表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧・オネショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!   作者: 井伊 澄州
第1章 オネショタな俺が転生したらエロフに騙された!
409/480

381 意外な出会い

 魔法高等学校に入学して3ヶ月ほど経って、俺もすっかり学校に慣れて来た。

いわゆる「普通の学生」を目の当たりにして、自分やアンジュたちがいかにとんでもない存在かも自覚するようになって来た。


そんな時、俺は気になる学生がいた。

最近、校庭のベンチに座って、毎日ため息をついている女子学生だ。

以前、エレノアの迷宮での特別授業に参加していた6年生だ。

あの時は妙にレベル上げにこだわっていたので、この生徒の事は俺も覚えていた。

あれ以来、その生徒はいつも俺を見ると、うらやましそうにしたり、恨みがましい顔をしたりするので、気になってしょうがなかった。

あまりに気になるので、ある日、俺は思い切って、そのため息をついている女子学生に話しかけてみた。


「どうしたんです?確か、ポルテ先輩でしたっけ?」

「あ、ホウジョウ君?」

「何か毎日ずいぶん悩んでいるみたいじゃないですか?」

「まあ、その通りなんですが・・・」

「何をそんなに悩んでいるんです?先輩」

「それは、まあ、自分の才能の無さというか、運の無さというか・・・」

「才能の無さと運の無さ?どういう事ですか?先輩」

「いえ、こればっかりは話しても、どうしようもない事で・・・

ところでその先輩っていうのはやめてくれませんか?

あの天賢者のエレノア先生を奴隷にしていて、ロッシュ生徒会長を配下にして、ローレンツ様とすら対等に話すあなたから「先輩」とか言われると寒気がします。

普通にポルテと言ってください。

敬語も要りません」

「そ、そうなんだ?」

「ええ、そうですとも」


そこで俺は改めて聞いてみた。


「え~と、そ、それでポルテは何をそんなに悩んでいるの?」

「・・・あなたに話してもせん無き事ですよ」


おう!せっかく改めて聞いたのにこの仕打ち!

そう言ってポルテはまたため息をつく。

俺は余計な事だとは思いつつも、もう少々話してみる。


「どうかな?話したら何か解決の糸口が見つかるかも知れないよ?」

「そうですね・・・実は私、もう1年も学士の試験に受からないので悩んでいたんです」

「学士の?」

「ええ、正確には使役物体魔法の三級ですが」

「それにどうしても受からないと?」

「そうなんです」

「ポルテはここに入ってどれくらいになるの?」

「もうすぐ3年になりますね」

「ここの高等学校って、卒業できるのが3年位かかるのが普通だって聞いたよ?

それだったらまだ全然問題ないんじゃないか?」

「・・・入学して2ヶ月で学士号の単位を全て取った人に言われたくないですね。

嫌味ですよ、それ」


むむむ、思わぬ反撃に俺が怯む。

そうか、他人からはそう思われても仕方がないな。

この生徒が俺の事を睨んだり、うらやましそうに見ていたのはそういう理由か?


「う、それはすまなかった。そんなつもりで言ったんじゃないんだが」

「いいんですよ、むしろ私の方が嫌味でしたね。すみませんでした。

あなただって努力して資格を取ったのに、まるで濡れ手で粟みたいな言われ方をしたら心外でしょう」

「いや、別にいいよ」

「ふう・・・しかし確かにイライラしているのかも知れませんね。

あなたの言う通り、誰かに話した方がさっぱりするのかも知れません」

「うん、そう思うよ」

「じゃあ、聞いてくれます?

でも、私、イラついていますから、愚痴や嫌味を言うと思いますよ?

それでもいいんですか?天才賢者候補さん?」

「う、早速、何か強烈だな・・・まあ、いいさ」


俺がそう言うとポルテは少々気分が晴れた様子で、笑いながら話し始める。


「あはは・・・実は私、ある東の小さな村の出身なんですけど、そこで魔法の才能があるって言われて、大きな町に出て魔法の勉強をしたんですよ。

そうしたら結構とんとん拍子で、進級できて、3年かそこらで、中等学校まで卒業できたんです」

「うん、凄いじゃないか」

「ええ、普通だったら初等学校と中等学校で5年くらいはかかりますからね。

自分でも魔法の才能があると思っていました。

いえ、実はそれは今でも思っています」

「それで?」

「でも、そこまでだったんです。

中等魔法学校を卒業した私は、このマジェストンの高等学校に来て、そこで終わりました」

「終わった?何で?」

「どうしても魔法学士の資格が、正確にはさっきも言ったように、使役物体魔法の三級が取れないんです」

「他の魔法は?」

「それ以外は全部三級を取得しました。

いくつか二級まで取った物もありますし、冷凍魔法は一級を取りました」

「凄いじゃないか!

それなら学士号さえ取れれば、すぐに修士じゃないか!

使役物体魔法が苦手なのかい?」

「いいえ、そういう訳ではないんです」


学士号、すなわち高等魔法学校卒業資格を取るには、全ての魔法で三級を取得しなければならないが、修士号は学士の称号を持っている者が、1つでも一級の魔法を取得すればもらえる。

つまりこの子は使役物体魔法三級さえ取得できれば、即、高等魔法学校を卒業の上に、魔法修士号まで取れる状態なのだ。

この年でそこまで出来るとは、確かにこの子は魔法の才能があるのは間違いない。

一体何を悩んでいるのだろうか?


「では何で?」

「私の魔力量の問題なんです」

「魔力量?」

「ええ、私は魔法感覚は魔法使いとして申し分ないのですが、魔力量が魔法使いとしては御世辞にもあるとは言えないのです」

「え、ちょっと君の数値を鑑定で見ても良いかい?」

「どうぞ」


俺は彼女の魔力量を見てみた。

最大魔力量は2702・・・まあ、確かにあまり魔法使いとしてはあるとは言えないが、それほど少ないとも思えない。


「そんなにひどい数値だとは思えないが?」

「私が魔法レベル82でもですか?」

「え?」


俺は魔力量だけを見ていて、うっかりレベルは見損なっていた。

確かに魔法レベル82で、最大魔力量2702は厳しい。

いや、厳しすぎる!

あのメディシナーで魔力量に悩んでいたルーベンさんでさえ、レベル50で魔力量3500は保持していたのだ。

しかもあの人はただの魔士で、魔法士ですらなかったのだ!

キャロルなんぞはレベル67で6万近く持っている!

まあ、あの娘は魔人なので、元々魔力量は圧倒的に多いのだが・・・

それにしても魔法学士希望ならば、最低でも10000は欲しいところだ。

そもそもレベルは82もいっているのに、何でこんなに魔力量がないんだ?

まてよ?

俺は考えて、もう一度彼女の数値を、それも才能値を見てみた。

すると魔法感覚は73もあるのに、魔力の才能は3しかない。

なんと!たったの3だ!

これは魔法使いどころか、一般人でも厳しい!

平人の魔力平均は15程度なので、平均以下だ!

ルーベンさんやクラウスもこれに近かったが、この娘はもっと極端だ。

これは確かに魔法使いとしては相当厳しいだろう。

魔法感覚と比べてあんまりだ!

俺が驚いていると、その娘が話しかけてくる。


「わかったでしょう?」

「うむ、しかし魔力量が低くても、これだけ魔法感覚の力があれば何とか・・・」

「私もそう思っていました。でもダメなんです。

使役物体魔法の三級・・・わかるでしょう?」

「あ・・!」


それを言われて俺にもわかった。

使役物体魔法の三級はジャベックを作れるかどうかの試験だ。

使役物体魔法というのは元々魔力量を大量に消費する魔法なのだが、それが中位レベルとなると極端に消耗が多くなる上に、術式も恐ろしく複雑になる。

その二つがタロスを使う魔法使いは多いのに、ジャベックになると極端に使用者が少なくなる原因の一つだった。

しかし高等魔法学校を卒業させる以上、使役物体魔法でジャベックを作るのは必須だった。

それが使役物体魔法の三級試験なのだ。

だが、ジャベックを作動させるには最低でも魔力量が3000はないと無理だ。

それはつまりこの子が、例え術式が完璧だとしても、ジャベックを作動させる事が出来ない、すなわち使役物体魔法の三級試験に合格できない。

そしてそれは学士の称号、すなわち高等魔法学校の卒業資格は全ての魔法で三級を取る事になっているので、この子は魔法学士の称号を得られない事になる。


「そうか・・・ジャベックか・・・」

「そうなんです。どんなに術式が完璧でも、あなたも御存知の通り、ジャベックを作動させるには最低でも魔力量が3000は必要なんです。

だから私には無理なんです」

「しかし、魔法レベルを上げていれば、時間はかかるかも知れないが、いつかは3000を越えるだろう?そうすれば・・・」

「私もそう思ってこの1年頑張ってきたんです。

でもこの1年でレベルは5も上がったのに増えた魔力量はほんのわずか・・・

それでこの間は噂に聞いたエレノア先生の特別授業を受けてみたのです。

確かにあなたのおかげで一気にレベルは5もあがりました。

それでもだめだったんです」

「そうか・・・」


そういう訳だったのか?

これでこの子がやたらとレベル上げにこだわっていた理由がよくわかった。


「このペースでは魔法レベルが100以上にならないと、おそらくジャベックは作動不可能でしょう」

「それでも時間がかかればできるのなら・・」


その俺の言葉に彼女は再び首を横に振る。


「それがダメなんです。

私は実家にここの学費と生活費をだしてもらっているのですが、いつになったら卒業できるのかと聞かれています。

それに対して私もはっきりと答えられません。

いつになるかわからないのでは、さすがにこれ以上は諦めて帰って来いと言われるのは間違いありません」


高等魔法学校の学費は1年で金貨10枚かかる。

それに1年間の生活費を含めれば、どう少なく見積もっても、1年で金貨20枚以上はかかるだろう。

それはこの子の家にとって確かに大きな負担だろう。


「私の実家は田舎とは言え、村長をしているので、それなりに余裕はあるのですが、さすがにこの後何年かかるかわからないのに、毎年金貨を何十枚も使わせる訳にはいきませんしね。

父や兄、それに甥っ子にも期待されてここに来たのですが・・・」


それは確かにそうだろう。


「アルバイトとかをやる訳にはいかないのかな?」

「焼け石に水です。

それに私が何かバイトをするにしても、魔法しか才能が無いですから、それに関するバイトでないと、とても稼げません。

だけどここでは中等魔法学校卒業程度の魔道士は掃いて捨てるほどいるので、バイト程度では大した稼ぎが期待できないんです。

ここでは高等魔法学校を出て、やっと1人前という風潮がある位ですから。

もちろんどこかで正式に魔道士として就職すれば稼ぎにはなるでしょうが、学生の身分で勉強がある以上そういう訳にもいきません」

「うう・・・それは確かにねえ」


他の町ならば、中等魔法学校を出た魔道士ならば、十分魔法使いとして通用する。

何と言っても中等魔法学校を出れば、単なる「魔法使い」ではなく、正規の「魔道士」を名乗れるし、魔法の教師の資格もあるのだ。

立派な1人前の魔法使い扱いだ。

日本で言えば、高校を出た後で、短大か、専門学校を出た位の感じだ。

事実シルビアやエトワールさんは中等魔法学校卒だったが、あの大きな町ロナバールでも十分魔道士として活躍していた。

しかしここは何と言っても魔道都市である。

他の町では希少な魔法使いでも、文字通り、町で石を投げれば、魔法使いどころか、魔道士にさえ当たるのだ。

そこで私は魔道士でございと言っても、あ、そう?それで?と言われて終わるのが関の山だ。

それでも正式に就職するならそれなりの仕事があって、高給が取れるだろうが、それでは勉強する時間や授業に出る事は出来ない。

これは確かに困った案件だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ