263 歓迎会への誘い
楽しかった晩餐会もいよいよお開きだ。
ここへ来る前にはこんな楽しい宴会になるとは思わなかったが、今回は色々と予想外の出会いとなった。
俺たちが引き上げる段になって、帰り際に老人連が三人集まって何やら話をしている。
「いや、しかし・・・」
「わしは信じんぞ!」
「そうか?余はありえると思うがの?」
「じゃから確かめればよいんじゃよ!」
しばらくすると、三人の間でなにやら話しが終わったらしく、俺に話しかけてくる。
ミヒャエルが俺に和やかに話しかけてくる。
「いや、今日は実に楽しかった。
これほど楽しかったのは久しぶりじゃ!
やはりシノブを呼んで良かったわい!」
「こちらこそ御招きに預かりありがとうございます」
俺が深々と頭を下げて礼を言うと、ミヒャエルが注意する。
「ほれほれ!言葉が戻っておるぞ!」
「あ、その、呼んでくれてありがとう。ミヒャエル
僕もとても楽しかったよ」
「うん、それでよいのじゃ。
ところで来週の自由日と休日じゃが、シノブは何か用事があるかの?」
「ううん、別に予定はないよ?」
「それは良かった。
実はの、我々は気心の知れた物同士で、よく集まって様々な催しを楽しんでいるのじゃ。
今度もそういった物を考えていて、是非これを機会にシノブにもそういった集まりに参加をして欲しくての、どうじゃろうか?」
「え・・?そうだね・・・」
いきなりの誘いに俺は曖昧に答える。
「何、身一つで遊びに来てくれれば良いのじゃ、後はこっちで手配をするのでな。
硬く考えんでも遊び仲間同士の集まりじゃ。
ぜひシノブにも我々の遊び仲間になってもらいたくての。
ああ、来週は奴隷の女性陣は連れて来なくとも良いぞ?
どちらかと言えば男同士の付き合いじゃからのう。
御主さえ一人で来てもらえればそれで良い。
その護衛ジャベックはどちらでも構わないがな」
「はあ・・・」
俺はまたしても曖昧な返事をする。
「まあ、余もこいつらも年だてな。
貴君のように若い者と色々と忌憚なく話し合ってもみたいのじゃよ。
新しい仲間の歓迎会のようなものじゃ。
それにまだ色々とシノブには聞いてみたい事が山のようにあるでの。
老人を助けると思ってどうじゃろうか?」
総督閣下にそこまで言われては断りにくい。
今日一日の事で、噂どおり、悪い人ではないのはわかったので、俺は受ける事にした。
それにこの三人との科学談義は楽しいし、何と言ってもこの人たちとは友人になったのだ。
俺はこっちの世界ではこういった科学オタクな友人は出来ない物とあきらめていたので、この三人と知り合えた喜びは大きい。
俺も望遠鏡の作り方を教えたり、ミロ・クーボの遊び方、アースフィア儀の作成の手伝いと、他にもこの三人としてみたい事は山ほどある!
「承知いたしました。
総督閣下ともあろうお方が、私のように若輩で新参者の歓迎会を開いていただくというのに断るなど失礼に当たります。
喜んで参加させていただきます」
「おお!参加してもらえるか!
それはありがたい!
しかし言葉遣いがまた元に戻っておるぞ!」
「あ、ごめん、わざわざ歓迎会を開いてくれるなんてありがとう。
楽しみにしているよ、ミヒャエル」
「うむ、余も楽しみにしておるぞ。
そうそう、それともう一つ聞き忘れておったが、シノブは何か欲しい物とかはないかの?」
「え?」
「いや、何しろ今日はシノブにあまりにも珍しい物を色々ともらいすぎてしまったからの。
いくら何でもこのままでは余の沽券にも関わるからの」
「おう、わしも出来る限りの事はするぞ」
「うむ、何か頼み事があれば、遠慮なく言ってみよ」
ジーモンとガスパールもそう言うので、俺は以前から考えていた事を三人に言ってみた。
「そうだね・・・では一つお願いがあるんだけど・・・」
「おう、何じゃ、言ってみよ」
「実は僕は少々変わった農作物で育てたい作物があるのだけど、土地の当てがないので困っているんだ。
だから、どこかでそれを育ててくれる場所を紹介してもらえばありがたいんだけど」
「何じゃ、そんな事か、造作もないわ。
どれ位あるのじゃ?」
そう言われて俺は考えた。
さしあたり作ってみたい物は、米、もち米、大豆、小豆、さつまいも、じゃがいもの6つか?
その6つが一定量収穫出切れば、色々と作れるようになる。
「そうだね・・・種類は全部で6種類ほどかな?
収穫する量はもちろん多いに超した事はないけど・・・」
「わかった、それは余に任しておけ。
何だったら次に来る時にそれの種か何かを持ってきてみよ」
「ありがとう。
ではお願いします」
「他には何かないかの?」
「他に?」
俺が少々驚いていると、三人はせかすように俺に聞いてくる。
「おお、その程度ではまだあの品物の礼には遠く及ばないからの」
「そうじゃな」
「さあさあ、遠慮なく言ってみよ」
そう言われて俺は今度はここ最近考えていた事を言ってみた。
「そうだね・・・それではもし、このロナバールで良い場所があれば、そこで店を開きたいんだけど・・・」
「店?例の肉まんとやらのか?」
「そういえば先ほども店を開くのに良い場所がなくて困っておると言っておったな」
その質問に俺はうなずいて答える。
「うん、僕は現在肉まんの店を開いているだけど、どこも屋台に毛が生えた程度の店なので、出来ればもう少し、広い場所で、ちゃんとした店を開いてみたいんだ。
食堂と厨房の他に、大きな食糧倉庫や店員の住む部屋も備えた大きな店をね。
だからこのロナバールで良い場所がないかと探している所なんだよ。
そうすればプリンを初めとした他の色々な菓子も出せるようになると思うからね。
そういった物件を探してもらえれば嬉しいんだけど・・・」
俺の説明にに三人は目を輝かせて答える。
「何?プリンだけでなく、それ以外の菓子もとな?
なるほどな、ではそれも覚えておこう」
「おう、良い場所があれば、すぐに伝えよう」
「わしも探すぞ!」
三人の返事に俺はうなずいて答える。
「はい、よろしくお願いします」
「おう、ではシノブ、また来週にな」
「わしも楽しみにしておるわい」
「はい、ではまた来週に」
こうして俺たちは無事に総督閣下との晩餐会を終えると家路へと着いた。
俺は家に帰ると、アルフレッドやキンバリーたちにも聞いた。
「そういった訳で来週は泊りがけで行く事になったけど、どう思う?
身一つで来ていいって言われたんだけど、何か用意していった方が良いかな?」
「そうですな、私も総督閣下がよく親しい方たちと夜通し宴会を開くと言うのは聞いた事がございますが・・・」
「そうですね」
そしてちょうど家に来て晩飯をたかっていたデフォードも俺に説明をする。
「あの御仁がよく宴会や大会を夜通し開くのは事実だ。
その内容はバラバラだがな。
大食い大会だったり、一晩中賭け事をやったり、輪投げや芝居見物を一晩中やったりした事もあると聞いている。
単純に大将が気に入られたんで、遊び仲間に入れたいんじゃないのかい?」
「そうか・・・それならいいんだが・・・」
俺が少々心配そうに話すと、デフォードが保証するように話す。
「まあ、ガルドやラピーダも護衛についていくんだ。
大丈夫だろう?
手ぶらが気になるなら、また何か連中が知らない菓子でも持って行ってやったらいいんじゃないですかい?」
「ああ、そうだね」
俺もそう考えて、今度はスイートポテトと白玉汁粉を持っていく事にした。
まだこれはうちの連中以外に振舞った事はないので、総督閣下たちは知らないはずだ。
それにこれは全部栽培を頼む作物で出来るので、それを説明するのにもしやすくなる。
スイートポテトはキンバリーにいくつか焼いてもらおう。
「キンバリー、来週はスイートポテトを持っていこうと思うんだけど、大丈夫かな?」
「ええ、もちろん、大丈夫でございますよ」
「では自由日の昼までに頼む、30個も作ってもらえれば大丈夫だろう。
それと白玉汁粉も鍋一杯に作っておいて」
「かしこまりました」
あの三人は甘い物も好きなようなので、プリンをずいぶんと食べていた。
おそらくスイートポテトも気に入るだろうから大目に持っていった方が良いだろう。
それに白玉汁粉もだ。
この二つは頼んだ農作物でもあるから、これが気に入れば農地を貸してくれる方にも気合が入ると思ったからだ。
歓迎会というのがどういう物かはわからないが、あの3人となら中々楽しそうだ。
俺は今度はどんな話をしようかとワクワクとしながら考えた。
うん、あの三人だったら折り紙なんかは地味だけど面白がるかも知れないな?
次は折り紙の話でもしてみようかな?
しかしその前に一騒動持ち上がる事となったのだ!
<お知らせ>
「なろう運営」と数回のやり取りの結果、今回は無事に削除を免れる事が出来ました。
しかしそのためにいくつかの部分の大幅な変更をせざるをえず、読者諸氏には御迷惑をおかけします。
また、当作品は現在第310話までは、ほぼ完成して投稿済みのために、そこまでの話の中には変更せざるを得ない話も出てきました。
現在話の内容を精査中ですが、その見直しの結果、極端に短くなる話や、場合によっては完全削除になる話も出てきそうです。
修正する時間もあるかどうか不明なので、その際は御容赦ください。
短くなった話や削除された部分はいずれ何らかの形で改訂したいと考えておりますが、現在の所、どんな形でその作業をするかは未定です。
読者の皆様にはこれに懲りず、今後も当作品を愛読していただければ幸いです。




