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旧・オネショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!   作者: 井伊 澄州
第1章 オネショタな俺が転生したらエロフに騙された!
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313 キャサリンの行方と「八徴」

 日が暮れて来てもキャサリンが帰って来ないので、俺はふとエレノアに確認のためにも尋ねてみた。


「そういえばキャサリンは、まだ帰って来てないよね?」

「ええ、そうですね。

御小遣いもたくさんいただきましたので、嬉しくて時間も忘れて、遊んでいるのかもしれません」


エレノアがそう説明する。


「うん、それは良い事だね」


俺がそう言うと、3人は顔を見合わせて微妙な表情をした。



その日、夕飯時になっても結局キャサリンは帰って来なかった。

俺は食堂で食事を終わって食後の茶を飲みながら独り言のように呟いた。


「それにしてもキャサリンはどうしたんだろう?

夕飯までには帰ってくるようには言っておいたのに」


子供じゃあるまいし、一応キャサリンは20歳を過ぎている。

しかも仮にも本当にも俺の奴隷だ。

奴隷であるならば、主人には絶対服従のはずだ。


「羽根を伸ばしすぎて時間を忘れているのかな?」

「確かに遅いですね」

「そうですね」


俺たちが話していると、アルフレッドが俺に説明をする。


「そういえば私も少々不思議に思う事が・・・

実は皆さんが帰って来た後で、一旦キャサリンも帰ってきましたが、その後ですぐに迷宮へ行く装備で、再び外へ出て行くのを見かけました」

「え?あのミスリル鎧を装備して?」

「はい、剣も盾も全て持ってです。

何か急いでいるような感じでしたが・・・」


そのアルフレッドの言葉に俺とミルキィとシルビアが不思議そうに話す。


「一体、どういう事だろう?」

「この間の事に味をしめて、一人で迷宮へ稼ぎにでも行ったのでしょうか?」

「わざわざ休暇の時に・・・ですか?」

「しかもあの一人では絶対に迷宮へ行かないキャサリンがかい?

まあ、また組合かどこかで、誰かを誘って行ったのかもしれないが・・・」

「・・・・・」


みんなが色々と話す中、一人エレノアは無言だ。

俺は何だか言い知れない不安を感じる。


「何か事故にでもあっていなければいいが・・・」


俺は帰って来ないキャサリンを心配する。

しばらくして、その場からアルフレッドがいなくなると、それまで無言だったエレノアが俺に話しかける。


「御主人様、御主人様自身の鑑定をお願いいただけますか?」

「え?魔法鑑定?何の?」

「御主人様の所有奴隷項目です」

「所有奴隷項目?」


俺はエレノアに言われて自分の所有奴隷項目表示を見て驚いた。

誰もいないのだ!

現在エレノアたち三人は奴隷ではないので、もちろん所有奴隷表示はされない。

現在奴隷項目に表示されるのはキャサリンだけのはずだ。

しかしそのキャサリンが表示されないのだ!

つまり俺は現在一人も奴隷を所持してない事になっている!


「え?あれ?」

「どうかしましたか?」

「いや、その・・・所有奴隷項目にキャサリンがいないんだけど・・・」

「え?」

「そんな・・・」


ミルキィとシルビアが驚く。


「そうですか・・・」


納得したようにエレノアがつぶやく。


「これって一体どういう事?

3人ともわかる?」


俺が質問すると、3人が顔を見合わせて、おずおずとシルビアが答える。


「・・・所有奴隷項目に彼女がいないという事は、もはや御主人様の奴隷ではないという事です」

「え?だって奴隷って魔法で拘束されていて、それを解く事はできないんじゃないの?」


エレノアならともかく、キャサリンは全く魔法が使えないのだ!

そんな彼女が奴隷拘束を解く事が出来るはずがない!

俺の疑問にシルビアが答える。


「基本的にはそうですが、実は可能です。

完全ではないのですが・・・」

「え?どういう事?」


驚く俺にエレノアも答える。


「はい、もちろん違法なのですが、このロナバールのように大きな町ですと、金貨15枚から20枚ほどで奴隷魔法の解除を請け負う者がいます。

ただし、今、シルビアが説明した通り、完全には解けません。

奴隷を追跡する探査能力がなくなり、所有項目が消失するだけです。

以前、私がしたように完全に解ける訳ではないのです。

それには術者が所有者に接している事が必要ですから、所有者に触れていなければ完全に解く事は私にも、いえ、誰にも出来ません。

また特殊な切断方法で首輪も切断できますが、所有魔法自体は消えませんので、主人が死亡した場合、奴隷も殉死します。

そして何かで捕まって奴隷として売られる場合には、すでに所有魔法がかかっている事がわかります。

そうなれば奴隷商会の組合で照会されて、売り元であるバーゼル商会へ通報が行き、逃亡奴隷として引き渡されます。

しかしおそらくキャサリンはそこまでは知らないでしょう。

首輪が取れた時点で、彼女は自分は完全に奴隷から解放されたと思っているでしょう」

「そんな・・・じゃ、彼女は?」

「はい、そうだと思います。

どこかにある違法魔法屋を探し出したのだと思います」


探し出した?しかし、そんな事をどこで・・・?

そうか!この間、裏通りで情報屋のような男に聞いていたのはその事だったのか!

あの時がっかりした様子だったのは、奴隷を解除する相場が自分が思ったより高かったからだったのではないだろうか?

しかし、今回もそれほど金貨を持っていなかったはずだ。


「しかし今日みんなに渡したのは金貨10枚だろう?」


今の話を聞いた限りでは、いくらキャサリンが逃亡しようとしても、金貨10枚では無理なはずだ。

だが、そんな俺にエレノアが驚く事を伝えてくる。


「申し訳ございません。

実は私は自分の分の金貨を全てキャサリンに与えました」

「何だって?」


すると、キャサリンは金貨25枚以上を持っていた事になる。


「それに御主人様も御存知の通り、キャサリンは先日の盗賊退治で、くすねた金貨を八枚ほど持っております。

従って全部で金貨を30枚以上、おそらくそれだけ金貨を持っていれば、奴隷首輪も外せて、逃亡資金も十分と考えたのでしょう。

まさか、こんな事になるとは思わず、彼女に私の分の金貨を全て渡してしまったのです。

その金貨で彼女は違法魔法屋に行って、奴隷解除をしたのでしょう。

彼女が逃亡したのは金貨を余計に渡した私の責任です。

どうか私を処罰してください」


そう言いながらエレノアは俺の前に跪く。


「御主人様、どうか私に電撃でも鞭でも御好きなようになさってください」


残りの二人も気まずそうに無言で横に立っている。


これは見事に計られた!騙された!

全くこのエロフに俺は何度騙される事か!

もちろん、エレノアは全てをわかっていてキャサリンに自分の金貨を渡したのだ。

道理で今回に限ってエレノアが金貨10枚などと大層な金額を言ってきた理由がよくわかった!

彼女は最初からキャサリンを疑っていたのだ。

そしてわざと彼女が今回逃げるように仕向けた。

エレノアとしては、信用できない者が俺の奴隷にいるのが許せなかったのだろう。

何しろエレノアは俺が止めなければ、キャサリンを抹殺する気だったのだ!

だから彼女を試してみたのだろう。

これで逃げるようなら信用できないし、ちゃんと戻って来るならここに居させても構わないと。

そのためには金貨の20枚や30枚位は惜しくないと思ったのに違いない。

おそらくは同時に俺への教育も含めて。

そしてキャサリンは逃亡した・・・エレノアの読みは当たったのだ。


「やれやれ・・・君たちもそれをわかっていたのか?」

「それは・・・」


俺の質問にシルビアとミルキィがどう答えて良いか口ごもっていると、エレノアが説明をする。


「いいえ、この二人はこの事に関しては全く知りません。

これは私の独断で行った事です。

どうか罰を与えるなら私にお与えください。

電撃でも鞭打ちでも焼印でも、いえ、どんな罰でもお受けいたします」


そのエレノアの言葉に俺はゾッとする。

俺はエレノアが泣き叫ぶ姿や、苦痛に表情を歪める姿など見たくもない。

そんな事をするくらいなら俺がその拷問を受けた方がましだ。

俺はため息をついて話しかける。


「やれやれ・・・全く、僕が大好きなエレノアに、そんな事をできる訳がないでしょう?」


俺の言葉に残りの二人もホッと一安心した様子だ。

しかしエレノアは収まらない。


「いえ、このままでは秩序が保てません、どうか罰を与えてください」


あくまで罰を求めるエレノアに、俺が苦笑いをしながら話しかける。


「それどころか、僕は逆に感謝して、お礼を言わなければならないんじゃないかな?」

「お礼?」

「ああ、僕を教育してくれたんだろう?

彼女が信じられる人間かどうかを試すための?

金貨数十枚、いや、彼女自身の料金や装備も含めば二百枚近くか?

今回はそれがその勉強代という訳だ。

しかも僕が優柔不断で彼女を処分できないとみて、それも代わりにしてくれた訳だ。

相変わらず全くダメな主人ですまないね?

高い勉強代についた訳だが、それも僕の自業自得だ。

ありがとう、エレノア。

心から感謝するよ」


そう言って俺はエレノアに深々と頭を下げた。

そしてふと、思い出した言葉があった。

八徴はっちょう」という言葉だ。

かの周の名軍師、太公望たいこうぼうが残したと言われる兵法「六韜三略りくとうさんりゃく」の中にある言葉だ。

これは太公望の主である武王が、太公望に「どうしたら人の本性を見極める事が出来るか?」という質問に対して言った言葉だ。

それには8つの方法があると・・・

すなわち、

第一に、色々と質問をして、返答の内容で判断する。

第二に、いきなり問い詰めてみて、とっさにどのような対応をするかで判断する。

第三に、スパイを使って裏切りを誘い、その誠意を見て判断する。

第四に、秘密を打ち明けてみて、その人徳、口の堅さを見て判断する。

第五に、金品財政を管理させてみて、その清廉さを見て判断する。

第六に、異性を近づけてみて、その節操を見て判断する。

第七に、困難な任務を与えてみて、その行動を見て判断する。

第八に、酒を飲ませてみて、その態度を見て判断する。

の8つだ。

この八つの方法すべてを試せば、その人物が賢者か、愚者か、信じるに値するかを見分ける事が出来るであろうと言う方法、それが「八徴はっちょう」だ。


兵法好きな俺はこれを知ってはいたが、前世でもこの世界でも、あまり実行する気にはなれなかった。

あまりにもえげつないからだ。

しかしこの8つの方法は間違いなく有効だ。

この8つは遥か昔に考え出されたというのに、21世紀である令和の日本はおろか、この異世界であるアースフィアでも通じるのは間違いない。

そして俺は無意識の内に、この8つのうち、異性と酒以外の物は、いつの間にか全てキャサリンに実行していた事に気づいた。

キャサリンは質問してもウソしかつかないような人間だ。

問い詰めても同じだ。

スパイなど使う必要もないほど信用はならないし、俺がミヒャエルとの仲を話せば、それを利用する事しか考えないような人間だ。

金品を管理させるなど論外だし、あれほど一人で行くと豪語していた迷宮へも一人では行けない程のへたれで、困難な任務などとても出来ない。

男と酒の事など試す以前の問題で、つまりは8項目全ての行動が人として論外と言う結論がすでに出ている訳だ。


どだい、今までの三人が出来すぎだったのだ。

この三人は以前から思っている通り、俺には勿体無い位の三人だ。

今回のキャサリンは極端すぎるかも知れないが、こういった奴隷がいても不思議は無い。

俺は最初にアルヌさんからサロメの話を聞いていたし、そのアルヌさんがあれほどキャサリンを買うのに反対していた。

しかもペロンはキャサリンをうちに置く事に大反対をしていたのだ!

それなのに俺はキャサリンを買って家にいさせたのだ!

俺は当然こうなる可能性も考慮すべきだったではないか!

そしてキャサリンは俺の買ってやったミスリル装備で出て行った。

逃亡するのにそちらの方が都合が良いと考えたのだろうし、いざとなれば高く売れるとも思ったのだろう。

そんな考えの奴に、俺はあの高いミスリル装備まで、わざわざ整えてやっていたのだ!

まさに盗人に追い銭とはこの事だ!

それもこれも俺の人を見る眼の無さや、この世界の経験の少なさ、特に奴隷社会という経験の少なさが原因なのは間違いない。

全て俺の責任だ。

しかしエレノアはあくまで自分が責任を取るつもりだ。


「とんでもございません。

私は奴隷として出すぎた事をしても、お褒めに預かるような事は何一つしておりません。

どうか罰を与えてください」


相変わらずエレノアはいつも通りだ。



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