189 新たなる仲間?
ある日、俺たちが町を歩いていると、バラバラと数人の男たちが道を塞ぐ。
おや、この男たちは確かドナルドの手下たちだな?
また何か俺に仕掛けたいのだろうか?
その内の一人が俺に話しかけてくる。
例の人徳のあるおっさんだ。
「シノブ・ホウジョウ殿。
貴殿に頼みがある」
「頼み?なんだい?」
「実は我々5人を貴殿の仲間、いえ、部下に加えて欲しい」
「何だって?」
俺は5人をまじまじと見る。
「あんたらはドナルドの手下じゃなかったのかい?」
「彼とは縁を切った」
「縁を切った?」
「ああ、元よりあの人の横暴さには辟易していたが、先日の一件で見切りをつけた。
それで我々は見限った。
先日の降級の件で義理は果たしたし、問題はないと思う」
なるほど、それはわかる。
あんな奴の手下にはなりたくないだろうからな。
しかし、それで何で次がうちなんだ?
「まあ、それはわかるとして、何でその後が俺たちの仲間なんだい?」
「それは貴殿たちが今もっとも伸びているパーティと思うからだ。
我々をその端に加えていただければ、ありがたい」
「なるほどね。
しかし、君たちはつい先日まであの男の仲間だったんだ。
それがあっちと縁が切れたからこっちというのも都合が良すぎるし、こちらとしては何かの罠だと思うのが普通じゃないかな?」
「貴殿の言う事はわかる。
しかし我らとしても、身の潔白を証明する手段がない」
「そりゃそうだ。
それにぶっちゃけ、ちょいと人数も多い。
あんた一人なら俺たちの仲間にしても良いと思うんだが、どうかな?」
そう、このおっさんはこの間の言動からしても信用がおけるようだ。
しかも鑑定してみると、何とレベルは77なのだ!
何でこんな人があんな奴の部下になっていたのか不思議だが、まあ色々と事情があったのだろう。
だからむしろこのおっさんならうちに人材として欲しいと思う。
しかしおっさんは首を横に振って答える。
「いえ、それはありがたい申し出なのですが、この者たちは私を頼っているので、出来ればこの者たちと共に、あなたの配下に加えていただきたいのですが・・・」
「ふむ・・・どうしたもんかな?」
もちろん罠と判断して断るのは簡単だが、本当だとすれば、頼ってきた人間を無下にするのも気が引ける。
それにこのおっさんに限って言えば、俺もうちの人材として欲しいのだ。
おそらくこのおっさんは義理堅く、頼りになるはずだ。
だけど、一旦全員を仲間にした後で、このおっさん以外を全員解雇するって言うのも、さすがに気が引けるし、この連中も納得しないだろうしなあ・・・
俺が考え込んでいると、ここでさらに声をかけてくる者がいる。
「待った!待った!
そういう事なら、是非拙者も加えて欲しいものだな!」
え?誰だ?
いきなり俺たちの前に出てきた男は素浪人のような格好をして、丁髷こそはしていないが、日本刀のような刀を一本腰に差している。
突然の事に俺が驚いていると、その人物が自己紹介を始める。
「拙者、東の国から来たハンベイ・ヤマモトと申す者。
それがしも是非ホウジョウ殿の家来の端に加えていただきたい」
あれ?こいつの顔には見覚えがあるぞ?
どこで会ったんだっけ?
「あれ?あんたは・・・?」
「それがし先日、屋台街で用心棒をしていた所、貴殿の弟子と勝負して負けた者でござる」
ああ、思い出した。
あの時にクラウスに負けた用心棒のおっさんか?
「あんたもかい?
何でまた?」
「拙者、元々主を求めての旅をしておったのだが、この町で燻ってあのような仕事を生業としていた者でござる。
少ない路銀も使い切ってしまって、質屋に愛刀と故郷の衣装を入れてしまい、仕方なく、あのような仕事をしておりましたが、先日ホウジョウ殿にまとまった金を頂き、それでこの愛刀と故郷の服を質から流れる前に取り戻せた次第でござる。
そして拙者の考えた結果、是非ホウジョウ殿を主として仰ぎたいと思っていた。
そこでここ数日機会を狙っていたのだが、ここでこの連中に先を越されたので、慌てて拙者も声をかけた次第でござる」
なるほど、そういう事か?
しかしまた人数が増えたぞ。
困ったな、どうしよう?
俺が判断に迷っていると、エレノアが話しかけてくる。
「御主人様?意見を述べてよろしいでしょうか?」
「もちろんさ」
エレノアが馬鹿な意見を言う訳もない。
「仲間にするしないは別としても、この連中を試すためにも、一旦100番の下につけてみてはいかがでしょうか?」
「なるほど・・・」
100番こと、アーサー・フリード100番は俺の手下にして欲しいと言って、現在修行中だ。
この連中も同じような要望なのだから、あいつと一緒に鍛えさせておくのも良いかも知れない。
そしてそこで信用できるかどうかも含めて振るい落としをして、残った者だけを仲間か部下にするという訳か?
そしてこれがもし罠であるならば、断る確率がたかい。
俺に罠を仕掛けようとしているのに、遠く離れた場所に修行に行かされては意味がないからだ。
確かにこの方法なら、どっちに転んでも大丈夫そうだ。
「そうだね。
それが良いかも知れない。
おい、あんたら?
俺の仲間になるか、ならないかを図るためにも、あんたらにちょいとした事をしてもらうがどうかな?」
「なんでしょう?」
「実はあんたらと同じように俺の仲間になりたがっている奴がいる。
そいつはここからちょっと離れた場所で修行中なんだ。
そいつとしばらくの間、一緒に修行してもらって、その結果如何で決めさせてもらう。
但し、仲間にする保証は全くない。
そこで散々修行した挙句、結局仲間にしないという事も大いにありうる。
期間もどれ位になるか全くわからない。
それで良いならそこへ連れて行くがどうする?」
これは彼らにとって、かなりきつい条件のはずだ。
どこだかもわからない場所で、いつまでもか不明な期間をただ修行に明け暮れて、しかも部下にされる保証もない。
そんな事は普通納得できないはずだ。
ましてやもしこれが俺を罠に嵌めるためなら断る可能性が高いはずだ。
しかし、俺の提案にランバルトはうなずく。
「結構です。
その修行とやらをしましょう」
「拙者もそれで異論はござらん」
ハンベイも納得してうなずく。
俺は少々驚いたが、その答えを聞いて、さらにエレノアが俺に意見を提案してくる。
「御主人様、私もう一つ提案がございます」
「なに?」
「この部隊の長をあの若者に勤めさせたいと思います」
そう言って、エレノアは5人の中で一番若い18歳ほどの男を持っていた杖で指す。
あの正規の魔道士だ。
「なるほど・・・確かにね」
俺もエレノアに言われて鑑定してみると、その男は正規の魔道士だけあって、他の4人よりも能力がぬきんでている。
魔法能力だけでなく、格闘感覚も中々良い。
これはかなりの逸材だ。
確かにこれならこの連中の部隊長にしてもおかしくはない。
それにもしこれが罠なら、やはり断るだろうし、この連中に不和が生じるはずだ。
「今、聞いた通りだ。
もしこの試練を受けるならば、その男を君たちの暫定リーダーにするが、どうだい?」
「それがしは一向に構いませぬ」
ハンベイは納得した様子だが、他の男たちは驚く。
「え?ハイネを?」
「あいつは年も経験も一番下だぜ?」
「なんで、ハイネを?」
「え?僕ですか?」
どうやら当の本人が一番驚いているようだ。
男たちがざわつくが、まとめ役のランバルトがうなずく。
「承知いたしました。
これからは彼を我らの長として動きましょう」
その言葉に途端に残りの連中が騒ぎ始める。
「そんな!ランバルトさん!」
「あいつは俺たちの中で一番年下ですぜ!」
「それでいいんですか?」
「やかましい!年下だから何だと言うのだ!
それを言ったらこれから我らが御仕えようとしているホウジョウ殿は、さらに年下なのだぞ!
それが我慢ならないというのであれば、この方に仕えるのはあきらめろ!
もちろん私としては無理強いはしない。
正直、渋々ついて来られても私としても迷惑だし、この方にとっても失礼だ。
最初にお前たちに言ったように、私は私一人でもこの方についていく気だ。
お前たちも好きにするが良い」
ランバルトにそう言われると、三人がおとなしく従う。
「いえ、俺は従います」
「俺もです」
「私もです」
う~ん、やはりこのおっさんは人望も統率力もありそうだ。
しかし当の本人が頭にされるのがいやそうだ。
「いや~申し訳ないですが、私が隊長って言うのはちょっと・・・
ランバルトさんが隊長で良いんじゃないですか?」
「どうしてさ?」
俺の質問に魔道士のハイネとやらが答える。
「自分は集団の頭って言うのは、昔から向いているとは思えなくて~
副隊長とか、単なる魔法担当ならまだやれると思うんですが~」
「ああ、それなら心配しなくても良いよ。
現地に行ったら君たちと一緒に修行してもらう奴がいるから、そいつが隊長で、君は副隊長にしよう」
「そうですか?それなら大丈夫です!
いや~良かった~」
どうやら本人も納得したようなので、俺は全員に言い放つ。
「では、明日旅立つ。
場所はジリオ島のグローザット支部だ。
君たちはそれまでに窓口で所属変更をしていてくれ。
かなりここから場所は離れているので、それなりに用意して覚悟してくれ。
明日の朝に来ない奴はもちろん、試練以前の問題で、仲間にするつもりはない」
「はっ!かしこまりました」
「承知いたした」
ランバルトを初め、全員が納得したようだ。
ふむ、これは罠の可能性は低いようだな?
まあ、明日になれば、もっとハッキリとするだろう。




