261 総督閣下たちとの友誼
三人とも一通りパラパラとめくると、それを大事そうに自分のマギアサッコに納めたようだ。
それに満足すると、総督閣下が俺に機嫌よく話しかける。
「いやはや、それにしても今日は驚きの連続じゃ!
ホウジョウ殿がこれほどの人物とは思わなかった!
たったの1日、いや、半日でこれほど驚いたのは生まれて以来、今日が初めてじゃ!
余は驚きすぎて疲れたほどじゃわい!」
「わしもじゃ」
「本当に今日は来て良かったわい!」
「ああ、わしも冷やかしのつもりで来たのじゃが、もし今日来なかったら一生後悔する所だったわい」
「そうしたら余はおぬしたちにこの望遠鏡やら百科事典を自慢してやったわい」
「くっ!この老いぼれで腹黒のガラクタ自慢めが!」
「全く危ない所じゃったわい!
もしそんな事をされたら、わしは悔しさのあまり、歯軋りで歯が折れる所じゃったわ!」
「おぬし、もうそれほど歯など残っていまいに?」
「それを言うな!」
それを言うと三人はドッ!と笑った。
この三人は本当に仲が良いようだ。
その中の一人が王族でロナバール総督だというのに、残りの二人も身分に気兼ねなく、本当にただの友人同士のように話し合っている。
俺にもレオンやシャルルがいるが、その二人とはこういった科学的談義までは出来ない。
科学オタクでもある俺は、ちょっとこの三人が羨ましいなと思った。
三人はひとしきり笑うと、総督閣下が俺に話しかけてくる。
「のう、ホウジョウ殿?
貴公は本日より余の友となってはくれないかの?」
「え?総督閣下の?」
いきなりの申し出に俺は驚いたが、総督閣下はいたって真面目そうだ。
「うむ、是非そうして欲しい」
「おお、それはわしもじゃ!」
「全く、これほど知識と教養のある若人がいるとは思わなかったわ」
ジーモンさんとガスパールさんもうなずく。
俺は驚いて問い返した。
「もちろん私に異存などございませんが、私のような若輩者でよろしいのでしょうか?」
「何を言っている、ホウジョウ殿!
いや、シノブと呼ばせてもらっても良いかな?」
「ええ、もちろん構いません」
「おう、わしもじゃ」
「もちろん、わしも加えてもらうぞ」
そういってジーモンさんとガスパールさんも加わってくる。
「そなたのように博識な者などそうそうはいない。
むしろこちらから頭を下げて友人になってほしいほどじゃ。
そうそう、余の事もミヒャエルと呼んでくれ」
「承知いたしました。
それほど私を評価していただけるとは恐悦至極にございます。
ミヒャエル閣下」
「そんな閣下などとつけんでも良いわ!」
「いえ、総督閣下にそのような事など恐れ多く」。
「気にするな!
なんだったらただのジジイ呼ばわりでも構わん!」
「そんな!」
いくらなんでも総督閣下にそれはないだろうと俺が驚いていると、残りの二人がはやし立てる。
「いいんじゃよ!こんなジジイはジジイで」
「ひゃっはっは!シノブはこんなジジイには勿体無いくらいの友人じゃて」
「まあ、こやつらの言う通りじゃ。
これからはミヒャエルと呼んでもらおうか?」
「わかりました。では恐れながらミヒャエルと呼ばせていただきます」
俺がそう言うと、総督閣下は不満そうに俺に問いかける。
「シノブ、御主は対等な友人相手にそのように硬い言葉で話すのか?」
「いえ、そのような事はございませんが・・・」
「では、そのように話せ!
余は御主をこやつら同様、自分と対等な友人と思っておるのじゃからな!」
「ひゃっはっは!むしろわしらより大事なのではないかな?」
「その通りじゃ!」
「当然じゃわい!
お前らのような老いぼれと、こんな博学な若者が比較になると思うか?
ささ、シノブよ?わかったら普通に話すが良い」
「えと・・ではミヒャエル、これからよろしく」
「うむ、うむ、それで良い」
「わしの事もジーモンと呼ぶのじゃぞ?」
「もちろん、わしもガスパールで良い」
「はい、じゃあ、えっと、ジーモンとガスパールもよろしく」
「うむ、ではお互い友誼も出来たところで、早速、食事を楽しもうではないか!」
「そうじゃな」
「うむ、それが良い」
「はい」
俺が返事をすると、総督閣下、いやミヒャエルがゼルバトロスさんに向かって、にこやかに話しかける。
「いやはや、それにしてもゼルバトロス殿には感謝するぞ!
このように素晴らしい友人を紹介していただいてな!」
総督閣下、いやミヒャエルの言葉にゼルさんも恐れ入って答える。
「滅相もございません、閣下。
私はただ橋渡しをしただけの事でして、ホウジョウ殿がこれほどの人物とは、私も存じ上げませんでした」
「うむ、まさに想像以上だったわい!」
ミヒャエルの言葉にジーモンとガスパールもうなずく。
「全くな!」
「驚きじゃわい!」
「ああ、今日一番の驚きはシノブ・ホウジョウという人物が存在した事自体だわい!」
「そうじゃな」
「わしも同感じゃ」
こうして俺と総督閣下とその友人二人は、友人同士となったのだった。
そして友人同士となった俺たちは、そのまま和やかに晩餐会に向かうのだった。




