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旧・オネショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!   作者: 井伊 澄州
第1章 オネショタな俺が転生したらエロフに騙された!
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342 青き薔薇の噂

 俺は友好的に四人組に話しかける。


「こんにちは!皆さん、組合員なのですね?」

「え?ええ、そうです」

「四人で組んでいらっしゃるのですね?

それで全員が黄色い線と言う事は、皆さん全員が魔法を使えるという事ですね?

凄いじゃないですか!」


自分たちの事を棚に上げるようだが、魔法使いの数は少ないので、パーティの全員が魔法を使える組合せは珍しい。

もちろん組合の人間は、遥かに通常の人間よりも魔法使いの割合が高いが、当然の事ながら全員が使える組合せなどはそれほど多い訳ではない。

火炎激愛団のような魔法が使える事が前提の戦団ブリガードは別だが、普通は四人組ならば3人が魔法を使えれば上々と言うところで、2人しか使えない場合も少なくはない。

それでも4人に2人が魔法を使えるならまだ良い方だ。

中には一人しか使えない場合もあるようだ。

そもそも魔法の素養がある者が20人に一人程度しかいないのだから、その点は仕方がない。

もっともこれは五級以下に限った話で、やはり四級以上になるには魔法使える者が多くないと難しい。

だから四級以上だと、仲間内の魔法使いの比率も断然上がってくる。

それでも仲間の全員が魔法を使えるというのはやはり珍しい。

だから六人以上もいるのに、全員が魔法を使える「青き薔薇ブルア・ローゾ」の魔法使いの構成はかなり珍しい方だ。

そういう意味では先程の三馬鹿は全員が正規の魔法士の上に、多少剣が使えるので、自惚れるのも少々理解できる。

それが四人とも魔法を使えるとは中々いない。

しかしその俺の言葉にリーダーの男・・・確かギルバートだったか?が慌てて両手を振って答える。


「いえいえ、魔法を使えると言ったって、全員が一つずつしか使えないのですよ」

「一つだけ?」

「ええ、以前は全く使えなかったのですが、ある事をきっかけにして使えるようになったのです」

「ある事?」

「ええ、我々の人生の分岐点と言っても過言ではありません」

「人生の分岐点・・・それはとても興味深いですね。

差し支えなければ、そのお話をしていただけませんか?」


俺がそう言うとギルバートはうなずいて話始める。


「ええ、構いませんよ。

実は我々は全員このロナバールに近い、ある村の出身でしてね。

そこはよくある貧乏な村で、我々は全員三男だの四男なので、出稼ぎを兼ねてこのロナバールに来た訳なのですよ。

そして御多聞に漏れずに組合員となって迷宮を探索したのですが、そこで一度酷い目に会いましてね。

まあ、何も知らなかった我々が馬鹿だったと言えばそれまでなのですが、ある人間に騙されて、こいつが迷宮で腕を切り落とされる羽目になりましてね。

ロクに治療代もない我々が困っていると、そこで偶然出会った人が無料で治療して、あっと言う間に腕を繋げてくれたんですよ!

しかもその人は怪我をした仲間の慰労のためにと、食事代まで下さったのです!

もちろん我々は固辞したのですが、その方は初心者が困っているのを見過ごす訳にはいかない、困っている時はお互い様、それが上級者の務めだと言って、慰安のためのお金までを我々にくれたのですよ!

聖人と言うのは、まさにあの方のような人を言うのでしょうね!

そして我々に魔法の才能まである事を指摘して去っていったのです。

我々はその方の指摘に従って、魔法を習ってみるつもりになったのです。

その方からいただいたお金で食事をした残りは、そのために使う事に全員一致で決めましてね。

幸い、組合では組合初心者に魔法一つまでなら格安で教えているので、我々は試しにその特典でそれぞれ魔法を習ったら、本当に全員が一つずつ覚える事が出来たのですよ。

まさか本当に我々に魔法の才能があって、使えるようになるとは思いませんでした。

おかげで魔物と戦うのも以前と比べて非常に楽になり、すぐに昇級する事も出来ました。

これも全てその方のおかげですね。

本当にどんなに感謝しても足りないほどです。

あの時に強引に御名前を聞かなかった事が悔やまれます。

魔法を知ってから思ったのですが、あの方の心得はまさに「マギア・デーヴォ」そのものだったのでしょうね」

「なるほど、それは良い話ですね・・・」


俺は自分の奴隷が迷惑をかけたので、お詫びでしただけのつもりだったんだけど、この人たちはずいぶんと良い方向に解釈してくれたみたいだ。

うん、そうだ!

そういう事にしておこう!


あの日、僕は偶然この人たちに出会った!

かわいそうに一人は腕を切り落とされていた!

魔物に腕を切り落とされたらしい。

僕は治療魔法でその人を助けてあげて、親切にお金もあげた!

そうしたらこの人たちは僕に感謝してくれた!

嬉しかった!

と、日記には書いておこう!


俺がそう考えていると、ギルバートが話を続ける。


「ええ、本当に我々は運が良かったと思います」

「私も最初は私の腕を切り落とす羽目になった奴を恨みましたが、そのおかげで魔法が使えるようになったかと思うと、少々感謝しているほどですよ」


そう言って腕を切り落とされた男、確かウォルターか?が苦笑する。


「ええ、私達もこのまま精進して上を目指して行きたいと思います、あ・・・」


突然、それまで話をしていたギルバートが何かを見つけて、どこかを凝視している。

そのギルバートの目線の方向を見ると、そこにはエレノアたちがいたので、俺はちょっと驚いた。

どうやらエレノアたちも何かの用事で組合に来ていたようだ。

アンジュ以外は全員が「青き薔薇ブルア・ローゾ」の紺と金の制服を着込んでおり、エレノアを先頭に颯爽と歩いている姿は、改めて俺が見てもとても絵になる。

絶世の美女でエルフのエレノア、同じく眼鏡をかけてキリッとした知的美女のシルビア、屈強な豪雷、精悍な雰囲気の疾風、そして最後にまだ見習いのような可愛らしいアンジュがトコトコとついて行く。

しかもエレノアはその大きな胸元に透明なアレナック等級の登録証を見せており、シルビアは黄金等級ゴールドクラス、見習いっぽいアンジュですら白銀等級シルバークラスをぶら下げているのだ。

確かにこれは注目を集めるだろう。

う~ん、こうして他人目線で見ても、やっぱりエレノアって格好いいなあ!

うちってやっぱり今からでもエレノアを団長にした方がいいんじゃないのか?

凛として知的なシルビアも格好いい!

紺と金の青き薔薇ブルア・ローゾの制服を着込んだ豪雷と疾風も中々に渋い!

エレノア団長にシルビア副団長、俺はミルキィと一緒に団長補佐で十分だよ!

それでも恐れ多いくらいだ!

自分がこんな素敵なお姉さんたちと一緒に暮らしているなんて本当に信じられない位だよ!

本来だったら俺はこうしてエレノアたちに憧れながら指を咥えて見ていたって不思議はなかったはずだ!

それなのにこの俺があの集団の団長だなんて、こうして他人目線で見ていると、実は夢だったんじゃないか?と思うほどだ!

エレノアは一瞬こちらにチラッと目線を移したが、そのまま俺たちを無視して通り過ぎていった。

俺とミルキィが囮捜査の格好をしているので、話しかけてはまずいと判断したのだろう。

アンジュは一瞬、俺を見て声を上げそうになったが、思い直して無言でエレノアたちについて行ったようだ。

そのエレノアたちの姿を見て、ギルバートたちが興奮して話し始める。


「見ましたか?今の人たち?

私も噂で聞いていただけで、見たのは今日が初めてなのですが、あの方たちは「青き薔薇ブルア・ローゾ」と言って、最近この組合でもとても有名な戦団ブリガードなのですよ!」


え?そうなの?

うちって、いつの間にか、そんなに有名になっていたの?

その説明に俺も返答に困る。


「え?そ、そうなんですか?」


俺が少々動揺していると、この四人は争うように口々に説明をし始める。


「ええ、今先頭を歩いていた方が、おそらくエレノアさんと言って、副団長をしていらっしゃる方です」

「そしてあの眼鏡をかけていた人がシルビアさんと言って、以前は魔法協会の有名な受付嬢だったそうですが、今は団長補佐をしているそうです」


この連中が妙にうちの人員構成に詳しいので俺は驚いた。


「く、詳しいんですね?」

「いえいえ、この程度は組合員なら常識に近いですよ」

「そ、そうなのですか?」


いや、とてもそこまで皆が知っているとは思えないのだが?

だが、ギルバートたちは自信満々の様子だ。


「はい、そうです。

あの男性二人は組合員ではないようですが、同じ制服を着ている所を見ると、やはり青き薔薇ブルア・ローゾの一員で、さぞかしお強いのでしょうね。

それと見習いのような少女が一人いましたが、その少女ですら白銀等級シルバークラスなのには驚きました!」

「全く凄いものです」

「今日はいないようですが、聞いた話によると、後はまだ年若い少年の団長と、狼獣人の少女、それにケット・シーがいるはずです」

「そうだな、今日はきっとその人たちはどこかで別行動をとっているんだろうな?」


うん、まさに今その団長と狼獣人は、君達の目の前で別行動をとっているよ!

格好が全然違うからわからないだろうけどね?

ケット・シーの方は、今頃はきっとサクラ魔法食堂で御機嫌でプリンを食べているよ。

最近はそれがペロンの仕事だからね?

興奮しながら感心する四人に、俺も何となくうなずく。


「ええ・・・そうですね・・・何か・・・凄そうです」


うん、こうして説明されると、俺たちって凄いのかも・・・

確かに言われてみれば、まだうちの制服を着ていない新参のアンジュですら白銀等級シルバークラスなんだしね?

しかしギルバートたちは、さらに興奮して説明を続ける。


「いやいや、凄そうどころではありませんよ?

何しろ聞いた所によると、組合員として登録されたのは、我々と数ヶ月しか変わらないのに、すでに団長と副団長はアレナック等級ですからね!

まあ、我々なんぞと比較する事自体が間違っていますがね。

それに今日はいらっしゃらないようですが、あの青き薔薇ブルア・ローゾの団長は、まだ見た目は幼い少年ながら、一撃であの上位悪魔のマルコキアスを葬ったそうです」

「え?一撃でマルコキアスを?」


それを聞いて俺は本気で驚く。

うん、それ嘘だから!

尾鰭のついた噂だから!

本当は結構苦労したから!

俺はそう心の中で叫ぶが、口にする訳にもいかない。

そして俺の驚きの意味を勘違いしたギルバートたちがさらに話を続ける。


「ええ、そうです。

上位悪魔を一撃とは、まさに驚きですよね?

それに先日はアレナック等級の試験の時に、やはりあっと言う間にカーロンを仕留めたそうです。

全く我々とは比較にもならないですね!」

「ええ、でも憧れます!」

「あやかりたいです」


う~む、そこまでうちに憧れている人たちがいたとは・・・

何だか気恥ずかしい・・・

だってそれは尾鰭がついた大げさな噂の結果なんだもんな。

そして嬉しくもある。

ちょっとファンサービスで、何かしてあげたくなっちゃうな?

もっとも先程のエレノアたちの雰囲気を見れば青き薔薇ブルア・ローゾに憧れるのはわからないでもない。

俺が他人目線で見ても格好いいんだからね?

俺がこの連中の立場だったら、やっぱり憧れていただろう。

俺は改めてギルバートたちに聞いてみた。


「そんなにあの戦団ブリガードは凄いですか?」

「ええ、そうですね」

「あれほど凄い戦団ブリガードは他にそうそうないと思いますよ」


そうか、そうか?

うちはそんなに凄いのか?

嬉しい事言ってくれるじゃねえか!

いいねえ!

兄さんたち江戸っ子だってねぇ?

酒飲みねぇ、寿司喰いねぇ!

・・・と、言ってみたい俺だったが、囮捜査中の手前、そういう訳にもいかない。

うん、でも、うちを褒めちぎってくれたこの連中に何かお礼をしてあげたいな?

俺、煽てられるのに弱いし。



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