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旧・オネショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!   作者: 井伊 澄州
第1章 オネショタな俺が転生したらエロフに騙された!
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327 青い目の魔人

 アンジュの背後で大木がバチバチと激しい炎を上げて燃え盛るのを見て村人たちが驚く。


「こ、これは?」

「お前?魔法を使えるようになったのか?」

「村の恥の魔法無しのくせに?」


それを聞いたアンジュがその目を青く光らせながら猛狂って答える。


「何だと!愚か者め!

まだわからぬのか?

よくも今まで私を馬鹿にしてくれたな!

これでも食らえ!」


そういうとアンジュがまたもや上位火炎呪文を放つ。


「グランダ・フラーモ!」

「うおっ!馬鹿!アンジュ!」

「グランダ・ネブルーラ!!」


とっさにエレノアが魔法障壁を放ったおかげで、その男を守る事が出来た。

さもなければこの男は黒焦げになっていただろう。

それを見たアンジュがエレノアをキッ!と睨んで叫ぶ。


「ぬうぅ!この巨乳の化け物め!

この私の邪魔をするか!

グランダ・グラツィーオ!」


アンジュはエレノアに上位冷凍呪文を放つ。

しかし、エレノアはそれをあっさりと中和する。


「おのれ!ならばこれでも食らえい!

グランダ・フルモバート!」


今度は雷撃の上位呪文だ。

しかし、それもエレノアは難なく、無効化してみせる。

猛り狂ったアンジュはついに意を決して叫ぶ。


「おのれ!こうなればこの村全てを焼き払って・・・!」


む、イカン!さらに上級の火炎呪文を放つつもりか?

しかしその次の瞬間、アンジュは突然パタン!と倒れてしまった。

まるでゼンマイか電池の切れた人形のようだ。

いきなり倒れたアンジュを俺がいぶかしがる。


「どうしたんだ?これは?」

「単に魔力切れでしょう」

「魔力切れ?」

「ええ、先ほど森林を焼き尽くし、海に向かって半分の魔力を使用した上に、あれほど高速で飛んできたのです。

そして先程この村の強力な結界を無力化しました。

あれには相当の魔力が必要だったはずです。

いかに膨大な魔力量を誇っても、魔力がなくなって当然です。

しかもアンジュは今日魔法を使えるようになったばかりです。

いくら強力な魔法が使えても、魔力配分や自分がどれほど魔法を使ったら力尽きるかなどは全くわかっていなかったにちがいありません」

「なるほど」


確かにそれは自分である程度の経験を積まなければわからない事だろう。

俺もそうだった。

今までのアンジュは元々の魔力量が0だったので、気絶しないですんでいたようだったが、大魔法力を得た今、その魔力量が尽きれば、当然の事ながら意識を保てなくなったのであろう。

俺たちは納得すると、そこへある人が進み出る。


「どうしました?

私は里の長ですが、これは一体どういう事ですか?」

「里長?ひょっとしてアンジュのお父さんですか?」

「え?はい、アンジュは私の娘ですが今、どうしているのですか?」

「「「「 あそこに倒れています 」」」」


そう言って俺たちは全員で倒れているアンジュを指差す。


「は?アンジュ?」


アンジュは自分の家へ運び込まれて寝かされた。

里長の家だけあって、中々立派な作りだ。

無防備に居間のソファの上ですやすやと寝ているアンジュを見ると、とても先ほどまで村を焼き払おうとした人物とは思えない。

時々寝ながら嬉しそうにエヘラエヘラと笑っている。

何か良い夢を見ているのだろうか?

そしてアンジュが気絶してソファで寝ている間に、俺たちは両親に今までの事を話した。

俺がアンジュを金貨240枚で購入した事、一緒に生活をして色々と買い物をした事、様々な魔物を倒した事、そして昨夜突然、魔法に目覚めた事をだ。

アンジュの父親と母親は、それをうなずいて聞いていた。


「なるほど・・・それでアンジュは魔法を使えるようになった訳ですね?」

「ええ、それで今日になって、自分が間違いなく魔法を使えるとわかった瞬間、この騒ぎになった訳です」

「そうですか・・・」

「自分の村の者たちに天罰を下すと言って、ここまで飛んできて、この村を攻撃し始めた瞬間、魔力が尽きたのです」

「なるほど・・・そういう事ですか・・・」


父親と母親は俺たちの話に納得したようだ。

俺たちが話し終わった頃、ようやくアンジュが目を覚ました。

目を覚ましたアンジュはキョロキョロと周囲を見回す。


「あれ?ここは?」

「ここはお前の生まれた家だ。

覚えているか?アンジュ?」

「えっと・・・その・・・」

「覚えているか?

お前は俺たちの言う事も聞かずに自分の故郷まで飛んできて、この村を焼き払おうとしたんだぞ?」


俺は単刀直入にアンジュの行動を説明した。

遠回りに言っておかしな誤解をおこしたくない。

それに本人が覚えているかどうかが微妙なのだ。

はっきりと自分が取った行動と、引き起こした事態を言った方が良い。

万一の場合に備えて、エレノアを始めとして、俺たちは全員でアンジュを押え込む体勢だ。

果たしてアンジュはいきなりその場で正座をすると、俺たちに謝り始めた。


「えっ!あっ!そのっ!ごめんなさい!

申し訳ありませんでした!」

「覚えているのか?」

「はい、そこはかとなく・・・・」


不安げに答えるアンジュに、エレノアが笑顔で問いかける。


「あら?ではちょっと聞きたいのですけれど、巨乳の化け物って、誰の事ですか?」


ああ、そこ、ちゃんと覚えていたんですね?エレノア先生?

そのエレノアの質問にアンジュは青くなって答える。


「ひぃっ!すみません!すみません!

エレノアさん、すみません!

どうか許してください!」


アンジュはその場で見事な土下座をして平謝りだ。

うん、グリーンリーフ先生、相変わらず怖いですね?

しかしどうやらアンジュの中二病は一時的な物だったらしく、目を覚ましたら正気を戻したようで俺はホッとした。

目覚めてもあのままだったらどうしようかと思った所だ。

頭を下げているアンジュに俺が話しかける。


「どうやらまともな感覚を取り戻したようだな?

どうする?アンジュ?お前はもう魔法使いなんだ。

もう誰も魔法が使えないと言って、お前を馬鹿にする事は出来ない。

もし、そんな奴がいたら鼻先で笑ってやれ!

堂々とこの村で生きていく事が出来るんだ。

ちょうどこの村に帰って来たんだ。

うちの奴隷を辞めたいなら辞めて、このままこの村に居ても良いんだぞ?」


その俺の言葉にアンジュが頭を上げると、軽く驚く。


「え?」


驚くアンジュに父親もうなずいて答える。


「ああ、この人から父さんがお前を買い戻してやるから大丈夫だ」

「え・・・あ?」


しかしアンジュがしばらく考えて答える。


「いえ、私はもう少し奴隷でいたいです」

「え?」

「何だって?アンジュ?」


驚く俺と父親にアンジュが説明を始める。


「私はこの村では馬鹿にされていました。

魔法使いしかいない村で唯一魔法を使えない魔人として馬鹿にされていたんです。

しかしそれも当然の事で仕方がないと思っていました。

だから奴隷としてわずかでも魔法を使えるような可能性があるならば、どんな事にでも堪えてみせようと覚悟していたんです。

それこそ家畜のような扱いを受けても、構わないと考えていました。

ところが実際に御主人様の家に行ったら、まるで家族のように迎えられました。

この人たちは魔法を全く使えない私を馬鹿にもせず、心配して面倒を見てくれたんです。

特に御主人様は私が魔法を使えるようになるようにと色々と手を尽くしてくださいました。

奴隷の私に色々と高価な魔法具を買ってくれたり、一緒に同じ食事をしてくれたり、魔物から守ってくれたり、馬鹿な私を励ましてくれたんです!

しかも魔法を使えなくても、ずっと一緒に暮らそうとまで言ってくれたのです。

それに御主人様だけじゃありません!

他の人たちもみんなです!

そんな人たちを魔法が使えるようになったからと言って、はい、さようならと言うのはイヤです。

特に御主人様には何も恩を返してないのに別れたくありません」


そのアンジュの言葉に父親もうなずいて答える。


「もちろんそれは父さんも感謝している。

だからそれはお前を5倍の値段で買い戻してだな」

「そういう事じゃありません。

単にその・・・私が御主人様たちと別れたくないんです。

それに昨夜は御主人様と私は、その・・・」


そう言いながらアンジュが頬を赤らめて、俺の事を恥ずかしそうにチラチラと見る。

おう!アンジュ!

その事はエレノアたちは知っているが、まだおうちの皆様へは内緒にしておけ!

しかし娘の様子を見た父親と母親は全てを理解したかのようにうなずいて答える。


「わかった、好きにするが良い。

どの道お前が魔法を使えなければ、ずっとそのはずだったんだからな。

但し、礼の意味も含めて金は払っておこう。

そうすればいつでもお前は奴隷をやめる事が出来るからな」

「はい、父様、それで構いません。

ありがとうございます」


アンジュが嬉しそうに答えると、父親は意外そうに話始める。


「ふむ・・・それにしても驚きです。

ほんの数日で、ずいぶんとうちの娘が懐いた物ですな?

これほどアンジュが人に懐いたのは始めてです。

どうです?ホウジョウさん?

このままアンジュの夫になっていただけませんか?」


その父親の言葉に、そばにいたアンジュの母親もあっさりと賛成する。


「ええ、そうですわね。

とても良い方のようですし、アンジュがそれほど気に入っているのなら私も賛成です」

「「「「 え? 」」」」


父親と母親の言葉に俺とシルビア、それにミルキィとアンジュが驚く。

特にアンジュが真っ赤になって叫ぶ。


「なななな、何を言っているんですか?父様!母様!」

「ん?別に普通にこの方にお前の夫になる事を頼んでいるだけだが?

お前だってこの人の事を気に入ったんだろ?

私も会ったばかりだが、結構この人の事は気に入ったからな!

それに善は急げと言うしな?

いいじゃないか!」

「ええ、その通りですよ」


父親の言葉に母親もうなずく。


「そ、そそそ、それは・・・」


そう言って真っ赤になりながらも、アンジュはまんざらでもない表情をして、チラチラと俺を眺める。

ふっ!俺に惚れたか!ロリッ娘よ!

もちろん俺とてもアンジュの事は嫌いではない。

でも16歳同士で結婚って早くない?

一応、俺もまだ見た目と建前は16歳なんだしぃ~

しかしうちの者が黙っていなかった!

シルビア、ミルキィ、エレノアがそれぞれ反対をする。


「ダメです!反対です!」

「そうです!御主人様をアンジュだけの物にする訳には行きません!」

「それに関しましては現時点では私も賛成しかねますね・・・」


その三人の言葉に驚いたのか、父親も唖然とする。


「これはこれは・・・

皆さん、そういう訳でしたか?

いやはや、さすがうちの娘の心を射止めた御仁だ。

もてますなあ・・・

まあ、そういう事でしたら今すぐにとは申しません。

おい!アンジュ!お前、この人としばらく一緒に暮らすんだったらうまくやるんだぞ?

こちらの三人に負けないようにな!」


その父親の言葉にアンジュが慌てふためいて答える。


「な、何を言っているんですか!父様!

私をこの三人に殺させたいのですか!

娘を亡き者にしたいのですか!

娘が可愛くないのですか!」


それを聞いたシルビアたちがにっこりと笑って答える。


「あら?アンジュ?それはどういう事かしら?」

「ええ、聞き捨てなりませんね?」

「そうですね、そんな心配は無用ですよ、アンジュ?」


やさしそうに微笑みながらも恐ろしいまでの圧力をかける三人に、アンジュは心底恐れているようだ。


「ヒィッ!許してください!皆さん!

私は皆さんから御主人様を掠め取ろうなんて気持ちはまったくありませんので!」

「大丈夫ですよ。アンジュ」

「ええ、うちのシノブ君はちゃんと躾が出来ていますからね」

「ええ!大丈夫です!」


いや、そんな人を犬猫を躾けたみたいに・・・

あの・・・先生方?ボクもちょっと怖いです。

しかし、その様子を見た父親が笑って話し始める。


「ははは・・・これは面白い!

まあ、どちらにせよ、今晩は我が家に泊まっていってください。

アンジュの魔法発動祝いと、皆さんの歓迎会です!

急なので大したもてなしは出来ませんが、どうか皆さんも一緒に祝ってあげてください」

「ええ、その通りです」


アンジュの両親が揃って俺たちの逗留を勧める。

俺もうなずいて答える。


「はい、わかりました。

それでは今夜の所は泊まらせていただきます。

ラピーダ、そういう訳だ。

君は一足先に家に帰って、事の次第をアルフレッドたちに話しておいてくれ。

我々の帰りは明日以降になるとね」

「承知いたしました」


俺の命令を受けて、ラピーダは一人で先に家に帰った。

残りの俺たちはその晩、アンジュの家に泊めてもらう事となった。

確かに今日は朝からこの騒ぎで俺たちも疲れた。

昼も抜いていたしね?


用意された豪華な夕飯を食べながらみんなでアンジュの魔法発動祝いをした。

その後で、順番に風呂に入って、それぞれの部屋へ行った。

俺もアンジュの母親に案内されて、寝室へと向かった。

そこには風呂から上がったアンジュが待っていた。


「え?あれ?

あの?ひょっとして、ここってアンジュの部屋じゃ?」


動揺する俺にアンジュのお母さんは意味深な笑いを扉を閉める。


「それではシノブさん、アンジュとごゆっくり・・・」

「え?いや!ちょっと!」


俺の止めるまもなく、扉はピシャリと閉められる。

部屋の中には俺とアンジュの二人きりだ!

いや!お母さん!そこ気を利かせなくていいから!


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