日も一緒に……」
「上位存在にわざわざ頼む事ではないな、老体よ」
まったくもって図々しい……この老体は上位存在である私を敬いすらしないのに、一丁前に私の心を盗むだけ盗んで知らん顔をするのだ……やはりお前は好かない。
二人の関係性は結局どんな感じだったのか……ご想像にお任せします。