211 奴隷解放、そして再び奴隷
俺の呆然とした表情が気になったのか、エレノアが再び俺に話しかける。
「御主人様はまだ釈然としない様子なので、ちょっとした物をお目にかけましょう」
「え?何?」
「失礼します」
俺が不思議そうに尋ねると、エレノアは片手で俺の腕に触れながら、何やら聞き取れない高速呪文らしき物を唱える。
そして次の瞬間、スッと手を自分の首輪に回すと、パチッ!と奴隷の首輪を取って見せる。
これは・・・!
「いかがですか?」
「エレノア・・・いつでもそれを取れたんだ・・・」
「ええ、私は奴隷関係の呪文も使えますので、その気になれば、いつでもこれを外す事が出来ます。
ただし、その際には必ず御主人様に接触している必要はありますが」
「そうだったんだ・・・」
つまり俺の奴隷をやめたければ、いつでもエレノアは逃げ出す事が出来たという訳だ。
それにもかかわらず、今までエレノアは俺の奴隷として仕えてくれていた訳か・・・
「はい、ですが私は自分の意志で御主人様の奴隷としていたいので、今後はこの首輪を自らの意志でつけている事を御主人様に確認していただきたいです」
そう言って再び魔法の呪文を唱えると、自分でパチン!と奴隷の首輪を取り付ける。
つまり自ら進んで奴隷になったという事だ!
俺が放心状態になっていると、今度はシルビアが話しかけてくる。
「御主人様、私からもお願いがございます」
「え?何?」
「私もエレノアさんと対等の立場になりたいです」
「え?どういう事?」
「今からバーゼル奴隷商館に行って私を奴隷解放してください」
「それは構わないけど?」
元々解放するつもりだったのだ。
それを頼まれれば俺に否はない。
しかしこの様子では単に奴隷解放を望んでいる様子ではないようだ。
「はい、私はその後でエレノアさんのように自分の意志で再び首輪をつけたいです」
そのシルビアの言葉にミルキィもすかさず同意する。
「私もです!」
「ええ?」
二人の意外な言葉に俺は驚くが、どうやら二人はもう、そのつもりらしい。
再び俺の腕を取ると、部屋の外へ向かって俺を引っ張り出す。
「さあ、御主人様、バーゼル奴隷商館に向かいましょう!」
「行きましょう!」
「そうですね、私も正式に奴隷解放していただいてから、自分でこの首輪をはめましょう」
エレノアもそう言って二人と一緒に俺と奴隷商館に行くつもりのようだ。
「う、うん・・・」
俺は三人に流されるままに四人で奴隷商館へと向かった。
バーゼル奴隷商館に着くと、いつものようにアルヌさんが俺たちを迎える。
「おや?いらっしゃいませ、シノブ様、今日は何の御用事で?」
「え~と、あの・・・この三人の奴隷を解放してもらいにきました」
俺の言葉にアルヌさんが驚いて聞き返す。
「三人?全員ですか?」
「ええ、でもその後で全員また奴隷になるそうです」
「???申し訳ございませんが、もう少し詳しく説明していただけますか?」
当然の事ながらアルヌさんは俺の言っている意味がわからなかったようだ。
俺は自分の素性は隠しながら、三人が奴隷を解放されても、自らの意志で奴隷であり続けたいと希望している事を説明した。
そのために一回奴隷を解放して、その後で奴隷魔法の契約でなく、自分の意志で奴隷の首輪をはめたいのだという事を話した。
俺の説明を聞いたアルヌさんは驚いて答える。
「それは凄い事です!
それは奴隷商人の存在を否定する事でもありますが、同時に奴隷商人として最高の栄誉でもあります。
そのような瞬間に立ち会えるとはある意味、奴隷商人冥利に尽きるという物です。
これは父も同席させていただいて構いませんか?」
「はい、構いません」
ベルヌさんが呼ばれて、話を聞くと感激したようで、何度もうなずいて話し始める。
「それは素晴らしい!
確かにそれは我々奴隷商人の存在を否定する事ではあるが、同時に奴隷商人冥利に尽きるというもの!
是非、その式次第を私に任せていただけませんか?」
「え?式次第?別に構いませんが?」
「では早速・・・」
俺が許可をすると、ベルヌさんは俺に触れながら魔法の呪文で三人の奴隷首輪を解除する。
三人の首輪が外れて、全員が奴隷状態から解放される。
「さあ、これで三人とも奴隷ではありません。
自由の身です。
帳簿の方も奴隷登録を削除しておきますから、完全に自由です。
よろしいですかな?」
「「「はい」」」
三人が納得すると、ベルヌさんはコホンと咳払いをすると先を続ける。
「では改めて奴隷の儀式を始めたいと思います。
エレノア・グリーンリーフ、
あなたは法的書類や金銭、魔法、その他の理由によらず、純粋に自らの意志だけで、シノブ・ホウジョウの奴隷となる事を選びますか?」
「はい、選び、それを望みます」
「ではこの奴隷の首輪を自らの手でつけなさい」
「はい」
エレノアはベルヌさんから受け取った首輪をパチリと自分の首につける。
これで見た目は完全に元通りだ。
しかしその首輪には、すでに奴隷の所属魔法はかかっていない。
単に奴隷の首輪を首にはめているというだけだ。
自分で外そうと思えば、いつでも外せるのだ。
次にベルヌさんはシルビアにも同じ事を質問する。
「シルビア・ノートン、
あなたは法的書類や金銭、魔法、その他の理由によらず、純粋に自らの意志だけでシノブ・ホウジョウの奴隷となる事を選びますか?」
「はい、選び、それを望みます」
「ではこの奴隷の首輪を自らの手でつけなさい」
「はい」
シルビアがエレノアと同じように渡された首輪を自分の手で首につける。
これで見かけだけならシルビアも奴隷だ。
最後はミルキィだ。
「ミルキィ・ハーベイ、
あなたは法的書類や金銭、その他の理由によらず、純粋に自らの意志だけでシノブ・ホウジョウの奴隷となる事を選びますか?」
「はい、選び、それを望みます」
「ではこの奴隷の首輪を自らの手でつけなさい」
「はい」
ミルキィも自分の手で奴隷の首輪をパチリとつける。
これで三人とも元通り、見た目は再び俺の奴隷だ。
しかし全員がいつでも自分の意志で首輪を外す事は出来るし、奴隷をやめようと思えばいつでもやめられるのだ。
つまりこの三人は今から純粋に自分の意志だけで奴隷になっている事になる。
ベルヌさんも満足そうに三人を眺めている。
「さて、ホウジョウ様、これでこの三人は書類や何らかの強制的な力でなく、自らの意志であなた様の奴隷となりました。
どうか末永く扱ってください」
その言葉を聞いて俺も胸が熱くなってきた。
「はい・・・その・・・みんな、三人ともありがとう!
ボク、三人ともとても大切にするよ!
これからもよろしくね!」
「「「はい、御主人様」」」
俺は三人を両手に一杯抱きしめる。
こうして三人は改めて俺の奴隷となったのだった。




