411 ホウジョウ様だから・・・
無事に魔法学園祭が終わり、ジーモンとガスパールは魔法飛行艇の中で話していた。
二人は魔法学園祭に視察に行く、デイジーのサクラ魔法食堂の小型魔法飛行艇「スパロー2号」に便乗してマジェストンへ行っていたのだった。
「いやはや、全くシノブの奴には驚かせられるのう」
「全くじゃ」
二人は魔法学園祭で紙飛行機や綿菓子を見て驚いていた。
その二人にスパロー2号に同乗していたデイジーも、呆れ返ったように賛同する。
「ええ、全くです。
わかっていたとはいえ、魔法学校へ入学してからだけでも、アイスクリームにチョコレート、フルーツパフェ、それに今回の綿菓子と、こうもポンポンと次から次へと色々と考案されると、もはや驚く感覚も麻痺して参りますわ」
「さもありなん」
「全くじゃ」
「でも今回、後輩のフローラにそういった場合、どう言えば良いのか教えられましたわ」
「ほう?どう言えば良いのじゃ?」
「うむ、それは興味深いのう」
その二人に対してデイジーは一言、言った。
「ホウジョウ様だから・・・だそうですわ」
そのデイジーの言葉に二人は爆笑した。
「くっくっく・・・まさにその通りじゃの!」
「ひゃっひゃっひゃっ!確かにその表現は的確じゃ!」
「ええ、私もそう思いますわ」
三人はひとしきり笑うと、ジーモンが話を続ける。
「しかし全くあの綿菓子には驚いたのう・・・」
「ええ、折り紙や他の物にも驚きましたが、今回の一番の驚きはあの綿菓子ですわ」
「ああ、あのジャベックというか、器械を持ってきたのか?」
「ええ、サクラ魔法食堂の店員たちの参考にするために、二台ほどホウジョウ様からいただいて参りました」
「では、その試運転の時に、わしらやミヒャエルも同席させてもらえないかのう?」
「おお、そうじゃな、ミヒャエルの奴も今回は行けなかったから、見せてやりたいのう」
「ええ、承知いたしました」
「うむ、ありがたい」
「頼んだぞ」
ロナバールに着いたデイジーはその視察の報告をクレインとカーティスにする。
「・・・そんな訳でまたもやホウジョウ様は突拍子もない御菓子を御作りになって、魔法学園祭はそれで大騒ぎでしたわ」
デイジーの説明を受けてクレインとカーティスが唸る。
「・・・ふむう、その「綿菓子」か?
一体どういう代物なんだ?」
「ああ、是非見てみたいものだな」
「私もあなたたちがそうおっしゃると思って、ホウジョウ様に頼み込んで、研修用としてその器械を二台ほどいただいてきましたわ。
もちろんそれだけでなく、作り方も教わって来ましたわ」
「でかした!デイジー!」
「ああ、それは早速見てみたいな」
「ええ、でもジーモン様とガスパール様とも約束をしているので、総督閣下を御呼びして、御前調理を行いますわ」
「わかった」
そして数日後、実際にミヒャエルを呼んで綿菓子の御前調理を行う。
「ふむ、これがそのジャベック、いや器械とやらか?」
ミヒャエルの質問にデイジーが答える。
「はい、そうです。
では早速作ってみたいと思います」
「うむ、よろしく頼む」
ミヒャエルやサクラ魔法食堂の店員たちが見守る中、デイジーは手際よく綿菓子を作り始める。
回転する中央の部分から糸状の砂糖が噴出して見る見る間に綿菓子を形成して行く。
それを見たミヒャエルが驚く。
「ほほう!これは確かに凄い!」
「ええ、こんな風に棒でからめて作って行くのです」
もう一台の綿菓子器械でデイジーと一緒に行った店員が、やはり綿菓子を作って見せる。
それを見ていたクレインとカーティスも興奮して叫ぶ。
「これは見事な物だな!」
「ええ、話に聞いた以上に実際に見ると、まさに驚きです!」
そして出来上がった綿菓子を、まずはミヒャエルとクレインが手に取る。
「しかし・・・これの材料は何なのだ?
先程、その中央部分に砂糖のような物を入れていたように見えたが・・・?」
デイジーはこの時のためにわざわざ綿菓子の材料を言わないでおいた。
「ええ、御明察の通り、あれは砂糖ですわ」
「ふむ、それ以外の材料は?」
そのクレインの質問にデイジーはおかしくて笑いそうになるのをすまして答える。
「いいえ、砂糖だけです」
「は?砂糖だけ?」
デイジーの説明に驚くクレイン。
そしてカーティスもデイジーに突っ込みを入れる。
「おいおい!デイジー!いくら何でもこんな物が砂糖だけで出来る訳がないだろう?」
「いいえ、本当に砂糖だけですわ」
「そんな馬鹿な!・・・そんな事が出来る訳が・・・」
「でも、出来てしまったんですの。
何しろホウジョウ様ですから」
すまして後輩から教わったその言葉で、全てを説明できると言わんばかりのデイジーに、クレインとカーティスが頭を横に振って答える。
「・・・それを言われるとすべてに納得して、何も反論できなくなる自分が怖いよ・・」
「ああ、全くだ。そしてこれ以上説得力がある言葉もないな」
それを聞いていたミヒャエルも面白そうに大笑いして話す。
「ふぉっふぉっふぉ・・・ホウジョウ様、シノブだからか・・・
確かにこれ以上説得力のある言葉はないのう・・・」
「全くじゃのう・・・」
「ひゃっひゃっひゃ・・・確かに反論の余地がないじゃろう?」
そのミヒャエルにジーモンとガスパールも賛同する。
そしてクレインとカーティスもうなずく。
「確かにその言葉には納得せざるを得ませんね?」
「全くだ!何も説明をしていないのに、何よりも説得力がある!」
以前からそういう傾向はあったが、これ以降、シノブに近しい者の間では、シノブが常識ハズレな事をしても、その全てが「ホウジョウ様だから・・・」「シノブだから・・・」の言葉で納得するのが常となる。
それは良いにつけ、悪いにつけ、広がっていったのであった。
こうしてロナバール総督閣下たちは綿菓子に感心しながら食べるのであった。
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無事に魔法学園祭も終わり、生徒会や各部の引継ぎの時期が来た。
生徒会の面々は変わらずに、生徒会長はフローラ先輩のまま、副会長もミレイユ先輩で、そのままだった。
窮理部もフェルマー部長が引退し、ローレンツが部長となった。
そして俺は窮理部の副部長になる事となった。
「副部長か・・・」
俺が少々当惑すると新部長たるローレンツが話す。
「当然だろう?
シノブはこれだけの実績があるのだし、来年以降の事も考えれば当たり前さ」
そしてフェルマー部長やスチュー、ギュンツ、シルビアも賛同する。
「そうだな」
「拙者も賛成でござる」
「ああ、俺もそう思うよ」
「私も賛成です」
一同の意向もあり、俺が窮理部の副部長となる。
一方、料理部でも世代交代があった。
「え?ホウジョウ様はすでに窮理部の副部長を引き受けてしまってらっしゃるのですか?」
「そうだけど、何かまずかった?」
「ええ、生徒が各部を掛け持ちするのは別に構わないのですが、各部の役職の掛け持ちは許可されていないので・・・」
「ああ、そうなんだ?
でもそれはもっともだと思うな」
「・・・せっかくマルセルの次はホウジョウ様を部長にと思ってましたのに・・・
ローレンツ様に先に手を打たれてしまいましたわ!」
「全くです!」
フローラの案にマルセル部長もうなずき、他の部員たちもうなずく。
「いや、でも僕はすでに「料理部最高顧問」とかいう偉そうな肩書きをもらっているのだから、部長まではないんじゃない?」
「それもそうですわね・・・」
結局、料理部内での相談の結果、新部長は四年生ながらヘンリーがなり、同じく副部長はイロナが任命される事となった。
二人とも元々サクラ魔法食堂の店員で料理の腕は抜群な上に、地味ながら俺の黒子役に徹して色々としていた事を評価された結果だ。
「それにこの二人ならばホウジョウ様の指示を仰ぎ易いですからね?」
そのフローラの言葉で決定だった。
う~む、何だか俺ありきな役職決定だが、仕方がない。
こうして各部の部長も決まり、そろそろ季節は冬に移り変わって行った。




