333 入学準備 2
すみません。
何か、投降予定日を間違えていたみたいです。
俺たちはサクラ魔法食堂へ行って、食堂組にもマジェストン行きの事を伝えた。
「そういう訳なんだ。
クレインとカーティス、デイジー、それにブリジットとホワイティたちも店の方をよろしく頼む」
「はい、お任せください」
「いよいよホウジョウ様も魔法学士という訳ですね?」
「いや、それがさ、エレノアが言うには最低でも賢者にならなきゃ許してくれないらしいんだ。
しかも3年で賢者になれって言うんだよ?
どう思う?」
俺がぼやいても5人はさほど驚かない。
むしろ当然のように話し始める。
「ほう、3年で賢者に?」
「さすがはホウジョウ様ですわ!」
「ああ、当然だな!」
「その日まで我々も腕を磨いてお待ちしております!」
「ええ、その通りです!」
「やれやれ、君達もかい?
まあ、いいや、ところで来年位にはいよいよメディシナー支店を開こうと思うんだ。
そのための計画書を作っておいた。
これに従って君達も事を進めておいてくれ」
そう言って俺はあらかじめ作っておいた計画書を渡す。
これは食堂の材料の安定供給のために近隣の村に養鶏場などを作る計画や、メディシナーでの土地の確保や支店を作る際の要点を書いておいた物だ。
「はっ、かしこまりました」
「うん、まあ、それほど急ぐ物でもないから1年がかりでゆっくりとやってくれ」
「はい、おまかせください」
食堂部門に今後の事を伝え終わると、俺たちはゴーレム街に行って、シャルルとバッカンさんに挨拶に行った。
店の前にはいつものようにメイリンが立っている。
「やあ、メイリン!
バッカンさんとフレイジオはいるかい?」
「はい、御二人とも店の方にいらっしゃいます」
「わかった、ガルドとラピーダはここで待っていて」
「はっ」
「承知しました」
しかしここでアンジュが驚く。
「えっ?メイリン?
これはまさかジャベックのメイリンなのですか?」
「ああ、そうだよ?
アンジュはメイリンを知っているのかい?」
「ええ、魔道士年鑑でジャベックの名工バッカン氏の特集が組まれた事があるのですが、その中で最高傑作として紹介されていたのがこのメイリンなんですよ!」
「へえ?そうなんだ」
「はい!レベルも高い上に、戦闘だけでなく、家事や日常のほぼ全ての作業をこなし、会話もほぼ人間と同じに出来るという傑作ジャベックです!」
確かに俺もメイリンは名作だと思っていた。
レベルも高いし、見た目の出来も自然で普通の美女にしか見えない。
ジャベックを見慣れてない人が見れば、普通に人間だと思うだろう。
「まあ、これからその作者に会えるんだ。
楽しみだろう?」
「はい、とても興奮します!」
狭い店なのであまり大人数では入れない。
俺たちはいつものようにガルドとラピーダを外に残し、階段を上がって、店に入る。
「こんにちは、バッカンさん、フレイジオ!」
「よお、シノブ、よく来たな」
「やあ、シノブ、久しぶり!」
二人は俺たちを歓迎してくれる。
俺は手土産のプリンとトラペジオケーキを渡してマジェストン行きの事を二人に説明する。
「そういった訳で、少なくとも3年はいなくなるんだ」
「それは寂しくなるね?」
「ああ、しばらくはシャルルとも会えなくなるけど元気でな」
「うん、わかったよ」
「でも例の事もあるから時々は帰って来るし、色々と調べておくけどね」
「そうだね」
3年もマジェストンへ行っていれば、その間に俺とシャルルは18歳になる。
ならば、例のシャルルの秘密もその時にわかるはずだ。
それまでに色々と調べておく事や、用意する事もあるだろう。
しかしシャルルが残念がっていると、バッカンさんが口を挟んでくる。
「いや、待て、フレイジオ」
「はい?」
「いい機会だ、お前も一緒に行って来い!」
「えっ?僕もですか?」
「ああ、確かに魔法学士の資格は取っておいた方が良いし、学ぶ仲間がいるなら、その時に一緒に行った方が良い」
「でも僕はまだ修行の途中ですし・・・」
「修行の途中ならシノブも一緒だ。
そもそも学生なんて物は、それ自体が修行の一環だ!
つべこべ言わずお前も行って来い!
費用は俺が全部出してやるから気にするな!」
「え?はい、わかりました」
「えっ?じゃあ、シャルルも一緒に行けるのかい?」
「うん、そうみたいだ」
どうやら俺はシャルルと一緒に魔法学校に行く事が出来そうだ。
これは俺にとっても嬉しい!
「ありがとうございます、バッカンさん!」
「何、お前さんが行くならちょうど都合も良い。
お互いに良い刺激になるだろうしな!
それにフレイジオの才能に匹敵するのはシノブ位しかいないからな。
そういった奴が一緒でないと、学生生活もつまらんだろうからな。
もっとも、そこの魔人の嬢ちゃんもとんでもない奴みたいだがな?
こんなのが三人も揃ったのを見たのは俺も初めてだ」
どうやらアンジュを鑑定したらしいバッカンさんが唸りながら話す。
自分に話が振られたアンジュが勢いよく話し始める。
「はい、私はアンジュと申します!
私も伝説の名工、バッカンさんに会えて光栄です!
私、バッカンさんが作るジャベックが大好きなんです!
今、下でメイリンを見て感激しました!
魔道士年鑑で特集を組まれたのを見た時に、こんなジャベックを作れる人がいるのかと驚いたのです!
それと一緒に紹介されていた万能農作業ジャベックも凄いです!
地味ながら一体で全ての農作業をこなすだけでなく、開拓まで出来る機能がついているとは凄いです!
名作だと思います!」
「ほっ!
あのゴーレム好きの嬢ちゃんに続いて、またもや俺のファンか?
全く、中々俺も捨てたもんでもないやな?
それにしてもあの農作業ジャベックにそこまで感心するとはな?
若いのに目の付け所が渋いじゃないか?
うん、気に入った!
お前さんも暇があったらここに話しにこいや。
シノブ抜きでも構わないからな?」
「はい、ありがとうございます!」
どうやらエトワールさんに続き、アンジュもバッカンさんに気に入られたようだ。
「ま、この二人が一緒なんだ。
フレイジオにもいい刺激になるだろうよ。
その代わり、フレイジオ、お前もきっちり勉強して、最低でも魔法学士になってくるんだぞ!」
「はい」
「それに例の件を考えれば、お前は魔法学士になっておいた方がいい。
何かの時にも色々と役に立つ可能性が大きいからな」
「そうですね、しかしこの格好はどうしましょう?
さすがに学生の間は制服を着なければならないので、この格好は無理でしょうし・・・」
今のシャルルはフレイジオとして、以前のエレノアのように常にフードで顔を隠した格好だ。
いつどこで知り合いに顔を見られるかわからないからだ。
しかし学校で生徒になるならば、制服を着ないという訳にもいかないだろう。
だが、バッカンさんは笑いながら話す。
「な~に、大丈夫だ!
そんなモンは髪の色を黒くでも染めておくか、カツラでも被っときゃわかりはせん。
お前はフレイジオとして学校へ行くのだから、名前と髪の色まで変えていたら、よほどの知り合いでもない限り、わかりゃせんだろう。
マジェストンはロナバール以上にノーザンシティから離れているから、まずそんな知り合いはいるまい。
それでもまだ心配なら伊達メガネでもかけておけ!
後はゴーレム魔法の関係者は、必要以上には接触せずに避けておけ。
それで大丈夫だ」
「わかりました」
「なるほど、そうですね」
バッカンさんの意見にシャルルと俺もうなずく。
こうしてシャルルも一緒に魔法学校へ行く事となった。
そこで俺はふと思い出して言った。
「そうか、確かにバッカンさんが言う通り、学ぶなら仲間がいる時の方が良いね?
実は僕やシルビアたちは全員高等魔法学校に行く事になるんだけど、ミルキィだけは中等学校なんだ。
一人で通うのも寂しいだろうから、ポリーナも誘ってはどうかな?
そうすれば二人で通えるし、あの二人は仲も良いからポリーナも誘ったら喜ぶんじゃないかな?
それにあっちに3年間行くとなれば、その間に僕たちは18歳になるんだ。
その時にはヴェルダもいた方がいいだろう?」
ポリーナは高祖父のアルマンさんから、必ず正規の魔道士になるようにと言われていると聞いている。
今はメディシナーで修行中で、まだ中等魔法学校には行ってないはずだから良い機会だ。
それにシャルルが18歳になった時にわかる秘密にはヴェルダが必要なようだ。
そのためにもポリーナが一緒の方が良いだろう。
「そうだね。それは僕も良い考えだと思うよ。
ではポリーナは僕がちょっとメディシナーまで誘いに行って来るよ」
シャルルもうなずいて答える。
「うん、じゃあそれは宜しく」
ここでエレノアがバッカンさんに話し始める。
「バッカンさん、実は明日、私はアイザックを作成する予定なのです。
滅多にない事なので、フレイジオにも見学させたいのですがよろしいですか?」
「ほう?アイザックを?
そりゃ確かに珍しい!
おい、フレイジオ、アイザックを作るのを見学できるなんて滅多にない機会だ。
お前も行ってよく見ておけ!」
「はい、わかりました」
「では、フレイジオも明日うちにいらっしゃい」
「はい、エレノア先生」
どうやらアイザックの製作見学にシャルルも来る事になったようだ。
シャルルにポリーナの事を任せると、俺たちは家に帰った。
その途中で俺は魔法協会に寄って、俺の持ち物の中の指輪を売った。
魔法削減25%の真鍮製の指輪を100個だ。
この指輪を嵌めていれば四分の三の魔力で魔法が使える。
実は俺はこれを大量に持っていた。
数は正確に数えていないが、それこそ千個以上持っている。
なぜかと言うと、こちらに転生する時に、マギアサッコに色々と入れていたのだが、そこには当然あちこちに隙間が出来る。
俺はその隙間が勿体ないと思ったので、何か詰める物はないだろうか?と考えた。
俺は前世でも友人たちに荷物を送る時に、充填剤代わりにエアパッキンではなく、う○い棒などを入れて送り、それを受け取った友人たちに妙に受けていた。
だからふとマギアサッコに隙間にも何か詰めておこうと考えたのだ。
俺は神様に頼んで、こちらの世界で驚くほど珍しくはないが、それなりに高く売れる物で、なるべく小さい物は何があるだろうか?と聞いた時に、この指輪が良いだろうと言われたのだ。
そこで俺はマギアサッコの隙間のほとんどに、この指輪を詰めておいたのだ。
それは膨大な数になり、千個以上にもなった。
神様から聞いた話によると、隙間に詰めた物を全部あわせると、大体1700個ほど入ったらしい。
その内の百個を売りに出したのだ。
査定によると、一個辺りが金貨15枚で売れるので、百個ならば、金貨1500枚になる。
これがまだ千個以上あるのだから、はっきり言って、これを売り食いするだけでもこの世界では一生困らないだろう。
俺はこれからマジェストンで入学金などに金貨が数百枚は必要だし、他にもあちらで急に現金が必要な時もあるだろうと考えて、この指輪を売ったのだ。
シルビアの競売の時のような事はごめんなので、現金は出来るだけ持っておこうと思ったからだ。
それでも売りに出したら結構驚かれた。
本当は二百個位売っておこうかな?と考えていたのだが、百個程度にしておいて正解だったようだ。
まあ、残り百個はマジェストンへ行ってから売ろう。
こうして着々と魔法学校へ行く準備が整っていった。




